召喚士リズとの出会い
捕縛したのは召喚士と思われるツノの生えた女の子だった。
「というかこの子ウニコだ!」
幸太郎はその特徴から、あるビーイングを思い出す。
祈り手・ウニコ
ビーイング
アタック200
ディフェンス200
マナコスト2
ターン開始時にマスターのライフを200回復
「ウニコって誰よ!?」
拘束された女の子はそう言って幸太郎に噛み付く。
「いや、ウニコってのはリンゴーンの座を奪ったことで有名なビーイングで」
「リンゴーンって何?!というか何言ってるか全く意味わからない!?」
ウニコ(仮)は叫ぶ。
(しまった。街で人型ビーイングもいるかもって思ったけど、初遭遇したのがウニコで動揺してしまった)
ウニコは相手のヘイトを一身に集めながらも回復を行ってくれる優秀なビーイングで、幸太郎もリザレではよくお世話になっていた。
「いや、その節はお世話になりました」
「え?なんでお礼いわれているの?私、あなた知らないんだけど!?」
それがこうして現実に現れたので、ついお礼を言ってしまった。
「というかあなたたちは何の目的でここに」
「黙れ小娘。その舌切り取ってやろうか」
寒気すら感じさせる声でエルがウニコを恫喝した。
「「ヒィッ」」
その怖さに思わず幸太郎ですら悲鳴をあげる。
エルは機嫌のいい時は無邪気な面や可愛い面もあるのに、戦闘時やこういう時は恐怖すら感じさせるオーラを放つことがある。
(エルって色々と両極端だから怖いんだよ)
だがそれは、エルが幸太郎以外には誇り高いエルフとして振る舞い、幸太郎にだけには気を許して素の自分を見せているのだということにまだ気づいていない。
「あ、あああ…」
その余波に当てられた幸太郎ですらビビったので、それを直接受けたウニコはガタガタ震えていた。
「え、エル?女の子だからお手柔らかにね」
「…はい」
エルはため息をついて後ろに下がる。
「ごめんね怖がらせちゃって」
そういって幸太郎はウニコをなだめる。
ウニコはエルを怒らせるとやばく、そんなエルを止めれるのは幸太郎だけだと気づいたようで、首をぶんぶん横に振っていた。
おそらく舌を引き抜くと言われて喋ることができないのだろう。
「ああ、喋っても大丈夫だから。ただあまり騒がないでね?」
「は、はい」
ウニコは頷く。
(あーこれトラウマになったかもなあ)
「僕たちは召喚士に会うためにこの村に来たんだ」
そういって幸太郎はこれまでの経緯を話す。
召喚士を探しに来たこと。
途中でスリーロックのクレインという人にリズという召喚士の話を聞いたこと。
「スリーロックのクレインさんに会ったんですか!?私がそのリズです!」
ウニコことリズは、スリーロックの話を聞いて驚いた顔をした。
「え?でもクレインさん召喚士じゃない人にこの村のことを?嘘…」
「いや自分も召喚士だから教えてくれたんだ」
裏切られたような顔をしているリズにホーンラビットを召喚して見せたら大層驚かれた。
「そんな…ツノ生えてないのに?」
「召喚士かどうかはそこが基準なの?」
ツノは召喚士にとってとても大事らしい。
「改めて自己紹介するよ。自分は幸太郎。で、こっちの弓使いがエル。この炎の虎はフレイムタイガーで、向こうの骨はスケリトルドラゴン。あとはホーンラビットが数十匹」
「これが全部、幸太郎さんが呼び出した召喚獣何ですか?信じられない」
リズは幸太郎の召喚獣の数に驚いているようだった。
でもそれを話す前に聞くことがあった。
「て、なんでリズは僕たちを襲ったの?」
「それはその、村に戻ったら見知らぬ人がいて、野盗だと思ったのです。それで…。ごめんなさい」
「あーそういうことか。それはすまなかった」
つまりは不幸なすれ違いだったわけだ。
幸太郎は縄を解いてあげる。
「…え?いいんですか?私はあなたたちを襲ったのに」
「確かにいきなり襲われたのはびっくりしたけど、理由を聞いて納得したし。結果的にこちらに被害がなかったからいいよ」
幸太郎は女の子の心情がよく理解できた。
こんな村に1人でいる理由はわからないが、そこに見知らぬ連中が魔物を率いてたむろしていたら、いくら召喚士とはいえ恐怖だろう。
無謀な行動に出てもおかしくない。
幸太郎は1人で魔物蔓延る森の中に放り出された時のことを思い出す。
「女の子だし、見知らぬ人が魔物連れてたむろしてたら怖いもんね」
「あ、ええ、はい……」
リズは自分の召喚獣であるゴーレムに自信を持っており、簡単に捕まえられると思っていたとは言えなかった。
普通は、本当に怖かったら関わらずさっさと逃げ出すか隠れるかして様子を伺うとも。
「また再び襲うというのであれば、今度は殺すだけですし」
「そそそんなことしません!しませんから!」
エルがそう呟いたので、リズは恐れおののいて、幸太郎の陰に隠れる。
(エルが怖い。こんな感じだったっけ?)
