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28/67

幸太郎VSリズ

 召喚士の村で修行中のある日、幸太郎とリズは模擬戦をする事になった。


「では、はじめ!」


 エルの合図で戦闘が始まる。

 幸太郎はリセットを実行した。


 1ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ35/40

 手札5

 マナ1/1


 幸太郎はホーンラビットを召喚した。


 ホーンラビット

 ビーイング

 アタック100

 ディフェンス100

 マナコスト1


「頼むぞホーンラビット!」

「キュイ!」


 ツノの生えたウサギが飛び出した。


「…なら私はこれね」


 リズがゴーレムを召喚した。


 ゴーレム

 ビーイング

 アタック400

 ディフェンス500

 マナコスト5

 守護


「ゴオオオ!!」


 鉄の巨人が現れた。


「うわああ!!」

「キュイィ!!」


 幸太郎とホーンラビットはゴーレムに吹き飛ばされた。


「幸太郎様の負けです」

「勝てるわけねーだろ!」


 幸太郎は起き上がって叫ぶ。

 回復魔法(スペル)をリズにかけてもらう。

 2人は互いの召喚獣(ビーイング)を元の場所に帰した。

 さっきの模擬戦の振り返りを行う。


「あのさっきのは本当に本気なのですか?ホーンラビットを召喚された時はどうしようかと思ったのですが…」

「ああ本気も本気。ひどい時はホーンラビットしか召喚できないんだ」


 幸太郎たちが今行なっているのは、幸太郎が最も弱い時、デッキのリセット直後のマナ1状態で単独でいた時に突発的に襲われた場合に備えた模擬戦である。

 とはいえそれを意識しているのは幸太郎だけでリズには普通に模擬戦だと話してある。


「でもこの前、当たり前のようにペガサスを召喚しましたよね?あれゴーレム並みの召喚獣(ビーイング)ですよね?」

「あーそれは…調子がいいときは呼べるようになるんだ」


 リザレのターン制度とそれに伴う使用可能マナのルールを説明するわけにもいかず、幸太郎はそう説明する。


「本当ですか?」

「うん。まあひどいのは一時的なもので時間が経てばできるようになるよ」

「ならそれを見せて下さい」


 リズがジト目でこちらを見る。

 どうも疑わしいようだ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 再度模擬戦が始まった。

 幸太郎はリセットを実行する。


 1ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ35/40

 手札5

 マナ1/1


「はじめ!」

「今回はハンデで幸太郎さんが召喚したら開始ということで」

「そういうことなら」


 幸太郎は座り込んだ。


「ちょっと待ってね」

「え?」


 そして12分後。


 5ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ31/40

 手札9

 マナ5/5


 幸太郎はペガサスを召喚した。


 ペガサス

 ビーイング

 アタック500

 ディフェンス300

 マナコスト5


「ヒヒーン!」


 翼の生えた純白の天馬がいなないた。


「やっとですか…」


 リズはゴーレムを召喚した。


 ゴーレム

 ビーイング

 アタック400

 ディフェンス500

 マナコスト5

 守護


「ゴオオオ!」


 鉄の巨人が咆哮を上げる。

 そして互いにぶつかり合う。


「ヒーイイイン!!」

「ウゴオオオ!!!」


 ペガサスはスピードで、ゴーレムはタフさで互いに互角の戦いを繰り広げる。


「ヒウン…」

「ウゴォ…」


 そして共倒れになった。


「…10分弱かけてようやくペガサス召喚じゃ、実戦なら普通に間に合わないですよ…」

「ですよねー」


 幸太郎は項垂れる。

 それは幸太郎も危惧している弱点だった。


「でも戦いはこれからですよ!」


 リズはサンベア、ロックゴーレムを召喚した。


 サンベア

