# 第18話 ## 「パパと優月、二人だけの帰り道」
# 第18話
## 「パパと優月、二人だけの帰り道」
土曜日の朝。
結愛は朝から大きなリュックを背負っていた。
「じゅんびおっけー!」
今日は、おばあちゃんの家にお泊まりの日。
お菓子。
着替え。
お気に入りのペンギン。
全部入っている。
「忘れ物ない?」
唯ちゃんが聞く。
結愛は元気いっぱいに答えた。
「ない!」
すると。
玄関で靴を履こうとして止まる。
「あっ」
「どうした?」
「ぺんぎんさん、わすれた」
やっぱりあった。
みんなで笑いながら部屋へ取りに戻った。
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お昼前。
おばあちゃんが迎えに来た。
結愛は嬉しそうに手を振る。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
「ゆづき!」
「なあに?」
結愛は優月にぎゅっと抱きついた。
「さみしくなったら、おでんわしてね!」
優月は笑った。
「うん、するね」
「ぱぱ!」
「ん?」
「ないたらだめだよ!」
僕は吹き出した。
「泣かないよ」
結愛は満足そうにうなずくと、おばあちゃんと手をつないで歩いていった。
角を曲がるまで、何度も何度も振り返りながら。
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家の中は急に静かになった。
「静かだね」
唯ちゃんが少し笑う。
「うん」
結愛が一人いないだけで、こんなにも違う。
夕方。
唯ちゃんがスーパーへ買い物に行くことになった。
「優月、一緒に行く?」
「ううん」
優月は僕を見た。
「パパ、お散歩しよう」
「いいよ」
久しぶりに二人だけだった。
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夕焼けに染まる川沿いの道。
風が気持ちいい。
僕たちはゆっくり歩いた。
「結愛がいないと静かだね」
僕が言うと。
優月は笑った。
「うん。でも、もう会いたい」
「まだ半日だよ?」
「それでも」
姉らしいな、と僕は思った。
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しばらく歩く。
セミの声が聞こえる。
橋の上で立ち止まる。
川が夕日を映して、きらきら光っていた。
その時。
優月が小さな声で言った。
「パパ」
「ん?」
「聞いてほしいことがあるの」
その声は、いつもより少しだけ真剣だった。
僕は歩くのをやめた。
「うん」
優月は手すりを見つめたまま話し始める。
「最近ね」
「うん」
「学校で友達が言ってたの」
「なんて?」
「『家族って、ずっと一緒にいられるわけじゃないんだよ』って」
僕は静かに聞いた。
優月は続ける。
「その言葉を聞いて、急に怖くなった」
風が少しだけ強く吹く。
「みんな、大人になるでしょ」
「うん」
「私も大人になる」
「うん」
「結愛も大きくなる」
僕は黙ってうなずく。
「そうしたら……」
優月は少しだけ声を震わせた。
「今みたいに、毎日一緒に笑えなくなるのかなって」
僕はその言葉に、胸が締めつけられた。
優月はまだ小学生なのに。
そんなことを考えるようになったんだ。
僕はゆっくり笑った。
「そうかもしれないね」
優月は少し寂しそうな顔をする。
「でもね」
「うん?」
「一緒に住んでいなくても、家族は家族だよ」
優月は僕を見る。
「離れていても?」
「離れていても」
「毎日会えなくても?」
「会えなくても」
僕は空を見上げた。
「『ただいま』って帰れる場所がある限り、家族はなくならない」
優月は静かにその言葉を聞いていた。
「それに」
僕は笑う。
「優月が大人になっても」
「うん」
「結愛がおばあちゃんになっても」
「えっ!」
優月が笑う。
「結愛がおばあちゃん?」
「きっとプリン食べてるよ」
「絶対食べてる!」
二人で吹き出した。
笑いながら歩き出す。
さっきまでの少し寂しい空気は、もうなかった。
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家に帰ると。
リビングが静かだった。
優月がぽつりと言う。
「やっぱり結愛がいないと変だね」
「そうだね」
その時だった。
電話が鳴る。
画面には、おばあちゃん。
出ると。
「ぱぱー!」
結愛の元気な声が響いた。
「ぷりんたべた!」
開口一番、それだった。
「よかったね」
「でもね!」
「うん?」
「もうかえりたい!」
まだ一日も経っていない。
僕たちは顔を見合わせて笑った。
「明日迎えに行くから」
「はーい!」
電話の向こうから、おばあちゃんの笑い声も聞こえてきた。
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その夜。
優月が寝る前に言った。
「パパ」
「ん?」
「今日は二人で話せてよかった」
僕は優しく頭をなでた。
「また行こう」
「うん」
部屋の電気を消す。
静かな夜。
でも。
明日になれば。
また元気な声が家中に響く。
そう思うだけで、少し嬉しくなった。
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### 次回予告
**第19話「おかえり、結愛」**
おばあちゃんの家から帰ってきた結愛。
たった一泊だったのに、家族みんなが感じた「会いたかった」の気持ち。
「ただいま!」
「おかえり!」
その一言が、いつもより少しだけ温かく響く物語です。




