守護将軍は軍団(レギオン)を編成す
ライトリザレクションの黎明期、満を辞して発売されたカードパック第1弾「スタンダードカードパック」はライトリザレクションの基礎となる各種カードがバランスよく配分されており、末長く買われ続けるカードパックとしてライトリザレクションの基礎を築き上げた。
そして順調なユーザー数増加に伴いカードパック第2弾として「進撃の巨神」が発表された。
そのカードパックは、ウルトラレアの巨神ベルトルを頂点として、人型ビーイング中心で構成されている。
その人型ビーイングは軍隊系と呼ばれる通りソルジャーやナイト、コマンダーといった軍人をモデルにした名前をつけられている。
そして彼らのほとんどは、呼び出しやすい低コストビーイングであり、また中には援軍と呼称される同系統のビーイングを呼び出す効果を持っている。
結果として、序盤で場をあっという間に埋めることが可能であった。
更に指揮官と呼ばれるビーイングも存在し、それらは軍隊系ビーイングを強化する効果を持っている。
援軍効果で場を埋めて、相手のライフをちまちまと削り続け、相手が対応に苦慮している間に指揮官を呼んで全員を強化してタコ殴りにする。
軍隊系ビーイングは序盤の数ターンで制圧する事を主眼におく、アグロと呼ばれる戦法に最適な存在であった。
だから進撃の巨神が登場した当初は、そんな軍隊系ビーイングを中心にしたアグロデッキが流行りに流行ることになるのは必然であった。
(当時は軍隊系の格好した奴や、カエル軍曹とかマトリックス大佐とかカービー将軍とか、軍の階級を名前にしている奴が多かったよな。)
そういう幸太郎の服装もまた軍服に包まれている。
「ヘカテーのお陰で復活した統合端末の各種機能の一つである着せ替えモード。まさか使えるとは思わなかったよ」
幸太郎の軍服は、ライトリザレクションの統合端末に含まれる仮想現実モードで使える機能で再現されたものだった。
この機能はアバターにライトリザレクションに登場するビーイングの格好に扮した格好をさせるモードであり、服装だけ同じにする「着せ替えモード」だけでなく完全に見た目を変える「なりきりモード」もあり、これによってプレイヤーは自由にライトリザレクションのビーイングになりきることができる。
そしてそれが実装されたのも、進撃の巨神がリリースされた時期なので、思い入れのある古参プレイヤーは今でも軍隊系のハンドルで軍服を着てプレイすることも多い。
幸太郎は当初この機能は仮想現実でしか使えない機能だから使えないと思っていたが、試しに使ってみたら、姿を自由に変えるなりきりモードは無理だったが、着せ替えモードは自由に変えれることに気付いた。
「相変わらず原理がサッパリだけど、ビーイングが現実になってる時点で今更だし、もうそういうもんだと思った方がいいのかなぁ」
と幸太郎は遠い目をする。
「おっと90秒経ったか。召喚しないと」
ターンが経過して、マナが補充された幸太郎は手札からビーイングをすぐさま召喚する。
スカウト
ビーイング
アタック100
ディフェンス100
マナコスト2
場に出た時、ソルジャー100/100を場に出す。
「「お呼びでしょうかご主人様?」」
カードが消えるとともに、鎧を着て盾を持ち剣を腰に刺した2人の兵士がその場に跪いた。
「うん。君たちは呼ばれる前は何をしていた?」
「「我々は王都を守る王国軍の兵士でありました」」
幸太郎はまたしても王国関係者を呼び出していた。
「そ、そうなんだ…あの、元の場所に戻りたい?」
「「とんでもない!あなた様に仕えることこそ至上の使命であります!」」
そして当たり前のように忠誠心マックスだった。
「そ、そうですか…もし、元の場所に戻ることが自分のメリットになると言ったらどうする?」
「「主人の為なら喜んで!死すら誉れであります!!」」
命令には絶対、そして命など全く惜しくないようだった。