 ビーイング

 アタック200

 ディフェンス200

 マナコスト2


 ロックゴーレム

 ビーイング

 アタック200

 ディフェンス400

 マナコスト3


「グマアア!」

「ゴオオ!」


 熊と石の魔物が現れた。


「ならこっちも」


 6ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ30/40

 手札9

 マナ6/6


 幸太郎はスケリトルドラゴンを召喚した。


 スケリトルドラゴン

 ビーイング

 アタック300

 ディフェンス300

 マナコスト3

 守護


「「ウオオオオオオオオオ!!」」


 それも2体。


「ええ!?2体も!くっ、まずは片方を対処して!」


 リズが狼狽しながら指示を出す。


「各個撃破されるな!連携して相手を消耗させるんだ!」


「「「「ブオオオオ!」」」」


 即乱戦になった。

 リズの召喚獣(ビーイング)は積極的に攻撃を仕掛け、幸太郎の召喚獣(ビーイング)は防御に徹する。


 戦況は膠着状態に陥った。


「まだよ!次の召喚で決める!」


 リズはトレントを召喚した。


 トレント

 ビーイング

 アタック400

 ディフェンス400

 マナコスト5


「ボオオオン!!」


 動く木の化け物が現れた。


 7ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ29/40

 手札8

 マナ7/7


「そうくるか…ならこちらはこいつだ!」


 幸太郎はフレイムタイガーを召喚した。


 フレイムタイガー

 ビーイング

 アタック400

 ディフェンス400

 マナコスト4


「ガルルル!!」


 炎まとう虎が現れた。


「ちょ!汚い!」


 フレイムタイガーとトレントが取っ組み合う。


「ガアアア!」

「ボボボボ」


 フレイムタイガーにとってトレントはただの燃えやすい木材同然だった。

 トレントはフレイムタイガーの炎に焼かれてしまい、慌ててリズはトレントを帰す。


「くっ!やるわね幸太郎さん。幸太郎さんの体調によって使える魔力(マナ)にムラがあると知った時はどうなるかと思いましたが、調子いいときはこれほどとは…ですが勝負はまだついてませんよ!」


 リズはロックタートルを召喚した。


 ロックタートル

 ビーイング

 アタック300

 ディフェンス400

 マナコスト4

 守護


「ガチガチ」


 石を背負った亀が現れた。


「ロックタートルは炎に強い!これなら相性的にもフレイムタイガーに勝てるわ!」

「確かに相性的に不味いかも…実力拮抗してるし、ロックタートルだもんなあ…」


 8ターン目(幸太郎の状態)


 デッキ28/40

 手札8

 マナ8/8


「なら凄いの呼んじゃいましょう」

「え?凄いの?」


 幸太郎はヘルフレイムドラゴンを召喚した。


 ヘルフレイムドラゴン

 ビーイング

 アタック800

 ディフェンス800

 マナコスト8


 マグマの塊のような灼熱の体を持つドラゴンが現れた。

 ヘルフレイムドラゴンは叫び声をあげる。


「ゴアアアアアアア!!!」

「うひゃああ!!!」


 それだけで、リズとその召喚獣(ビーイング)達は吹き飛ばされた。

 リズの召喚獣(ビーイング)は倒されたことで帰される。


「幸太郎様の勝ちです」

「伝説級のドラゴンなんて勝てるわけないでしょ!」


 リズが起き上がって叫ぶ。

 リズは回復魔法(スペル)を自分にかけはじめた。


 ドラゴンはこの世界で最強の生物だ。

 空を飛び、強靭な鱗と爪を持ち、ブレスで全てを吹き飛ばす。

 ヘルフレイムドラゴンは、そのドラゴンの頂点に立つ存在の一つだった。


 リズが錯乱しそうなので、ヘルフレイムドラゴンは(デッキ)にお帰りいただいた。


(ああ、なんか久しぶりにリザレらしい戦いができた気分だ)


 そして幸太郎は、そのことに大変満足していた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 家で模擬戦の結果を踏まえた反省会が行われた。

