蛙と猪と酒と
街を無事に出た一行は南を目指す。
街でマルゴッド伯爵からもらった地図の写しを見る感じだと、南にはいくつか村があるので、そこを回って情報収集を行う腹積もりである。
幸太郎達が乗っている馬車は全体が木で作られており、雨でも中の人は濡れることはない。
屋根は丈夫なので、エルが時折警戒のために登って監視している。
後ろに出入り口があり、前の方は御者台になっている。
また、左右に窓があり、そこから景色を眺めることもできた。
平野部を抜けると、段々と木の数が増え道の周囲は森の様相となる。
周囲は険しい山々でしばらくはこの道のりが続くと思われた。
馬車が通れるほどの幅があるとは言え道はあまり使われてないようで、所々に雑草が生える道を幸太郎達は歩く。
時々、ホーンラビット達がその雑草をつまみ食いする。
森の道は一本道ではなく、時折分かれ道があるが、地図とエルのお陰で迷うことなく進めた。
エルは森と共に生きるエルフの一族らしく、森についてとても詳しい。初めて来た森なのに迷わず進めるのはエルのお陰だった。
地図だけではおそらくこうはいかなかった。
ただし、この辺りまで来るとそこはもう人間の領域ではないと注意されている。
そこはホーンラビットやゴブリン達が住む魔物の領域であると。
「という話だけど、あんまりでないんだよなあ…」
おそらく理由はフレイムタイガーだと思われる。
これがいるとホーンラビットはまず近寄ってこない。
というか、フレイムタイガーが逆に見かけたら追っかけて捕まえて来て食料の節約に一役買っている。
来るとしたらそれはこちらのホーンラビットを狙うマナコスト2相当、この世界の冒険者で言えば、カシラなどの金クラスに相当する魔物だが、ホーンラビットを襲おうとして複数体で囲まれて返り討ちにあってた。
野生のホーンラビットは群れないという経験則から各個撃破を狙ったのだろうが、経験に裏切られた形なのだろう。
よくも悪くも目立つようで、頻繁に遭遇するはずの弱い魔物はすぐに逃げて、滅多に出ない強い魔物は寄ってきた。
ジャイアントトード
ビーイング
アタック300
ディフェンス300
マナコスト3
潜伏
「ゲロロロ」
巨大なカエルが地面から現れて襲ってきた。
潜伏持ちは、自分から攻撃を行わない限り、相手の攻撃の対象にならない能力だ。
だから、幸太郎達は不意打ち気味に襲われることになった。
「ゴアアアアアア」
「ゲコ…」
食いつかれたフレイムタイガーが至近距離で火炎放射を放って中から丸焼きにしたので事なきを得た。
「だ、大丈夫かフレイムタイガー!?」
「がぶっ」
慌てて幸太郎がフレイムタイガーに駆け寄る。
フレイムタイガーは上半身が粘液まみれだが、無事だったようで、丸焼きになったジャイアントトードにかじりついていた。
おそらく相性も良かったのだろう。
「あ、あぶなかった…潜伏もちとか不意打ち確定じゃないか。心臓に悪すぎる…」
幸太郎は人生初のカエル肉の丸焼きを食べた。
(意外と美味しい)
グレイトボア
ビーイング
アタック400
ディフェンス200
マナコスト3
突撃
「ブオオオオ」
巨大なイノシシがこちらに突撃してきた。
ビーイングは場に出てすぐはマスターもビーイングも攻撃できない。
しかし突撃持ちは、場に出てすぐにビーイングに攻撃できる。
ヒュバッ!
「ブオオーン」
馬車の屋根にいたエルの狙撃で、眉間を撃たれたグレイトボアは倒れた。
「こ、怖かった…なんであんなに勢いすごいの…おまけにデカイし」
身の丈3メートルはあろうかという大きなイノシシが突進してきたのだ。迫力が半端なかった。
あの勢いだとフレイムタイガーの火炎放射でも止まらなかっただろう。
エルが急所を狙撃しなければ危なかったに違いなかった。
「エルがいなかったら、馬車が破壊されてたかも。ありがとうエル」
命の危機を脱した幸太郎はエルの手を握って感謝を表明する。
「いえ、そんな。従者として当たり前のことてますので」
エルは顔を赤くしながら顔を背けていた。
(緊張してたのかな。いくら攻撃に特化したスナイパーエルフとは言え、あんな大きなイノシシだもんな。女の子なら怖いよねやっぱり。男の護衛ビーイング増やしたほうがいいのだろうか?)
