# 第2話 ## 「結愛、初めてのおつかい」
# 第2話
## 「結愛、初めてのおつかい」
土曜日の朝。
結愛は朝ごはんのトーストを食べながら、突然立ち上がった。
「きめた!」
パンくずが飛ぶ。
優月が呆れた顔をした。
「なにを?」
結愛は胸を張る。
「ゆあ、ひとりでおかいものいく!」
静寂。
三秒。
僕。
唯ちゃん。
優月。
全員が固まった。
「え?」
「おかいもの!」
「ひとりで?」
「ひとりで!」
結愛はなぜか自信満々だった。
どこからその自信が来るのか。
僕は慎重に聞いた。
「何を買うの?」
結愛は即答した。
「ぷりん!」
やっぱり。
予想通りだった。
しかし唯ちゃんは少し考える。
近所のコンビニまでなら徒歩三分。
車もほとんど通らない。
練習としては悪くない。
「じゃあさ」
唯ちゃんが言う。
「牛乳とプリンを買ってこられる?」
結愛の目が輝く。
「できる!」
優月が小声で呟く。
「絶対プリンしか買わない」
僕もそう思う。
十分後。
結愛は小さなポシェットを肩にかけていた。
中には財布。
買い物メモ。
そしてなぜか折り紙のペンギン。
「なんで持ってくの?」
「おともだち!」
なるほど。
なるほどじゃない。
唯ちゃんがしゃがみ込む。
「道路は?」
「とびださない!」
「知らない人についていかない!」
「よし!」
結愛は元気よく返事をした。
そして。
玄関の前で振り返る。
「いってきます!」
僕たちは笑顔で手を振った。
「いってらっしゃい」
ドアが閉まる。
その瞬間。
全員で窓に集合した。
「見守る気満々じゃん」
優月が笑う。
だって心配だから。
結愛はスキップしながら歩いていた。
途中で花を見つける。
止まる。
アリを見つける。
しゃがむ。
蝶々を見つける。
追いかける。
進まない。
全然進まない。
優月が吹き出した。
「目的地どこだっけ」
十分後。
ようやくコンビニ到着。
僕たちは家で待つしかない。
五分。
十分。
十五分。
帰ってこない。
僕と唯ちゃんは少し不安になった。
「大丈夫かな」
その時。
玄関が開いた。
「ただいまぁーーー!」
帰ってきた。
無事だった。
結愛は満面の笑み。
袋を掲げる。
「かったー!」
みんなで拍手。
「すごい!」
「やったな!」
結愛は誇らしそうだった。
そして。
袋の中を見る。
牛乳。
ある。
プリン。
ある。
よかった。
しかし。
その下から。
チョコ。
ラムネ。
グミ。
クッキー。
飴。
大量のお菓子。
僕たち沈黙。
優月が聞く。
「これなに?」
結愛は当然のように答えた。
「おともだち」
「誰の?」
「おなかの」
全員爆笑。
唯ちゃんなんて座り込んで笑っている。
結愛はきょとんとしていた。
なぜ笑われるのかわからないらしい。
でも。
一人で買い物へ行き。
ちゃんと帰ってきた。
それだけで十分だった。
その夜。
夕飯の後。
結愛はソファでうとうとしていた。
今日の冒険で疲れたのだろう。
優月が小さく言う。
「結愛、がんばったね」
僕は頷いた。
「うん」
唯ちゃんも微笑む。
「少しずつ大きくなるんだね」
結愛は眠そうな顔で呟く。
「ゆあ、おねえちゃんになった?」
優月が笑った。
「ちょっとだけね」
結愛は満足そうに目を閉じる。
「やったぁ……」
数秒後。
すぅすぅ。
もう寝ていた。
僕たちは顔を見合わせて笑う。
子どもは少しずつ成長する。
気づかないくらい、ゆっくり。
でも確実に。
今日という日は、きっと結愛にとって忘れられない一日になるだろう。
そして僕たちにとっても。
また一つ。
家族の宝物が増えた日だった。
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### 次回
**第3話「優月の秘密のノート」**
ある日、優月が大事そうに隠しているノートを結愛が発見!
そこには家族も知らない優月の本音が書かれていて――。
笑いあり、ちょっぴり涙ありの物語が続きます。