 反省会はこの村特産のお茶を飲みながらまったり行われる。


「調子良ければ、伝説レベルの化け物を召喚できる?なにそれ規格外ってレベルじゃないわ!」

「幸太郎様なら当たり前です」

「あれがどれだけすごいかわかってるの?あんなのに勝てる存在なんてまずいないわ!本来なら世界の命運をかけて最終決戦を挑むような相手よ!」


 リズは散々、あのヘルフレイムドラゴンがどれだけ非常識か語る。


「よくわかったわ。幸太郎さんはとんでもない化け物を召喚できる代わりに、呪いのように魔力(マナ)が使えなくなる時がある体質なのね」

「呪いは言い得て妙だ」

「代償として適切かどうかは微妙なところだけどね…あんな化け物を呼べるなら、デメリットをはるかに上回るメリットよ…ピーキーも度がすぎるわ…はあ」


 リズはため息をつく。


「ただ、幸太郎さんが化け物を呼べるとはいえ、調子悪い時に襲われたら危険だから、やっぱり護衛の召喚獣(ビーイング)は予めそばに置いておくべきね」

「やっぱりそれが妥当か」

「それしか対策がないわ。でないと、いつホーンラビットしか呼べないような最弱状態になるかわからないし」


 実は最弱状態(リセット)は任意で実行可能だ。

 強制リセットもいつあるかわかる。

 だがリザレのことを隠してるリズにはいえない。


「そのために私たちはいるのです」

「はいはい。でもエルの言うとおりよ。護衛さえいれば、事故の危険は減るわ」


 ただ召喚獣(ビーイング)を気軽に帰せるようになったので、気軽にリセット前に高コスト召喚獣(ビーイング)を呼んでおくことができるようになったのは大きい。


「それはそれで対策するとして、召喚時に召喚獣(ビーイング)が発揮する効果は再度呼び出しても無効なのはなんで?」


 ふと幸太郎は疑問に思ったことを聞いてみる。


「効果?それってもしかして祝福のこと?強い召喚獣(ビーイング)に付いてることがある現れた時に発揮する特殊な能力のことよね?」

「あ、うん。それ。あと死ぬ時に発揮する効果もあるよね?」

「それは遺言と呼んでいるわ。遺言も祝福も一度きりなのは当たり前よ?」


 幸太郎は召喚獣(ビーイング)をカード化して呼び直したら効果を使い放題では?と目論んだ。

 検証した結果それは不可能なことが判明した。


「何しろ祝福は生まれた時に神から祝福として与えられるものなんだから。召喚獣(ビーイング)として生まれ変わったということで祝福が与えらることがあるけど、基本はそれっきりよ」

「なるほどそう言うことなのか」


(これもスペルと同じなんだろうな、消費したものは戻らない。現実とリザレのルールが無理やり融合した結果そんな感じになっているんだろうか?)


 幸太郎はこの世界は何者かによってリザレを参考に作られた世界だという仮説を立てている。

 何しろリザレのビーイングやスペルが実在するのだ。

 そう考えるのが自然に思われた。

 その結果、カードのいつくかは能力が変質したりしている。

 対戦をやりなせば何度でも使えるビーイングの効果が一度きりになったり、スペルが使いきりになったのは、エントロピー増大の法則に沿ったルール変更と捉えれば、納得がいくかはともかく理解はできた。


「そうなると祝福のついてる召喚獣(ビーイング)は気軽に呼べないな」

「いやそんなこと気にしてたら契約した召喚獣(ビーイング)をいつまでも呼べないから…」

「でも強い祝福持ってたら呼びつらくない?」

「確かに祝福の中にはどんな存在も一撃で消滅する力とかあるみたい。でもそんな強力な祝福を持つ召喚獣(ビーイング)ってお話の中だけであって現実には滅多にいないじゃないですか?というかいたら、殺してでも奪い取るレベルですし」

「お、おう」


(うん、リズにはシンパの効果のことは絶対に言わないでおこう。そんな死因は御免被る)


「じゃあリズは何を重視するの?」

「そりゃ召喚獣(ビーイング)自身の力量や能力を重視して契約しますよ?そもそ強い祝福持ちってより多い魔力(マナ)が必要な割に力量は微妙ですし…私なんてゴーレムが限界…」