そんな幸太郎達の今日の晩御飯はイノシシ鍋になった。
(牡丹鍋美味え)
幸太郎達は森の中の道を進み、
「ブオオオオ」
「え?またぁ!?」
滅多に出ないと言われるはずの強い魔物が襲って来て、
「ゲロォ」
「うわぁ!またフレイムタイガーが喰われた!」
それらを撃退していくうちに、
「ブオォ」
「ゲロロロ」
「2匹で来た!?」
「カロロロ」
「スケリトルドラゴンが馬車をガードしてくれた。これで勝てる!ホーンラビットはジャイアントトードを包囲、そしてエルは狙撃!フレイムタイガーはグレイトボアを抑えておいて!」
ヘトヘトに疲れきってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
幸太郎達は、数多のモンスターの襲撃をなんとか全部撃退して、踏破した。
ようやく森を抜けると、そこは小川の流れる穏やかな道だった。
あとは穏やかな川伝いに行けば次の村に着く。
幸太郎は馬車の中でグッタリしていた。
ビーイング達に指示出したり、警戒したり、終いにはスペルまで使わされた。
「ジャイアントトード湧くわ、グレイトボアが突撃して来るわ、それが一回どころか何回も出て来るわ。本当に難所だったわ…」
幸太郎は銀クラスなら問題なく通れるがえらく遠回りなコースと、近道だが白金クラスでないと通ることが困難なコースを紹介してもらい、ザックに勧められて後者を選んだが、心臓に悪いことばかりが続いた。
「ですが、これで一週間は短縮できました」
「豪商とかは、白金クラスを雇ってでも通ることのあるくらい圧倒的にショートカットできるルートだけに近道なのは近道なんだけど…結局誰ともすれ違わなかったな。魔物はアホみたいに湧くのに…本当に白金なら通れるルートだったの?不意打ちされたら白金でも危ない気がするけど…」
幸太郎は白金クラスの冒険者は豊富な経験によって、魔物除けの魔法を使ったり、魔物の特性を理解して通る道や時間帯をずらしたりすることを知らない。
エルの道案内は的確だったが、それは本来は避けて通るべき魔物の生息地帯を縦断する近道だった。
エル自身は、幸太郎の「時間は無駄にしたくない」という意向と、この森には脅威はいないという確信から選んだルートだが、こうなるとわかっていたら幸太郎は違う道を選んでいるはずだった。
そうやって割と強引に、魔物達の縄張りを荒らす勢いで狩りまくって踏破した。
その結果、魔物達が逃げ去り、以後は旅人も重宝する安全なコースになっていたりするのは少し経ってからの話だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そのあとは特に魔物に襲われることもなく村に到着した。
村人からすれば危険な森の方から出て来た魔物を引き連れた集団である。
最初のように戦闘になるかと思われた。
「この紋所が目に…見てもらえますか?」
「ははぁ!」
マルゴッド伯爵から預かって来た紋章の効果は抜群だった。
村人達は紋章を見た途端、その場にひれ伏してしまった。
「マルゴッド伯爵ゆかりの方で御座いましたか!」
村長を名乗る人物が現れたので、途中の村で村長に会ったら渡してほしいと頼まれた手紙を渡す。
それを見た村長の顔がみるみる豹変して、最後はすごくいい笑顔になっていた。
「ささ、召喚士様どうぞ我が家にお泊まり、旅の疲れを癒されてください」
本当にこうかはばつぐんだった。
「流石は幸太郎様です。ご威光はこんな辺境の村にまで及んでいるとは」
「いや、マルゴッド伯爵の威光だからね?勘違いしたらダメだから。しかし、襲われるよりマシとはいえ、こんな歓迎されたら申し訳なくて胃が痛いです…」
流石に胃痛のために貴重な回復スペルを使いたくないと思う幸太郎であった。
歓迎の宴を固辞して、一晩だけ泊めてもらう。
「召喚士の村ですか…それでしたらこの南西に宿場町がありますのでそこで情報を集めるといいかと思います」
