# 第13話 ## 「結愛の将来の夢」
# 第13話
## 「結愛の将来の夢」
「将来の夢を書いてください」
その宿題が出たのは金曜日だった。
夕飯の後。
優月はテーブルで悩んでいた。
鉛筆を持ったまま。
うーん。
うーん。
考えている。
僕は前にも聞いた話を思い出した。
まだ夢が決まらない。
それで悩んでいた優月。
だから今回は余計に難しいのかもしれない。
---
その隣で。
結愛。
即終了。
一分。
いや三十秒。
「できた!」
早い。
絶対早い。
優月も呆れていた。
「もう?」
「うん!」
自信満々だった。
嫌な予感しかしない。
---
僕は紙を見る。
そこには大きな文字。
---
ゆめ
ぺんぎん
---
終わりだった。
短い。
圧倒的に短い。
僕は聞いた。
「ペンギン?」
「うん!」
「なんで?」
結愛は当然のように答えた。
「かわいいから!」
なるほど。
説得力はある。
---
優月が笑う。
「でも人間だよ?」
結愛は少し考えた。
真剣に。
数秒後。
「じゃあぺんぎんつかい」
新職業が誕生した。
---
翌日。
宿題の続きをしている優月。
まだ悩んでいた。
「どうしようかな……」
僕は聞く。
「好きなことは?」
「絵」
「本」
「みんなと話すのも好き」
優月は頷く。
でも。
それが夢に繋がらないらしい。
---
その時。
結愛がやって来た。
ペンギンのぬいぐるみを抱えている。
「ゆづき」
「なに?」
「ゆめなくてもいいよ」
優月が驚く。
「え?」
結愛は言う。
「ゆあもきのうまでなかった」
「そうなの?」
「うん」
「でも今日できた!」
胸を張る。
誇らしげ。
優月は思わず笑った。
「そっか」
結愛は続ける。
「だからだいじょうぶ!」
その言葉は。
たぶん深い意味なんてない。
でも。
不思議と優月の表情が柔らかくなった。
---
夜。
宿題提出前日。
優月はついに紙を書き始めた。
そして完成。
僕と唯ちゃんは見せてもらった。
そこには。
---
わたしの夢
まだ決まっていません。
でも、
絵を描くことが好きです。
本を読むことも好きです。
これからたくさんの好きなことを見つけて、
いつか夢を見つけたいです。
---
僕は微笑んだ。
唯ちゃんも頷く。
「素敵だね」
優月は少し照れた。
「変じゃない?」
僕は首を振る。
「全然」
むしろ。
すごく優月らしかった。
---
そして翌日。
学校から帰ってきた優月。
玄関に入るなり笑顔だった。
「ただいま!」
「おかえり」
僕たちは驚く。
明るい。
すごく明るい。
「どうした?」
優月は嬉しそうに言った。
「先生がね」
「うん」
「夢が決まってなくてもいいんだよって言ってくれた」
僕は笑った。
いい先生だ。
本当に。
---
すると。
隣で聞いていた結愛が聞く。
「ぺんぎんも?」
「うん?」
「ぺんぎんでもいい?」
優月が吹き出した。
「たぶんダメ」
「ええええ!」
結愛、大ショック。
---
その夜。
寝る前。
優月が僕に聞いた。
「パパ」
「ん?」
「夢って変わる?」
僕は頷く。
「何度でも変わるよ」
「そうなんだ」
「大人になってから変わる人もいる」
優月は少し安心したようだった。
「じゃあ焦らなくていいね」
「うん」
本当にそう思う。
夢は見つけるもの。
急いで決めるものじゃない。
---
その頃。
結愛の部屋。
こっそり覗くと。
紙に何か書いていた。
見てみる。
---
ゆあのゆめ
ぺんぎん
やっぱりぺんぎん
---
変わってなかった。
僕は静かにドアを閉めた。
たぶん。
しばらくはこのままだろう。
そして。
それも悪くないと思った。
---
### 次回予告
**第14話「結愛、恋をする?」**
ある日、結愛が突然宣言する。
「ゆあ、けっこんする!」
相手は誰!?
家族騒然!
そして結愛が選んだ運命の相手とは――。
笑いが止まらない大騒動の始まりです。