 リズはゴーレム以上に強い召喚獣(ビーイング)とは契約できないらしい。

 それはリズがそれ以上に強い召喚獣(ビーイング)と契約しようとしても魔力(マナ)が足りないことに起因する。

 つまりリズが一度に行使できるマナの最大値は5と言うことになる。


 そしてリズもゴーレムを召喚したらしばらくは魔法(スペル)が使えなくなり、しばらくしたら回復して使える。

 そこはリズもほとんど変わらないようだった。


「なら回復するたびに、ゴーレムを呼び出して、それを続ければ召喚獣(ビーイング)を呼び放題な訳だ」

「そんなわけないでしょう?そもそも短期間で使えなくなったり使えたりするのは回復と言わずクールタイムと言うべきものよ。魔力は体に負荷がかかるから本能的に放出を抑えているということらしいわね。だから、魔力(マナ)には限りがありますし、使い切ったら長時間回復を待たないといけないわ。そもそもそんな沢山ゴーレムと契約していません」


 ゴーレムは先祖代々伝わっている召喚獣(ビーイング)でありリズの切り札の一つだ。


「もし無尽蔵にゴーレム呼べるとしたら1日にどれ位呼べる?」

「また変なこと聞きますね。そうですね。20体呼べればいい方でしょうか?」


(20ターンでリセット、というか枯渇するのか。リズのマナの累計は100なんだろうな)


「まあそんなことしたら間違いなくヘトヘトになるからそんなことしたくありませんが。というかそんな幸太郎さんはどれ位の数のゴーレムを呼べるんですか?」

「ちょっと計算させてね」


 言われて幸太郎は計算しだす。


(…デッキ枚数的に36ターンで絶対にリセットで1ターンは3分だから…

 1から10ターンの累計マナは50

 11から36ターンの累計マナは250

 36ターンになるまでの時間は108分、まあ約2時間と考える。

 そうなると、約3600マナを1日に使えるな)


「1日で、ゴーレムを約720体分は呼べるかも」

「…はあ!?何なんですか?幸太郎さんは魔力が充実してるんですか?魔力(マナ)充なんですか?自慢ですか?爆発した方がいいです。魔力(マナ)的な意味で」


 ものすごい嫌な顔をされた。

 そしてひどい言われようだった。


「どこからか魔力(マナ)供給されてるといった方が納得いきます。実は超強力な魔道具(アーティファクト)隠し持っていませんか?」

「いや、そんなことはないけど」

「怪しいですね。真実写しとか持ってるのに…」


 だが幸太郎は思い当たるものが一つあった。


 統合端末(デバイス)


 この世界に来て以来、統合端末(デバイス)は手元にない。

 だがそれがないと、デッキや墓場やマナの情報を表示するステータス表示や、デッキ生成機能の存在は説明できない。


 だから見えないだけで実は所持しているか、体内に統合端末(デバイス)が組み込まれているのではないかと思う。

 物理的にか魔法的にかはわからないが。


 日本語が通じるのもそこらへんにあると思っている。


 統合端末(デバイス)には世界中のプレイヤーとのコミュニケーションを実現する為に汎用的な自動翻訳機能も実装されている。

 それは未知の言語もデータ蓄積による学習と分析によって解読してしまう最先端技術の結晶である。

 あまりに高機能すぎて母国語を話しているのと変わらない感覚で、外国の人と会話できる。

 これの発明によって言葉の壁は無意味になったとすら言われている。


 魔法的になんとかなっているなんて考えるよりはその方が納得がいく。


「何か隠しているんじゃないですか?」

「いやそんなことはないんだけど…」


(もし統合端末(デバイス)が文字通り体内に埋まっているような物だとしたら…奪われるわけにはいかないよな…危険すぎる)


 知られることすら危険であった。

 知られたら危険視されて殺される可能性も出てくるのではないか?


 リズの追求を必死に避けながら、幸太郎はそんな事態にならないことを切に願った。


 そのあと幸太郎は、やさぐれたリズによって、修行でひどい目に合わされることになった。

幸太郎が、スペルを使わずに戦えば、リザレの対戦と同じようなバトルになるというお話でした。

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