それは嘘でも建前でも何でもない。
彼らは幸太郎が死ねといえば喜んで死ぬだろう。
(軍隊系ビーイングってノリが体育会系だよなあ。いや軍隊なんてその筆頭格か)
「うん…なら今は緊急事態だし、ことが済んだら元の職務に戻ってください。それまでは指揮下に入ってください」
「「了解!」」
「コマンダー、あとはお任せします」
「はっ、よし貴様らこっちに付いてこい!」
「「はっ!」」
そばに控えていたコマンダーが呼び出した2人の兵士を連れて行く。
(見事にハモってたなあ…)
「ふう…次のやつ呼ぼう」
精神的な疲れを感じながらも幸太郎は次のカードを呼び出す。
ロイヤルガードジェネラル
ビーイング
アタック500
ディフェンス500
マナコスト6
守護
このカードが破壊された時、シールドソルジャーを場に出す。
「お呼びでしょうか陛下」
現れたのは無骨な鎧をまとった筋骨隆々のナイスミドルだった。
「へ、陛下?いや陛下じゃないんだけど…」
「何をおっしゃる!その神々しいオーラはまさしく王のそれではございませぬか!」
似たようなことをは他のビーイングからも散々言われている。
「あーうん。それに付いてはなんとも言えないからまあ置いとくとして、呼ばれる前は何していたの?」
「呼ばれる前ですか?私は偉大なる陛下によって生み出された存在。呼ばれる前は虚無でございます」
(虚無って…)
ロイヤルガードジェネラルは若干訝しげな顔をしたが、その後は特に何を思うでもなく淡々とそう答える。
少なくとも幸太郎にはそう見えた。
「そ、そう…それはそれで余計な影響が出なくて安心なんだけど…わけがわからない…」
(虚無ってなんなの?無から有は生まれうるの?ビーイングは命じゃないの?命は死んだらどうなるの?)
ロイヤルガードジェネラルが虚無から生まれたと断言したことで、幸太郎は命という哲学的あるいは宗教的な問題に想いを馳せてしまう。
「まあいいや、考えてもしょうがないし…将軍なら指揮ができるよね?軍団の指揮をお願いしたいんだけど…」
「お任せください陛下!私が得意とするのは、籠城戦でございます。例え数倍の敵が押し寄せよつとも援軍が来るまでは凌ぎ切って見せましょう!」
ロイヤルガードジェネラルは力強く断言する。
(虚無から生まれたという割には、経験豊富な言い方するのが本当に謎だよ!)
嘘ついているように見えないのが余計タチが悪かった。
ロイヤルガードジェネラルはその能力から、本当に援軍が来るまで凌ぎきる、場を整えるための場つなぎとしては最適なビーイングでもあったりする。
「う、うん。よろしく頼むよ…」
「ははっ!では早速、軍団を編成してまいりましょう」
そう言ってロイヤルガードジェネラルは、コマンダー達が向かった方に歩いて行く。
「……エルのように前からこの世界にいたものが呼び出されるパターンは意外と少ないのは不幸中の幸いなのかな?低コストのモブにいたり、いそうだと思っていた高コストのレアはそうじゃなかったりするから法則性が不明だけど…」
幸太郎は呼び出したビーイング全てに出自を確認していた。
結果として、エルのように元々この世界に住んでいて、呼び出された存在は全体から見れば意外と少ないことが判明した。
「もっとも言語での意思疎通が不可能なビーイングは聞くことできないから、もしかしたらそっちには多いのかもしれない。ビーイングの中には歴史上の偉人とか故人みたいな背景の存在がいたりするから、そういう人物を呼んだりしたのなら、さっきのジェネラルみたいに呼ばれる前は虚無だったなんてことになるのかもしれない。でも虚無って…」
エルやヘルフレイムドラゴンから聞いた話をまとめて、この世界の住人を呼んでしまう確率が高いカードは封印候補になった。
その中で「祈り手・ウニコ」と「ヘカテー」は封印が決定している。
前者はリズを呼んでしまう可能性が高く、後者は神殿で出会ったヘカテーを確実に呼んでしまうからだ。