「ありがとうございます。これつまらないものですが」
「こ、これはまさか森の魔物の肉ですか!?」
情報と泊めてもらったお礼に、グレイトボアやジァイアントトードの肉を置いて行ったら大層驚かれた。
どうやら、あの魔物を狩るのは相当な強者の証らしい。
あと高級食材だったりする。
難易度的な意味で。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
村長から次の町の情報を得た幸太郎はそこを目指す。
村から宿場町までは日が暮れるまでに着くことができるくらい近場にあった。
その辺りは流石に整備がされてるらしく、魔物が出ることはなかった。
そのため、時間通り夕方には、幸太郎達を乗せた馬車は街の関所にたどり着く。
村長に聞いたところによれば、あの山間に囲まれた森を通るルートは滅多に使われない難所で、本来の旅人は、街から山を大きく迂回する本道を使ってこの宿場町にたどり着くそうだ。
本道の方からは、頻繁に馬車が行ったり来たりしていた。
関所に入ると、兵士たちはビーイングの数に驚いていたようだが、マルゴッド伯爵の紋章と紹介状を見せたら、あっさりと関所を通してもらえた。
それ以上の検査もなく、マルゴッド伯爵の威光はこの辺りでも健在のようだった。
もしかしたらミスリルのプレートでも問題なかったかもしれないが、時間がかかったかもしれない。
関所を通ると、マルゴッド伯爵の街ほどではないが、多くの宿や飲み屋が軒を連ねていた。
商店も軒を連ねており、商人や冒険者が数多く行き交い、賑わいと活気にあふれている。
関所を通ったことが、問題ないことの証であるかのように、ビーイングを多く引き連れていても特に騒ぎにならなかった。
ただやはり魔物が街にいるのは怖いのか、すれ違う時も大きく迂回するものは多かった。
普通の人はフレイムタイガーに、そして大量のホーンラビット(例の如く連れているのは必要最低限であとは外に潜伏させている)に、迂闊に近づきたいとは思わない。
本来なら、フレイムタイガーは馬車に入れておくべきなのだが、マルゴッド伯爵の街で、ビーイング達を馬車の中に隠してた時に強盗に襲われた経験のある幸太郎には、隠すという選択はなかった。
(すいませんすいません。身の安全が最優先なんです…)
治安の悪いこの世界ではフレイムタイガーは抑止力としてはうまく機能してくれていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
幸太郎達は比較的大きな宿を取ることができた。
さっきの村の村長にオススメされた宿で、馬小屋もバッチリ備え付けられている。
いつも通り、スケリトルドラゴンを馬小屋に置いて(馬達がたいそう怯えてたが仕方ない)
エルとフレイムタイガーを連れて酒場に向かう。
この世界で酒場を利用するのは幸太郎にとって初挑戦の出来事だ。
「エル、お願いだから酔っ払いに絡まれても喧嘩しないでね?」
「はい。わかりました」
「本当にわかってる?目的は情報収集だからね?馬鹿にされても剣を抜いちゃダメだよ?」
「はい。馬鹿にされても剣を抜いたりしません。それが幸太郎様のことでなければ」
「ダメだ全然わかってない…」
幸太郎は頭を抱える。
「幸太郎様こそ、酒場に入るときは堂々となさってください。カモだと思われたら絡まれます」
「う、うん。わかった」
逆にエルに注意され、釈然としないながらも幸太郎は頷く。
エルやフレイムタイガーと共に酒場に入ると、一斉に視線を浴びた。
冒険者も多く、どれもこれも顔が厳つい。
大半が男で、中には女性の姿もあったが、誰もが修羅場をくぐった人物特有の、何処か近寄りがたい雰囲気を漂わせていたりする。
召喚士のことを知ってそうな旅人や冒険者の多い酒場ということでここを選んだが、早くも後悔しそうになっていた。
