報酬ましましで強制修行開始
「知らなかったこととはいえ、あなたの家族を殺した奴の逃亡の手伝いをしてしまったわ。本当にごめんなさい」
「いえ、ウォズさん達は本当に悪くありません。悪いのはあなた達を騙したあの商人ですから」
そう言ってリズとウォズの女性二人は抱き合って泣き合う。
クレインとボルクもまた拳を握りしめて震えていた。
一度に村の仲間を失ったリズは勿論、スリーロックの面々も騙されていたとはいえ、リズの仇の犯罪行為の片棒を担がされていたのだ。
勿論、騙されて受けた護衛任務なので、当然お咎めは無しだったが、当事者にとってはそう言う問題ではなかった。
(本当にいい仲間を持っているなリズは)
あの後、馬車は徹底的に調査されて、それ以外のご禁制の品もたくさん見つかった。
中には、無限に毒ガスを沸かす壺や、結界を通り抜ける魔法の布など、恐らくは召喚士の村で虐殺を起こすために使われた危険な道具も見つかった。
入手経路は不明。
「どれも非常に危険な品。私が責任を持って保管しましょう」
そうマルゴッド伯爵が約束したので、それを信じて託すことにする。
彼はきっと約束を守るだろう。
(エンシェントデストロイヤーに踏み潰されたくはないだろうし)
エンシェントデストロイヤー暴走の疑いは晴れた。
マルゴッド伯爵はエンシェントデストロイヤーを治安維持に有効活用するそうだ。
虐殺を行った商人の正体はとうとうわからなかった。
身分を示す書類は全て偽造。
死体もミンチより酷い状態だから調べようがない。
スリーロックの証言でも、何処にでもいるような普通の商人とのこと。
一応似顔絵を描いてもらったが、過去にマルゴッドの街で捕まった犯罪者や指名手配の賞金首にこのような男はいなかった。
情報技術があまり発達してないこの世界ではこれ以上の調査は難しいようだった。
幸太郎の屋敷のような扱いになっている宿屋の一室で、幸太郎は考えていた。
(リズはこれからどうするのだろう?やはりスリーロックの連中についていくのだろうか)
リズは家族も故郷も失った天涯孤独の身。
だが、スリーロックという本当の仲間と呼べる存在はまだ生きている。
冒険者は魔物を相手にする命の危険の伴う危険な仕事だが、ゴーレムを召喚できる実力を持つリズなら、冒険者としても十分やっていけるだろう。
「だから部屋に宿の従業員がやってきて、リズが会いにきたと聞かされた時は、お別れを言いにきたのかと思ったんだけどね」
「そんなわけないでしょ。ちゃんと約束通り魔力の制御方法教えるわよ」
「よかった」
幸太郎は安堵する。
あの時散々泣いた後、スリーロックの連中とリズは今後の話をすると宿屋に消えて言ったので、本気でそうなるのではないかと戦々恐々してたのだ。
そうなった場合、ものすごく断りづらかった。
もし押し切られたらどうしようと思っていた。
「それに、確かにクレイン達と旅に出るのは悪くはないけど、村のみんなが死んでしまって、残った召喚士は私だけなの。私は召喚士の一族を再興しないといけない。だから一緒に旅に出れないと伝えてきたわ」
「そうか」
「そうよ。それに幸太郎さんにはとっても感謝してる。間接的にとはいえ、村のみんなの敵を討ってくれてありがとう」
「り、リズ!?」
そう言ってリズは幸太郎の手を握る。
「だからお礼に幸太郎さんには私の全てを教えてあげる」
そう言ってリズは幸太郎に顔を近づける。
「す、すす全てをを??」
いきなり話が怪しい方向に行きだして幸太郎はきょどる。
「そう召喚士としての全てを」
「へ?」
そんなことはなかった。
普通に真面目な話だった。
「だからこれからみっちり修行してあげる」
「いや、自分は帰し方だけ教えてもらえればよくて…」
「召喚士の技はこの厳しい世の中できっと役に立つわよ」
「いや、でも敵を討ったのは偶然の結果みたいなものだし割に合わない気が。それに召喚士の再興をする為にはあんまり自分に時間をかけないほうが」
「そんなことないわよ。幸太郎さんに召喚士の全てを教えるのも、召喚士の再興の一環なのだから。一族に代々伝わる秘伝を学ぶまたとない機会よ?」
「え、いや、その…」
「さあ、村に戻りましょう!」
幸太郎は手を引かれて立ち上がる。
幸太郎はリズの提案を断り切ることができずなし崩しに受け入れることになる。
(自分に召喚士の全てを教えることが召喚士再興の一環?それって自分になんちゃって召喚士じゃなくて本物の召喚士になれってことじゃ…)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんなわけでリズの指導の元、幸太郎が召喚士になるための修行が始まった。
朝起きて畑仕事。
終わったら、座学で勉強。
そしてトレーニングを行い、晩御飯を食べて寝る。
「獲物を狩ってきました」
「ガフ」
「ありがとう。エルさん、フレイムタイガー」
ビーイング達は、時折森に行って獲物を狩ってきてくれた。
幸太郎が修行をして強くなることには特に反対はないらしい。
「我々に反対する理由はありません」
「ガウ」
よく考えたら幸太郎が弱いままなのは、護衛する側からすれば不安要素の一つだ。
反対する理由も特に無いのだろう。
(しんどいけど頑張ろう)
幸太郎自身は別に面倒臭がりとかそんなことはない。
ただリズに迷惑をかけるのが嫌なだけだが、むしろ率先して教えてくれている。
そしてこの魔物が徘徊する過酷な世界で強くなることは今後のことを考えて必要だと思っていた。
(日頃世話になってるビーイング達のためにも。それになんか力もついてきた気がするし)
当初はなれない農作業や運動にとヘトヘトになっていた。
だが次第に慣れてくると、どんどん体力がついてくることに気づいた。
特に戦闘訓練と称して、短剣を使った模擬戦をした後はその伸びが顕著だった。
最初はリズに容赦なく叩きのめされていたが、そのうち受け止めることができるようになり、反撃すらできるようになる。
またビーイングを帰す為に必須の魔力の制御も最初は難航したが、根気強く教えてくれるリズのお陰で、なんとなく幸太郎は魔力の流れがわかるようになってきた。
「この体を流れているのが魔力か」
「ええ、そうです」
魔力は基本的に目に見えない。
だがこの世界には様々なところにあふれている。
「それを感じ取り、自在に操ることが魔術士の第一歩なのです」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数ヶ月後には、幸太郎は召喚したホーンラビットを帰すことに成功した。
「で、出来た!」
「無事、元の場所に送り返せましたね!」
「ああ、ちゃんと元の場所に戻ってるみたいだ。
ホーンラビットはカードに戻っていた。
手にすると、カードはデッキに戻っていった。
「やりましたね。なら次は別の修行をしましょう」
「いや、ここまで来れたなら十分だよ。だからここら辺で修行は終わりに」
「じゃあ次は、召喚獣と契約する方法を教えます」
「ええ…」
こうして幸太郎の修行は長期間に渡って続いていくのだった。
修行話はもうちっと続くんじゃよ




