# 第12話 ## 「パパ、風邪をひく」
# 第12話
## 「パパ、風邪をひく」
事件は月曜日の朝に起きた。
目が覚めた瞬間。
僕は思った。
**あ、これダメなやつだ。**
頭が重い。
喉が痛い。
身体がだるい。
立ち上がろうとして――
ふらっ。
「うわっ」
危ない。
その音を聞いて唯ちゃんが飛んできた。
「大丈夫!?」
「たぶん風邪……」
額に手を当てられる。
数秒後。
唯ちゃんが言った。
「たぶんじゃないね」
熱があった。
しっかり。
ばっちり。
完全に。
風邪だった。
---
僕は寝室へ強制送還された。
布団に入る。
すると。
ドアが少し開いた。
ひょこっ。
優月だった。
「パパ?」
「ん?」
「大丈夫?」
心配そうな顔。
僕は笑う。
「大丈夫だよ」
すると。
後ろから結愛も現れた。
「ぱぱ!」
「うん」
「しんじゃう?」
「死なないよ!?」
結愛は安心した。
「よかったー!」
どこで覚えたんだろう。
---
昼頃。
僕は眠っていた。
すると。
ガチャ。
ドアが開く。
結愛だった。
そーっと入ってくる。
忍者みたいに。
でも全然音がしている。
僕は目を開けた。
「どうした?」
結愛は真剣だった。
「かんびょうする」
看病。
どうやら使命感に燃えている。
---
十分後。
始まった。
結愛の看病大作戦。
まず。
折り紙のペンギンを枕元に置く。
「まもりがみ」
「ありがとう」
次。
ぬいぐるみを並べる。
「おうえんたい」
「増えたな」
さらに。
頭をなでなで。
「げんきになーれ」
僕は思わず笑った。
---
しかし。
問題はここからだった。
結愛が持ってきた飲み物。
コップの中身を見る。
牛乳。
ジュース。
麦茶。
全部混ざっている。
「なにこれ」
結愛は胸を張った。
「とくせいげんきのみもの!」
危険だった。
ものすごく危険だった。
僕は丁重に遠慮した。
---
夕方。
学校から帰った優月も手伝ってくれた。
「パパ、水いる?」
「ありがとう」
「薬飲んだ?」
「飲んだよ」
優月は本当にしっかりしている。
その隣で。
結愛はうちわを持っていた。
ぱたぱた。
ぱたぱた。
ぱたぱた。
一生懸命扇ぐ。
しかし。
途中で自分が眠くなる。
ぱた。
……
……
すぅ。
寝た。
うちわを持ったまま。
---
夜。
少し熱も下がってきた。
すると。
唯ちゃんがおかゆを持ってきてくれた。
温かい。
優しい味だった。
「おいしい」
「よかった」
唯ちゃんが微笑む。
僕は思った。
普段は当たり前みたいに過ごしている。
でも。
こうして体調を崩すと分かる。
家族に支えられていることを。
---
寝る前。
優月が小さな紙を持ってきた。
「はい」
「ん?」
見る。
そこには。
---
パパへ
はやくげんきになってね
みんなまってるよ
---
優月の字だった。
その横には。
結愛の絵。
たぶん僕。
たぶん。
かなり怪しいけど。
愛情は伝わる。
僕は笑った。
「ありがとう」
優月も笑う。
「どういたしまして」
---
その時。
寝ていたはずの結愛がむくっと起きた。
そして。
僕の布団へ近づく。
「ぱぱ」
「ん?」
結愛は僕の耳元で小さく言った。
「だいすき」
僕は少し驚いた。
結愛は照れたように笑う。
「だからげんきになる」
それだけ言うと。
また眠ってしまった。
---
その夜。
僕は思った。
風邪はつらい。
本当に嫌だ。
でも。
こんなに優しくしてもらえるなら。
少しだけ悪くないかもしれない。
いや。
やっぱり風邪は嫌だけど。
でも。
家族の温かさを改めて感じられた一日だった。
---
### 次回予告
**第13話「結愛の将来の夢」**
学校で聞かれた将来の夢。
優月は悩み。
結愛は自信満々に答える。
「ゆあね!」
「うん」
「ぺんぎんになる!」
家族全員が困惑する中、結愛が語る夢とは――?
笑いと成長の物語、続きます。




