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ウォズの魔法使い2

 幸太郎たちは討伐に出立する。


 今回のメンバーは幸太郎とリズとエルとウォズだった。

 幸太郎の他のビーイングはお留守番か、カード化のどちらかである。


 村を出て北西を目指す。

 魔女が封鎖している街道は召喚士の村から北西の方にあった。

 この道は、南方の国から北方の最前線に向かう為の最短ルートであり、ここを封鎖されることは、進軍の大幅なロスになる。


 道中、幸太郎達は魔女について話をする。


「強行突破は出来ないの?」

「できるかもしれないけど、被害は凄まじいことになるでしょうね。魔女から魔法(スペル)攻撃を受けるのだから」

「え?魔女は広域攻撃魔法(スペル)使えるの?」

「使えるわよ」

「それって数百人を巻き込めたり?」

「それは流石にありえないけど、まあ少なくとも数人から数十人は巻き込めるわね…それにクレインとボルクはやられて撤退する羽目になったし」


 幸太郎は広域攻撃魔法(スペル)として、範囲無制限の魔法(スペル)を連想したが、流石にそこまでバランスブレイカーな魔法(スペル)は使ってこないようだった。


(いや普通はそれが当たり前で、こっちの魔法(スペル)に制限がないのがおかしんだよやっぱり…)


 微妙に制限があったり、逆にとんでもない壊れがあったりして、幸太郎は自分の魔法(スペル)を微妙に持て余している。


「ふむ。幸太郎様ほどではありませんが、魔法(スペル)のエキスパートですか」


 エルがそれを聞いて思案するような顔になる。


「でも問題はそこじゃなかったわ…」

「というと?」

「魔女は悪魔と契約して異常な魔力(マナ)を誇るの。私が魔法(スペル)の打ち合いで打ち負けたのだから、恐らくはリズ並みにあると思う」

「そんなに?」

「ええ、最初は私が魔法(スペル)で相殺していたけどね。15発で私は魔力(マナ)切れ。その後も魔法(スペル)をひたすら撃たれ続けて、おかげで2人は大怪我よ…まったく」


 ウォズが得意としているのは、ファイアーボールであった。


 ファイアーボール

 スペル

 マナコスト2

 相手のビーイングに200ダメージ


(それは魔法(スペル)使いとしては多いの?それとも少ないの?)


「ウォズは魔法(スペル)使いとしては、多い魔力(マナ)を誇る天才ですよ。…ツノがない人間にしてはですが」


 幸太郎の困惑を察してかリズが説明をしてくれる。

 後半は、ウォズには聞こえないよう小声でしゃべっていた。

 恐らくは気を使っているようだった。


「ふふ、リズにあってからは冗談でも天才なんて言えなくなったけど」


 ウォズは微笑む。

 どうやらそれが普通の魔法(スペル)使いにとっては多いレベルらしい。

 リズはさらにそれ以上だという。


「そんなリズに匹敵するって、それってどれくらいなの?」


 ウォズはチラリとリズを見る。

 リズは頷く。

 どうやら公開の了承を得たようだ。


「50発は撃てるんじゃないかしら」

「50発って…」

「確かにとんでもない魔力(マナ)よ。でも今回はリズも協力を快諾してくれた。そして幸太郎もいる。決して絶望するような戦いではないわ」

「ええ!クレインやボルクを怪我させた代償はしっかり払ってもらわないとね!」

「あ、ええ、そうですね」


(マナコスト2程度のスペルでも自分には十分一撃だよ…なんでそんなに撃てるの?ヤバいんだけど…)


 幸太郎はモチベーションがガッツリ下がるのを感じた。

 元々あるかどうかは微妙だったが。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 やがて幸太郎たちは山の中腹にある魔女の住処に到着した。


「ふん、また性懲りも無くやって来おったか…」


 道を見下ろせる高所にある洞窟の中から老婆が現れた。


「何度やって来ても同じこと。今度は消し炭してやろうかの?それとも肉にした方が良いかの?男はともかく、女の肉は柔らかいからのお、ヒヒヒ」


 そう言って老婆は嗤う。


「気持ち悪い老婆ですね。幸太郎様、殺しても良いですか?」

「ウォズ、こ、この人が悪い魔女?」


 エルが嫌悪に顔を歪め、幸太郎はウォズに聞く。


「ええそうよ。悪名高い人喰い。西の悪しき魔女!」

「人殺しなら見逃すわけにはいかないわね」


 ウォズは忌々しそうに魔女を睨み、リズもまた正義感から魔女と相対する。


「フェッフェ、生きのいいものは好きだよ。美味しいからね。さあおいで!」


「グルルル」

「カアア」

「ブーン」


 それを合図としたかのように、洞窟の中から、狼やカラスや蜂が姿を現した。


「出たわね!魔女の使い魔!みんな気をつけて!あれに足止めさせている間に魔女は魔法(スペル)を」


 矢の弾幕

 スペル

 マナコスト3

 相手のビーイング全てに100ダメージ


 無数の矢が魔女とその使い魔を襲った。


「グエエ!」


 狼、カラス、蜂の全てに平等に矢が降り注ぐ。

 そして全てがその瞬間に息絶えた。


「使ってくるん…だけど…」


 ウォズが注意を終える前に、それらは全滅していた。

 ウォズもリズもそれをありえないものを見たかのように見つめる。

 エルだけはそれを当たり前として見ていた。


「貴様!一体何をした!私の可愛いペット達が!許さん、許さんぞおおおお。貴様はすぐに殺さん!捕らえて爪を剥いでそれを飲ませてやる!骨を一つ残らず折ってやる!腕を切ったら料理して喰わせてやるううう!!」


