# 第14話 ## 「結愛、恋をする?」
# 第14話
## 「結愛、恋をする?」
その日の夕飯。
事件は突然起きた。
結愛がハンバーグを食べながら言った。
「きめた!」
まただ。
この始まり方は危険である。
僕と唯ちゃんと優月は顔を見合わせた。
「今度はなに?」
優月が聞く。
結愛は胸を張った。
そして。
とんでもないことを言った。
「ゆあ、けっこんする!」
静寂。
三秒。
僕は固まった。
唯ちゃんも固まった。
優月だけ吹き出した。
「えぇ!?」
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僕は慎重に聞く。
「結婚?」
「うん!」
「誰と?」
結愛は照れた。
もじもじ。
にやにや。
完全に恋する乙女だった。
僕の心臓が嫌な音を立てる。
まだ早い。
早すぎる。
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結愛は小さな声で言った。
「ひみつ」
「気になる!」
優月が食いつく。
しかし。
結愛は首を振る。
「ないしょ!」
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その夜。
家族会議。
議題。
**『結愛の結婚相手は誰なのか』**
優月は言う。
「幼稚園の男の子じゃない?」
僕は少し複雑だった。
唯ちゃんは笑う。
「そうかもね」
僕はさらに複雑だった。
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翌日。
結愛は朝から上機嫌。
歌まで歌っている。
「ふんふんふーん♪」
怪しい。
ものすごく怪しい。
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そして夕方。
ついに。
優月が聞いた。
「教えてよー」
結愛は少し悩む。
そして。
決心したように頷いた。
「いいよ!」
家族全員注目。
結愛は走る。
自分の部屋へ。
そして。
大事そうに何かを抱えて戻ってきた。
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それは。
ペンギンのぬいぐるみだった。
いつもの。
あのペンギン。
僕たち沈黙。
結愛は幸せそうに抱きしめる。
「このこ!」
優月。
爆笑。
唯ちゃん。
笑いをこらえきれない。
僕。
力が抜ける。
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「ペンギンなの!?」
「うん!」
「結婚できるの?」
「できる!」
自信満々だった。
法律とかは知らない。
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結愛は真面目な顔で言った。
「やさしいし」
「うん」
「いつもいっしょだし」
「うん」
「かわいい!」
なるほど。
大好きらしい。
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その時。
優月が聞いた。
「じゃあパパは?」
結愛は考える。
数秒。
そして。
「ぱぱもすき」
僕、少し安心。
「ままもすき」
唯ちゃんも安心。
「ゆづきもすき」
優月も安心。
そして最後。
「でもぺんぎんはとくべつ!」
全員敗北だった。
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夜。
寝る前。
僕は結愛の部屋を覗いた。
結愛はペンギンを抱いて眠っている。
幸せそうだった。
その隣には。
クレヨンで描いた絵。
そこには。
結愛。
ペンギン。
そして家族みんな。
手を繋いでいる。
僕は少し笑った。
結愛にとって。
好きという気持ちは。
まだ恋とかじゃない。
大切。
安心。
一緒にいたい。
そんな気持ちなんだろう。
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リビングへ戻ると。
優月がぽつりと言った。
「結愛らしいね」
僕は頷く。
「うん」
唯ちゃんも笑う。
「たぶんしばらくはペンギンだね」
間違いない。
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その夜。
結愛の寝言が聞こえた。
「ぺんぎんさん……けっこんしようね……」
本気だった。
僕たちは顔を見合わせて笑った。
そして。
今日もまた。
家の中には優しい笑い声が溢れていた。
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### 次回予告
**第15話「優月の初めての手紙」**
学校の授業で手紙を書くことになった優月。
でも、その相手に選んだのは――
「パパへ」
突然渡された一通の手紙に、パパは思わず涙してしまう。
家族の想いが詰まった、少し感動のお話。