「で、聞きたいことがあるんだ。君以外の召喚士はどうしたの?」
「…殺されました」
それは予想した通りの答えだった。
「何故?」
「それは…」
リズは、少し迷うそぶりを見せる。
きっと言いづらいことなのだろう。
「幸太郎様の質問に…」
「ちょ待って待って」
幸太郎はエルの声を遮る。
「ここは自分に任せて、ね?」
「…ですぎた真似をいたしました」
エルは一礼して後ろに下がる。
そして背後に一歩下がる。
これ以上は何も言わないということだろう。
「ごめんね。聞きづらいことなら聞かない。ただもしかしたら力になれるかもしれないと思ったんだ」
「…そうですね。確かにゴーレムを退けたあなた達なら。お話しします。何故仲間達は殺されたのか」
リズは、髪の隙間から突き出ている自分のツノを触った。
「私たちの一族のこのツノは、強い魔法の触媒になるのです。仲間はこのツノを全て奪われていました」
やはり召喚士のツノはとても大事な物だった。
「巷では召喚師は幻の存在らしいね」
「はい。私たちは他の人と交流を行いません。それは召喚魔法が使えるだけではなくて、このツノを狙われるからという理由もあるのです」
やはり召喚士は迫害されているのはないか?という幸太郎の予想は半分間違っていた。
残り半分は迫害よりひどい理由だった。
同じ人間を文字通り食い物にしようとことに幸太郎は吐き気を覚える。
「そんなに気になさらないでください。全ての人がそうじゃないのはしっています」
内心を見抜かれたのだろう。
リスがフォローをしてくる。
「いつ殺されたの?」
「私が旅から帰ったのはほんの数日前のことです。帰ったら、村のみんなはツノがない状態で死んでいました」
「生き残りはいなかったのか?」
「…1人もいませんでした」
リズは俯く。
「召喚士はみんな召喚魔法を使えると聞いたけど、それでもやられたの?リズより強い人は?」
「……」
長い沈黙。
幸太郎はリズの返事を辛抱強く待つ。
「いました。だから私も信じられませんでした。みんな優秀な召喚魔法の使い手なんです。それがこんな簡単に殺されるなんて…」
「…死因は?」
「わかりません。ただ外傷は全くありませんでした」
「外傷はない?」
「はい。そしてみんなベッドに寝ていたんです。ツノがなくなっている以外はまるで眠っているようで、でも二度と起きることはありませんでした…」
リズが涙を流す。
恐らくはその場面のことを思い出したのだろう。
家に帰ったら家族は寝ていて、誰も起きる気配はない。
様子を見に言ったらそこにあったのは眠るように死んでいた家族。
そしてツノは奪い去られていた。
「毒か」
「恐らくはそうかと思います」
「ありがとう。話してくれて。辛かっただろうに」
「いえ」
リズの話は幸太郎には過酷すぎた。
帰ったら家族や親族が全員死んでるなんてひど過ぎる。
リズの仇に怒りを覚えるには十分な話だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あの、あなた達は召喚士の村に用があったということですが、どのような御用だったのでしょうか?」
暗い気分を切り替えるためかそんなことを聞いてくる。
「ああ、実は、召喚魔法の制御方法を教えて欲しくて来たんだ」
「制御方法ですか?こんなに何十匹も召喚できるような幸太郎さんが?」
「問題はそれなんだ。実は呼び出したのはいいけど戻す方法がなくて…」
「そんなことがあり得るんですか?呼べるなら帰すのも簡単だと思うんですが?」
リズはまるで非常識なものを見たかのように驚いていた。
「そうなの?」
「はい。召喚士なら帰すのは出来て当然です」
「そうなんだ」
「幸太郎さんはどこで召喚魔法を教わったのですか?」
「いや、その教わったというか…気づいたら使えるようになっていた」
幸太郎は誤魔化した。
どこに地雷があるかわからず、素直にカードのことを言うわけにも行かなかったからだ。