 魔女もまた矢を受けていたが、辛うじて致命傷を避けていた。

 傷口を抑えながら、不穏なことを叫んでいる。


「いや、蜂はマジ勘弁。一度刺されてるから」


 幸太郎は一度スズメバチに刺されており、死にそうな目にあったので、蜂を見て迷うことなく殲滅することを決めた。


「でも今思えば、フレイムタイガーよんで炎で焼いて貰えば十分だったかも…貴重なスペルが…」


 そして衝動的に全体攻撃魔法(スペル)を使ってしまい激しく後悔した。


「えと、あれに足止めされて中々近づけなかったんだけど、今はチャンスね。接近戦で片を付けましょう!」


 ウォズは素早く立ち直る。

 原因究明は後にして今は敵を倒さなければいけないと思い出したからだろう。


「くっ!仕方ない。こうなったら仲間を呼ばせてもらおうかね!」


 だが焦るのは魔女の方だった。

 一気に不利になった魔女は、前回は出す事のなかった存在を出すことを決めたようだ。

 魔女がそういうと、どこからともなく魔物がやってくる。


「魔王軍!?」

「フェッフェッフェッ。そうさその通りさ。こいつらはさっきのとは比べ物にならないよ」


 スケアクロウ

 ビーイング

 アタック200

 ディフェンス300

 マナコスト3

 潜伏


 レオ

 ビーイング

 アタック300

 ディフェンス300

 マナコスト3


 ティンウッドマン

 ビーイング

 アタック400

 ディフェンス200

 マナコスト3


 現れたのはカカシ、ライオン、ブリキの木こりの魔物だった。


「何だろう、なんか見たことある組み合わせだ…」


 だが幸太郎はそれをなかなか思い出せなかった。


「お前達!奴らを引きつけておくれ、その間に私は魔法(スペル)の準備を」


 魔女は唾を吐きながら、魔物に指示を出そうとする。


 ヒュッ!


「あっ…」

「させると思いますか?幸太郎様に対する数々の暴言。万死に値します」


 だが魔法(スペル)を唱える前に、エルの狙撃によって、魔女は頭を撃ち抜かれていた。


「しかし、頭を吹き飛ばすつもりで撃ったのに原型を留めているとは。なかなか強力な防御魔法(スペル)を使っていたようですね。そこだけは褒めてあげましょう」


 魔女は地面に倒れふす。

 魔女はあっけなく倒れた。

 魔物達はそれを見て動揺する。


「え?魔女死んだんだけど…」

「どうしたらいいの?」

「コレハヨソウガイ」


 ライオンが怯え、カカシが悩み、ブリキが淡々と告げる。

 魔物は完全に浮き足立っている。

 すでに勝敗は決したも同然だった。


「はあ、なんか私が付いてくる意味はなかったのかも。でも折角だから…」


 スリーロックの面々を苦しめた魔女を呆気なく倒せてしまい、脱力したリズはそれでもここまで一緒に来たのだから、せめて何か働こうと召喚魔法(スペル)を使う。

 呼び出したのはリズが愛用する召喚獣(ビーイング)のゴーレムであった。


「お願いゴーレム!」

「ゴオオオ!」


 呼び出されたゴーレムは出番に歓喜の声を上げて、リズの為に魔物達に突進する。


「うわあああ逃げろおお!」

「ニゲルゾ」

「え?ちょっとまって!」


 それを見た魔物達はこれはかなわないと言わんばかりに、一目散に逃げ出した。

 そして、そこには魔女と獣の射殺された死体の山が取り残された。


「ふう。何とか生き延びたか」

「え?」


 幸太郎は今回も生き延びることができてホッとする。


「今回もギリギリの戦いだった」


 ウォズは「何言ってるのこの人は?」的な顔を向ける。

「一体どこにギリギリの要素が有ったのか?」と言わんばかりに。


「魔女が魔法(スペル)を使う前に倒せてよかったよ」


 幸太郎は魔法(スペル)を使われていたらやばかったと本気で思っている。

 幸太郎は自身が規格外の魔法(スペル)を多く持っているせいで、他者の魔法(スペル)もそうだろうと過大評価していた。

 だから幸太郎の中では、魔法(スペル)を使われる=負けである。

 実際は必ずしもそうじゃないのだが。


「そうじゃなきゃ誰かがやられてたかもしれないし」

「…ねえ、そんな言うほど危ない場面ってあった?」


 つい耐えきれずにウォズは呟く。

 幸太郎以外はみんな首を横に振っていた。

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― 新着の感想 ―
攻撃力ばかりが過剰に発達した現代地球人だからこその感想なのかもね。 原則、先に攻撃した方が勝つ。火器類は避けるのも防ぐのもえらい大変だから。
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