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# 第16話 ## 「結愛と流れ星」

# 第16話


## 「結愛と流れ星」


七月。


夏が少しずつ近づいていた。


昼間は暑い。


でも夜になると、風が心地よかった。


夕飯を食べ終えた頃。


唯ちゃんが窓を開けながら言った。


「今日は星がきれいみたいだよ」


優月が顔を上げる。


「ほんと?」


僕も外を見る。


雲ひとつない夜空。


たくさんの星が輝いていた。


「じゃあ、みんなで見に行こうか」


「やったー!」


結愛はサンダルを履くのも忘れて玄関へ走った。


「くつー!」


優月に呼び止められて戻ってくる。


「えへへ」


相変わらずだった。


---


家の近くの小さな公園。


昼間は子どもたちでにぎやかな場所も、夜は静かだった。


ベンチに座って空を見上げる。


「きれい……」


優月が小さくつぶやく。


結愛も真似をして空を見上げる。


「いっぱいある!」


「あれが夏の大三角かな」


僕が指をさすと、優月は興味津々で空を見つめた。


「パパ、星って昔の人も見てたのかな?」


「見てたと思うよ」


「何を考えてたんだろう」


「大切な人のことじゃないかな」


優月は静かにうなずいた。


---


その時だった。


「わぁ!」


唯ちゃんが空を指さす。


一筋の光が、夜空を横切った。


流れ星だった。


「あっ!」


「あー!」


みんな慌てて願い事をする。


目を閉じる。


数秒。


静かな時間が流れた。


---


「何をお願いしたの?」


唯ちゃんが笑いながら聞く。


優月は少し照れて答えた。


「秘密」


「教えてよ」


「叶わなくなるかもしれないから」


僕は笑った。


「それもそうだね」


---


僕は聞かれた。


「パパは?」


「内緒」


「えー」


結愛だけが胸を張る。


「ゆあはね!」


「うん?」


「ぷりんがいっぱい!」


やっぱり。


みんな大笑いだった。


「一年分くらい?」


優月が聞く。


結愛は首を振る。


「もっと!」


欲張りだった。


---


しばらくすると、また一つ流れ星が流れた。


今度はみんな落ち着いて願い事をした。


帰り道。


僕は優月に聞いた。


「本当は何をお願いしたの?」


優月は夜空を見上げたまま、小さく笑った。


「やっぱり秘密」


「そっか」


少し歩いてから、優月はぽつりと言った。


「でもね」


「うん」


「ずっと、みんなで笑っていられますようにって思った」


僕は足を止めた。


唯ちゃんも優しく笑う。


結愛は意味が分からないまま言った。


「わらうー!」


その声にみんなが笑った。


---


家に帰ると、結愛は眠そうに目をこすっていた。


「ねむい……」


唯ちゃんが抱き上げる。


結愛は唯ちゃんの肩に顔をうずめながら、小さくつぶやいた。


「ながれぼしさん……」


「うん?」


「ぷりん……わすれないでね……」


最後までプリンだった。


僕たちは顔を見合わせて吹き出した。


---


その夜。


ベランダに出ると、まだ星が輝いていた。


僕は静かに空を見上げる。


流れ星に願ったこと。


それは優月と同じだった。


**「この当たり前の毎日が、ずっと続きますように。」**


笑い声があって。


「ただいま」があって。


「おかえり」が返ってくる。


そんな日々は、きっと奇跡なんだ。


僕は夜空に向かって、小さく笑った。


「なんとかなるさ」


星は何も答えなかった。


でも、その静かな輝きが、少しだけ「大丈夫」と言ってくれた気がした。


---


### 次回予告


**第17話「家族写真」**


町の写真館で家族写真を撮ることに。


ところが結愛はじっとしていられない!


笑顔いっぱいの一枚が撮れるまでの、ちょっとドタバタで温かい物語。

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