結界の先の異変
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スリーロックの面々と別れた幸太郎は、酒場で生産して宿に戻って、一泊する。
「幸太郎様、あの眠れなくて、その…」
途中、エルが眠れないらしく顔を真っ赤にしながら部屋にやって来た。
「わかった。任せろ」
エルの部屋に行き、寝かしつけて来てあげた。
「ねんねんころりやー」
「え?いや、あのそういう意味で言ったのではなくて」
最初はものすごく戸惑っていたが、そのうち本当に眠くなって来たようで、最後はすごい幸せそうな寝顔で寝ていた。
幼い頃の妹相手に上達した速攻寝かしつけスキルが久々に炸裂した。
「幸太郎様ーもう無理ですー」
「一体どんな夢を見ているのやら…」
幸太郎は部屋を後にして、自分の部屋に戻り寝ることにした。
翌朝、宿の食堂に降りてきたエルは何故か微妙に表情が暗かった。
「おはよう。あれ?どうしたの?」
「いえ、幸太郎様の手つきが思ったり優しくて気持ちよくてすぐ落ちてしまったのがショックで」
「ブホッ」
隣にいた見知らぬ人が牛乳吹き出してた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よし、食料はこれくらいでいいかな」
馬車に食料を詰め終えた幸太郎は、エルがある馬車を見つめていることに気づいた。
「どうしたの?あ、スリーロックの連中か」
昨日酒場であったスリーロックのメンバーが、馬車の商人らしき人と話をしていた。
どうやら準備が終わったようで、スリーロックが護衛する形で、馬車は出発していく。
「エルが他の冒険者のことを見つめているなんて珍しいね。何か気になる人でもいたの」
「幸太郎様以外の人間に興味なんてありませんが、あの馬車は気になりました」
そう言って、エルはスリーロックが護衛する馬車を指差す。
「特に変哲のない普通の馬車だと思うけど?」
「ものすごい魔力を感じます。真実写しをかけてみてください」
「どれどれ…本当だ」
半信半疑で真実写しの眼鏡越しでみてみると、馬車からあふれんばかりの魔力が迸っていた。
「なにあれ、中にスーパーサイヤ人でもいるのかって感じなんだけど…」
色としては緑色のオーラのようなものが大量に迸っている。
どうみても異常な魔力だった。
「中にものすごい魔道具が入っているのかと気になった次第です」
「ふーん。そういえばスリーロックの連中、あの森に向かうみたいなこと言ってたし、マルゴッドの街に行くつもりなんだろうかね。豪商は冒険者雇って森を通るらしいし」
森を通れば、マルゴッドの街に最短で行ける。
しばらく離れた後も其の魔力の奔流は見え続けていた。。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
食料や消耗品を補充して、幸太郎達はここから南西に2日ほど言ったところにある村を目指す。
スリーロックのような金クラスが通れる道ということで、道中はそんなに危険な魔物が出ることはない。
それはつまり出ても、マナコスト1の魔物は逃げ出し、マナコスト2程度の魔物しか出ないということで、
「グマアア」
サンベアがたまに出て、熊鍋の材料になってくれた。
それ以外は特に何事もなく進んでいく。
2日後に予定通り、幸太郎達は召喚士の村に一番近い村に到着した。
「あんたら、召喚士に会いにきたのかい?やめといたほうがいいと思うけどねえ」
村で農作業をしていたおばさんに話を聞くと、召喚士はたまにこの辺に姿を見せるらしいが、それは物々交換のため仕方なくであり、交流を深めようとは一切しないとのこと。
しかも召喚士の村のある場所は結界が張られているようであり、一度会いに行こうとした冒険者が散々に迷った挙句半死半生の状態で見つかったりしたこともあったそうだ。
「あいつらおっかないからね。あたしらも交流しようとは思わないよ。触らぬ神に祟りなしさ」
とはいえ、魔物の出現があったりすると率先的に対峙してくれるらしい。
曰く、「我々の仕業だと勘違いされたら堪らない」からだそうだ。
なんとなく、召喚士が排他的になった経緯がわかったような気がした。
「まあ、無理には止めないけど、気をつけなよ」
「はい、ありがとうございます…ところでなんですが」
「ん、まだ何かあるのかい」
「いえ、私のことは召喚士とは見間違えないのですか?と思ったのですが」
「…なに言ってるんだい。あんた魔物使いさんでしょ?召喚士はね、頭にツノ生えてるんだよ」
「ツノ?」
召喚士はツノが生えているらしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気になる情報をうけとったが、とりあえず幸太郎達は森に入ることにした。
今回は、馬車を置いて、これも用意しておいた布を被せておく。
すると、布の色が周囲の景色と同化するように変化する。
「迷彩布なんて便利な布があって助かるよ」
こうすることで、馬車を盗賊の手から守ることができるらしい。
もっとも熟練の盗賊はこのような偽装を簡単に見破るので、これは村人とか素人向けの防犯対策という側面が強い。
「念の為フォレストラビットも何匹か置いて行こう。異常があったら知らせてね」
「キュイ!」
こうした理由は、スケリトルドラゴンを今回は連れていくためである。
「不測の事態に備えて守護持ちを連れて行きたい」
なるべく穏便に済ませたいが話を聞く感じ、村に近づくものには強制排除も辞さないような印象を持ったので念の為である。
「では行きましょうか」
「うん」
「ガウ」
「ヴォル」
「…今のスケリトルドラゴンの声なの?」
エルの呼びかけで、幸太郎とフレイムタイガーとスケリトルドラゴンが声を出す。
(あ、そういえば召喚時に叫んでたな。最近全く鳴かないから忘れてた)
スケリトルドラゴンは普段はあまり鳴き声を出さないが、一応出せることを改めて再認識した。
森の中は確かに結界が張られていた。
「森は私の領域なのに、この森は全く私を受け入れようとしません。まるで森のふりをしたダンジョンとかにいるような感じです」
「その例えはよくわからないけど、ここが異常なのはわかるよ」
幸太郎は目の前の木を見る。
「あれ。さっきつけたはずの目印だ」
「方向感覚を狂わされています。こうなると、迂闊に動くことはできませんね」
「そうだね。でもそれがわかったから次に行こうか」
「え?」
幸太郎は懐から眼鏡を取り出す。
「あ、なるほど」
「うん、やっぱりこの景色は幻が含まれていて、それで方向感覚を狂わされてたみたい」
真実写しは真実を写す。
それによって見えた景色は先ほどの景色とは全く異なって見えていた。
幸太郎は真実写しをエルに渡す。
「これでしたら場所がわかります。こちらへ」
眼鏡をかけたエルの案内で幸太郎達は森の奥へ進むことができた。
エルの先導で森を進む。
するとしばらくして、獣道のように偽装された道が見つかる。
「おそらくこれが村へと続く道かと」
それに沿って幸太郎たちは森を進む。
そうして幸太郎達は、召喚士の村らしき場所にたどり着いた。
「何だこれ…」
畑があり、家があり、井戸がある。
どこにでもある普通の村に見えた。
だが人は誰もいなかった。