(うわぁみんな怖い。この辺強い魔物多かったし、絶対この人ら最低でも金以上の人たちだよ。カシラと似た雰囲気の人いるし)
この辺りは魔物が多く生息しており、村人ですら武装していることもある。
そんなところで冒険者稼業しているので、幸太郎の考えは的を得ていた。
マルゴッド伯爵の治める街にいた冒険者は幸太郎のように冒険者になりたてのひよっ子か、ようやく銀クラスの冒険者がほとんどだった為に、このようないかにも俺らベテランです見たいな人たちに見られることには耐性がなかった。
(なんでこっち見てるんだろう。本当にかんべんしてください)
幸太郎は絡まれないことを祈りつつ。
ビクビクしながらも、頑張って堂々と席につこうとする。
そこに店員さんがやってきて、
「すいませんお客様。ここは酒場ですので、衛生上、動物の店内への出入りはご遠慮いただきたく」
「ああ!すいません!すいません!すぐ出しますので!」
もの凄く常識的なことを言われて、真っ赤になりながら頭を下げた。
フレイムタイガーを外でお留守番させて、特に絡まれることなく無事店内に入ることのできた幸太郎は、改めて飲み物や食べ物を注文して腹ごなしをした後、勇気を出して隣の客に声をかけて見た。
「す、すいません」
「ん?」
そこに座ってたのは、冒険者らしきおそらくはリーダー格の戦士の男と、魔術士らしき帽子をかぶった女性と、弓使いだけど、顔は盗賊っぽい男性が座って酒を飲んで居た。
「実は、この辺に初めてきた冒険者なんですが、良かったらこの辺のことを色々教えてくれませんか?」
「おお!同業者なのか!いいぜ、座れよ」
リーダー格の男に、この辺の情報を教えてほしいといったら快く承諾してくれた。
「あんたは一体どこからきたんだい?」
「マルゴッド伯爵の治める街から森を抜けてきました」
「あの森を抜けて?あそこは強い魔物の出る危険な森だろう?すまないがあんたはどのランクの冒険者なんだい?」
「…この前ミスリルになりました」
「あんたの年でミスリルなのか!すげえな」
プレートを見せたら大層驚かれた。
「いや、すまない。年下のように見えたし、てっきり新米かと思ったら大先輩でしたとは」
「いえ、違うんです!たまたま功績を何個か挙げたのでミスリルになれただけで、まだ冒険者になって日は浅いのです。ですのでどうか気兼ねなく接していただければと」
「そういう例はたまにあると聞いたが実物を見たのは初めてだ。ならお言葉に甘えさせてもらいます」
そういってリーダーの男はウィンクする。
「俺たちも今度、あそこの森の魔物討伐のクエストを受ける予定なんだ。それをクリアしたら晴れて白金にランクアップさ」
そう行って、金のプレートをチラリと見せるる。
「よかったら森でどんな魔物がいたのか教えてくれないか?」
幸太郎は、森であった魔物の特徴などを無難な範囲で伝えていく。
(流石にマナコストがどうとかアタックがどうとかは言えないよな)
「あの森には、ジァイアントトードどグレイトボアがいましたね。たまに2匹で襲いかかってくるから気をつけたほうがいいですよ」
「その2匹に襲われて無事だったの?…さすがはミスリル」
リーダーの隣に座っていた魔術士の女性が驚いている。
「うちには優秀な弓使いが居ますので」
そう行うと、フードを被ったままのエルは頭を少し下げる。
「グレイトボアは頭が弱点のようでした。そこを狙えば比較的簡単に倒せます」
「物凄い速度で突進してくるという魔物の額に狙って当てるとか物凄い度胸なんだな…いやミスリルだから当たり前か」
と弓使いか盗賊か微妙な風貌の男が顔を引きつらせている。
「ジァイアントトードも普段は土の中に隠れていて、迂闊に近づいたら飲み込まれてそれで終わりなのに。よく無事だったわね」
「フレイムタイガーが炎を吐けるので相性が良かったです」
「ああ、さっき連れて来てた虎か。…あれ、ジャイアントトードより強い魔物なのか。ということは君は魔物使いなのかい?」