「ヘカテー様は呼ばれたがってましたよ。役割が外れて自由になれるからって」
「エルですらこんな事態になっているのに、神みたいな世界の根幹を司ってそうな重要人物?の役割を外すことなんかできるわけないだろう!?下手したら最終戦争だわ!!ハゲるわ!」
役割に付いては不明な点が多い。
(意味もなく役割を振られているとはどうしても思えないし…一兵士とか影響小さそうなのはまだしも、影響でかそうな人物のは外したくない…)
下手なことをしてこれ以上の藪蛇はごめんだった。
因みに幸太郎のいう最終戦争とは、こんなカードだったりする。
最終戦争
スペル
マナコスト10
全てに1000ダメージ
ビーイングもマスターも全てが崩壊する死なば諸共なスペルであり、これが出た当初は、ゲームの最終局面になり、どう見ても積んだときに使用するマスターが続出した。
しかしこのスペルの使用は、盤をひっくり返す行為に等しく、乱用するマスターは多くの他のプレイヤーから蔑まれた。
また最終戦争を使用することをスペル名を略して「ハゲる」と呼ぶようになり、乱用するマスターもまた「ハゲ野郎」という蔑称で呼ばれるようになった。
そうして色々あった結果、めでたく禁止カードとなった。
だがそれ以来、ゲームの最終局面で積んだ時のことを指して「これはハゲたか?」「これはハゲるな」「これはハゲるしかないわ」という台詞が定番となったりしている。
「あとリズには色々この世界のことを教えてもらった恩もある。召喚で強制的に隷属なんて考えたくもない!」
幸太郎に呼ばれたものは例外なく忠誠を誓っている。
本心から望んでいるのは、行動を見てもおそらく間違いないけど、幸太郎にはそれは悪質な洗脳に見えて仕方なかった。
(エル曰く、呼ばれたとしても応じるか応じないかの選択権があるみたいなこと言ってたけど、それを聞いてはいそうですかとすんなり納得できないし…ん?でももしそうだとしたら、誰も応じなかった場合は虚無から生まれたりする可能性もあるのか)
「ですが、リズは…いえ、なんでもありません」
エルが何かを言いたそうにしているが、自分から口をつぐんだ。
「ちょっと待って、これ以上の隠し事はなしにして欲しいんだけど?」
エルには隠し事をされたせいでとんでもないことになった前科がある。
だからエルの発言に普段より敏感になった幸太郎はエルに詰め寄る。
「ですが…」
「いいから!!」
「…あの、リズならばむしろそれが、その…本望なのではないかと思ったのです。あの子は幸太郎様が、ええと…好きで好きでしょうが無いのに素直になれない所が」
「!?すまない自分が悪かった!だからこれ以上言わなくていいです…」
部下と主人という立場を盾に、幸太郎が知らなかったリズの本心をエルから無理やり聞き出すパワハラみたいなことをやらかした幸太郎は慌てて謝罪する。
(え?マジで??というかその話を聞いた後だと、選択権があるとしてリズが呼び出しに応じる可能性が高まったというか…いやでも応じなかったらそれはそれでショックというか…いやでも応じたら自分はそれに答えなくてはいけなくなって、将来設計とかしなければって、いやそもそもそれ以前に人倫にもとるというか…ええい!)
リズの本心を思わず知ってしまった幸太郎はひとしきり混乱した後、何度も地面を蹴って頭をかく。
「今はこんなこと考えてる暇は無い。とりあえずこのことは聞かなかったことにする。いいね?」
「はい」
幸太郎はそういうことにした。
「エルはそろそろ次の行動に移ってほしい。まずは説得を頼む。それで済めば万々歳だけど…それはほぼ無理だろうから、その時は予定通りの行動に移るので合図をくれ」
「は!」
幸太郎の名を受けて、エルは行動を開始する。
「さて、このことを3人に説明しないと…」
リズ、エリザベス、マルゴッド伯爵の3人は未だに屋敷で話し合いを行なっていた。
幸太郎はその3人を呼びにいった。