「嘘。まさかの天然召喚士!?」
「何それ?」
「修行なしで召喚魔法を使える存在のことです。我々の一族の祖は生まれながらに召喚獣を体内に有して自由に呼び出すことができました。またそういう存在は何人かいたと伝えられています」
(自分とそっくりだ。特に体内に召喚獣がいるという点が)
「…少しいいですか?」
そういうとリズは、幸太郎に額を合わせる。
「な、何を?!」
「動かないでください」
リズは目をつぶっている。
幸太郎は、リズの顔を間近に見てしまいドギマギする。
(顔近い!めっちゃ近い!それにめっちゃいい匂いする、やばい。すごくやばい)
「!?こ、これは」
リズは目を見開いて後ずさった。
そして幸太郎を信じられないものを見たかのような目で見つめる。
「幸太郎さんの魔力を測って見たんですが、計測不能でした…」
「どういうこと?というか何をしたの?」
「今のは、魔力計測法なんです。触れて魔力を感じることで、人や物の魔力を図ることができます」
魔力は基本的に目に見えない。
それを見るためには、そういうスキルを持った者や、真実写しのような魔道具が必要である。
ただ魔力は感じ取ることはできる。
体内や体外の魔力を感じ取るのは、魔術士の基本技能であり、それを使うことで魔術師は弟子の魔力を測ったりする。
「幸太郎さんのはその魔力が段違いに多いのです。ツノのある召喚士ですら、こんな量聞いたことも見たこともないのに…これは一体」
ツノのあるなしは魔力の量とも関係あるらしい。
(リズが言っているのは、今使えるマナの最大値?でもそれって10だから、少なくともマナコスト5のゴーレムの2倍程度だしそんな規格外な量ってほどじゃ…)
「これほどの量、魔力制御ができてないと体がボンッてなってもおかしくありませんが」
「え?」
「しかもこんなに沢山の召喚獣を自在に使役するなんて」
「ちょっと待って今聞き捨てならない言葉が」
「この人ならもしかしたら」
「ボンッてなに!?」
リズは微笑む。
(え?冗談なの?冗談だよね?!)
「であれば、私が帰し方を教えますよ。ちゃんと魔力制御ができれば、帰すことができますので」
「本当?!」
幸太郎は思わぬ申し出に食いつく。
それを教えてもらえれば、ここに来た目的は達成できる。
「その代わりお願いがあるのですが…」
そこでリズは言葉を区切る。
「私の敵討ちと仲間の形見のツノの奪還を手伝ってもらえませんか?」
そして覚悟を決めた顔で聞いてきた。
「いいよ」
「…そうですよね、嫌ですよね。帰し方と敵討ちじゃリスクがつりあわないですよね…今なんと?」
「いいよ。手伝うよ」
幸太郎は敵討ちを承諾した。
リズは承諾されると思ってなかったようだ。
「あの…言っておいて何なんですが、敵討ちですよ?相手がわからないうちから…そんな」
「うん。本来なら御免被るところなんだけど…」
幸太郎は頭をかく。
前の自分なら間違いなく断っていた話だ。
だから素直に了承したことに内心驚いていたりする。
「け、結構切実な問題なんだ。召喚獣を戻せないの。食費がかかり過ぎて…」
「あー」
それを誤魔化すように幸太郎は理由を口にする。
リズはどこか納得した表情をする。
(あれ納得されちゃった?)
「ま、まあそれだけじゃ勿論なくて、リズの話を聞いて久々に許せないと思った。そしてリズが言った通り自分には召喚獣もいるし、膨大な魔力がある。できるかもしれないのにしないのはどうなんだろうと思っただけだよ。ただ一応、自分は小心者なんだ。危ないと思ったら引くからね?」
誤解されそうなので、一応それ以外の理由も伝えておく。
「敵討ちを進んで手伝うような人が小心者なわけないじゃないですか。でも私の仲間のために怒ってくれてたんですね。ありがとうございます」
リズは微笑んで頭を下げた。
(ボンってなりたくないしな!)
幸太郎は不安の種は取り除かないと気が済まなかった。