「いえ、あれは召喚魔法で呼んだものでして」
「召喚士なのか!もしかしてリズを知っているか?」
リーダーが驚いた声を上げる。
(いきなり大当たりを引いたかもしれない)
「いえ、聞いたことない名前なのですが、もしかして他の召喚士をご存知なのですか?」
「ああ、まあな。この前ちょっと世話になってな。それまでは召喚士なんて噂でしか聞いたことないし眉唾だと思っていたんだが」
「そうですか。その方はこの辺の召喚士の村の出身なのですか?」
「確かそんなこと言ってたけど、その言い方だと、あんたはそうじゃないみたいだが」
「はい。じつは私は遠方から旅をしてきた流れの召喚士でして、この辺りに召喚士の村があると聞いてやってきたのです。ですので召喚士の村の所在について心当たりが聞ければと思っていたのですが」
「なるほど、そう言われたら確かにあれがない」
「はい?」
「ああ、いやすまない。召喚士の村については俺らも詳しく知らないんだ。リズも召喚士の村のことは教えてくれなかったしな。それに召喚士の村は排他的だと聞いた。余所者は歓迎されないかもな」
「そうですか…」
いや、それは今までの話から推測できることだ。
実在してるのに眉唾な話と思われるくらい召喚士がレアな理由は里に引きこもって出てこないこと以外はあり得ない。
「ただ、リズとどこで別れてどこに去ったかは教えてもいいぜ」
「本当ですか?」
「ああ、条件は一つ。召喚魔法を見せてくれないか?あんたを疑うわけじゃないが、召喚士じゃないやつにリズのこと教えたと知られたらどやされそうだからな」
それは確かにそうだ。
召喚士達が意味なく排他的になったわけではない。
おそらくは召喚士とそれ以外で何か諍いがあったからだ。
召喚士じゃないやつに召喚士の村の情報を教えるのは確かにあまり良くない。
この冒険者達はリズとやらに恩があるようだし、不利益になるようなことはしたくないのも至極当然だ。
幸太郎は、手札からホーンラビットを召喚する。
「「「おおお!」」」
それを見た店の客達が声を上げる。
光が凝縮してホーンラビットとなって現れたのだからそれは驚くだろう。
「どうです。これで私が召喚士だと証明できたかと」
「あの、お客様!ここは動物の持ち込みは禁止だとさっきも言ったのですが!」
「ああ、すいません、すいません、すぐ外に出しますので!」
店員がこちらに険しい顔で向かってきたので、幸太郎は慌ててホーンラビットを抱いて店の外に置いてくる羽目になった。
「なるほど、本当に召喚士だったんだな。疑って悪かった」
「いえ、当然のことです」
「召喚士なら、教えるよ」
リーダーは周囲をチラリと見渡してから、顔を寄せて小声で告げる。
「リズとは、ここなら南西に2日ほど行った村で別れたんだ。そこでリズはここが召喚士の村に最も近いからと言って別れて森に入っていった。可能性があるとしたらその森だな」
「…なるほどありがとうございます。しかし、聞いた上で何なのですが、そんなプライベートな情報って教えても問題なかったのですか?」
そう幸太郎はダメ元で聞いて見たが、本来であれば人の、おそらくは女性の居住地に関する情報は個人情報と言っても過言ではない。
それを同じ召喚士とはいえ、あっさりとそれも見ず知らずと言っていい男性に教えてもいいのか?という思いで聞いて見たのだが。
「プライベート?なにそれデザートの名前か?」
衛生という観念はあるのに、この世界にプライバシーという概念はまだなかったようだった。
「森の情報ありがとうな。俺の名前はクレイン。リズにあったらよろしく伝えてくれ。スリーロックのクレインといえばわかるはずだから」
「わかりました。こちらこそ色々とありがとうございました」
他にも様々な情報を交換して、幸太郎達は冒険者チーム「スリーロック」の面々と別れた。




