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# 第19話 ## 「おかえり、結愛」

# 第19話


## 「おかえり、結愛」


日曜日の朝。


家の中は静かだった。


静かすぎた。


朝ごはんを食べても。


テレビを見ても。


どこか物足りない。


優月がぽつりと言う。


「……静かだね」


僕も苦笑いした。


「結愛がいないだけで、こんなに違うんだな」


唯ちゃんも頷く。


「いつもは『ママー!』『パパー!』『ゆづきー!』って聞こえるもんね」


三人で顔を見合わせて笑った。


---


午前十時。


「そろそろ迎えに行こうか」


「うん!」


優月は誰よりも早く立ち上がった。


車の中でも落ち着かない。


「まだかな」


「あと少し」


「まだ?」


「あと五分」


「長い!」


僕は笑った。


昨日まで「静かでいいね」なんて言っていたのに。


みんな結愛不足だった。


---


おばあちゃんの家に着く。


ピンポーン。


玄関のドアが開く。


すると――


「ぱぱぁぁぁ!」


結愛が全力疾走。


勢いよく僕に飛びついた。


「おっと!」


なんとか受け止める。


「ただいま!」


満面の笑顔だった。


「おかえり」


僕も笑顔になる。


その横で。


優月がしゃがみ込む。


「結愛、おかえり」


結愛はすぐに抱きついた。


「ゆづきー!」


ぎゅーっ。


「さみしかった?」


優月が聞く。


結愛は元気よく答えた。


「うん!」


即答だった。


---


おばあちゃんが笑う。


「昨日の夜もね」


「うん?」


「『みんなに会いたい』って何回も言ってたのよ」


結愛は照れていた。


「えへへ」


僕は頭をなでる。


「でも楽しかった?」


「たのしかった!」


「プリンは?」


「たべた!」


「ペンギンは?」


「いっしょにねた!」


全部大事らしい。


---


帰り道。


車の中。


結愛は楽しそうに話し続ける。


「おばあちゃんとね!」


「うん」


「クッキーつくった!」


「へぇ」


「しっぱいした!」


「そうなの?」


「まるじゃなくて、へんなかたち!」


優月が笑う。


「食べたの?」


「たべた!」


「おいしかった?」


結愛は少し考えて。


「……まあまあ!」


車の中は笑い声でいっぱいだった。


---


家に帰る。


玄関を開ける。


結愛が大きな声で言う。


「ただいまー!」


家の中に響く声。


その瞬間。


静かだった家が、いつもの家に戻った気がした。


唯ちゃんも笑顔で迎える。


「おかえり」


結愛は靴も脱がずにリビングへ走る。


「あ!」


テーブルの上には。


優月が昨日折ったペンギンの折り紙。


その横には手紙。


**「おかえり、結愛」**


結愛はゆっくり手紙を読む。


まだ読めない字もある。


優月が隣で読んであげた。


> 「結愛へ。

> おかえり。

> 昨日は静かすぎて、ちょっとさみしかったよ。

> また今日からいっぱい笑おうね。」


結愛は手紙をぎゅっと抱きしめた。


「ゆづき……」


そして。


「ありがとう!」


思いきり抱きついた。


優月も優しく抱き返す。


「おかえり」


---


夜。


夕飯は結愛の大好きなカレーだった。


「いただきます!」


いつもより元気な声。


結愛は一口食べると、にっこり笑った。


「やっぱり、おうちのカレーがいちばん!」


唯ちゃんが笑う。


「昨日もカレーだったんじゃない?」


結愛は真剣な顔で言った。


「でも、みんながいなかった」


その一言に。


食卓が少し静かになる。


僕は優しく笑った。


「そうだね」


同じ料理でも。


同じ家でも。


一緒に食べる人がいるから、おいしい。


そんな当たり前のことを、結愛が教えてくれた。


---


寝る前。


結愛は自分の布団にもぐり込みながら、小さくつぶやいた。


「やっぱり、おうちがいちばん」


優月が笑う。


「知ってた」


僕も唯ちゃんも笑う。


家の中に、いつもの笑い声が戻ってきた。


それだけで。


この家はまた、温かい場所になった。


僕は部屋の明かりを消しながら思う。


「おかえり」と言えること。


「ただいま」と帰ってきてくれること。


それはきっと、何より幸せなことなんだ。


---


### 次回予告


**第20話「七夕の願いごと」**


短冊に願いを書く家族。


優月の願い。


パパと唯ちゃんの願い。


そして結愛は、大きな字でこう書いた。


**「ぷりんがまいにちたべられますように!」**


笑顔あふれる七夕の夜が始まります。


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