↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/67

遺跡に眠る古代兵器

「幸太郎様に名指しの依頼が入っております」


 翌日、冒険者組合に向かった幸太郎は職員のお姉さんにそう告げられた。


「名指しの依頼?」

「はい。依頼者がこの冒険者に受けて欲しいと直接依頼を行う制度です。いかがいたしますか?」


 冒険者登録してからたった1日でオファーが来た。

 多分、昨日のゴブリン討伐が広まった結果だろう。

 ちなみに倒し方についてはいろいろ頑張って、本当に頑張ってごまかした。

 秘伝だとか禁忌だとか、とにかく理由を並べて喋らなかった。

 最後はきっと呆れられてたと思う。


「とりあえず話を聞いてみます」

「畏まりました。では待合室へどうぞ」


 そこで幸太郎達は待たされ、やがて呼ばれて会議室の一室に向かう。


「初めまして、あなたがうわさの召喚士ね!」


 そう声をかけて来たのは、赤い髪と片眼鏡が印象的な女性だった。


「私はセシリー。この街で探究院の主任研究員をしてるの。よろしくね!」


 セシリーはそういって手を差し出してくる。

 探求院とはこの世界の真理を追い求める組織で、元の世界における研究所と大学を複合したような組織だと聞いている。


「あ、どうも初めまして幸太郎と言います。この街で金の冒険者しています。どうぞよろしく」


 幸太郎はその手を握り返して握手する。


(この世界にも握手の習慣あるんだな)


 村人の時は握手なんてしなかったから、握手の習慣はないと思っていた。

 もしかしたら貴族と思われていたから、握手されなかったのかもしれない。


「うわさは聞いてますよ。ザックにえらく気に入られているとか、ゴブリンをほぼ単独で100匹討伐したとか」

「ど、どうも」


 フレンドリーに話しかけてくる人だなと幸太郎は思う。

 組合長も呼び捨てだし、組合長の知り合いだったりするのだろうか?


「実はそんな実力者の君に依頼したいことがあってね。実は今、この付近に眠る古代兵器の調査を行なっているんだ。その調査の手伝い兼護衛をお願いしたいんだ」

「古代兵器ですか?」


 古代兵器、何やらロマンあふれる名前が出て来た。


「そう!興味ある?受けてくれる?」

「そうですね。ですが受けるためには依頼の詳細と報酬を聞かせていただけないと…」

「そうねそうね。報酬は金貨100枚。主な内容は古代遺跡までの護衛と古代遺跡の魔物の掃討、そして発掘作業中の警護といったところかな。期間は10日間から30日間」


 報酬は高すぎた。金の冒険者に出す金額ではない。


「それは金の依頼じゃないですよね?ミスリルの依頼では?」

「ん?計画書はザックに提出済みだし、許可ももらっているよ。名指しの依頼は、組合の許可さえあればランク制限はないから。それに幸太郎君ならミスリルの実力あるから問題ないって」

「そ、そうですか」


 条件としては悪くない。

 金貨100枚あればしばらくお金にも困らないし、報酬の高い仕事は実績ポイントも高い。

 ミスリルになるために必要な期間はぐっと短くなるだろう。ただ報酬の高さは依頼の困難さに比例する。


「ひとついいでしょうか?なぜセシリーさんは幸太郎様を名指ししたのですか?発掘作業ということなら、作業員を守るためにも護衛は多いほうがいいですよね?私たちは見ての通り3人なのですが」


 エルがそんなことを聞いた。

 幸太郎も同意する。

 金貨100枚出せるなら、銀を多く雇うのも普通にありだろう。

 数十人は雇えるはずだ。


「うーん。それについてはちゃんと理由があってねー。実はその遺跡はゴブリンの巣窟になっている可能性が高いんだよね」

「え?」

「多分、幸太郎君が狩ったゴブリン達はそこから来たんじゃないかな?で今もそこにはゴブリンがいる可能性が高い。まあさすがに100以上はいないと思うけど、ザックに相談したら幸太郎君が最適だって教えてくれたんだ。幸太郎君ならゴブリン数十匹程度物の数じゃないって」

「あーはいまあ」

「本当にゴブリンが数十匹もいたら、銀をたくさん雇っても何人か死なせてしまいそうだし、ここは凄い召喚獣を呼べるとうわさの幸太郎君に手伝ってもらいたいなーなんて。そもそも聞くところによるとミスリルって銀が束になっても敵わないんだって?それ本当?」


 銀はゴブリン3匹を単騎で討伐できる程度の実力が必要であり、それはつまりソルジャーと同じ100/100相当である。


「いえ、それは…自分もミスリルクラスの人にはあったことないのでわかりません」

「ふーん、そっか」


 幸太郎はゴブリン130匹を討伐してミスリル相当の働きと言われた。

 単純に考えれば、ミスリルの実力は銀43人に匹敵することになる。


「でも君は召喚獣をたくさん従えているのでしょう?骨の竜に、燃える虎に、ホーンラビット数匹に、小さなドラゴン。どれもこれも銀に匹敵するかそれ以上の魔物達だよね?なら幸太郎君に頼んだほうが安上がりになるかなーって思うの」


 セシリーの指摘は的確だ。

 さらに言えば幸太郎は外にもホーンラビット数十体を待機させている。


「だから古代文明の研究のために幸太郎君の力を貸してくれない?」

「ふむ…」


(さてどうしようか?報酬は魅力的だけどなー。色々知られたくないことが漏れそうなんだよな…)


 ゴブリンはスペルで討伐した。

 しかし組合長には召喚魔法(スペル)で討伐したと報告している。

 それはスペル、つまり召喚魔法(スペル)以外の攻撃魔法(スペル)や回復魔法(スペル)を使えることを知られて騒ぎになりたくないからだ。


(そう、これ以上面倒ごとに巻き込まれたくない!)


 面倒ごとを想像するたびに、村長のあの顔がちらつくのだ。

 しかし面倒ごとを避けるためにスペルを使わないとなると、ゴブリン討伐は厳しいだろう。

 ビーイングをよぶ手もあるが、強力なやつを呼んでも大丈夫かどうかの保証はいまだない。

 というかこれ以上よんで家計を圧迫したくない。

 今よんでいる分の食費もバカにならないと昨日わかったのだ。


(報酬は魅力的だけど、今回は断ろうかな。護衛とか初めてで、いろいろと難しいし。でも古代兵器はちょっと興味あるなあ)


「ちなみに古代兵器ってのはどんなものなんですか?」

「お!興味ある?古代兵器はね、文献によるとエンシェントデストロイヤーって言うらしいよ。それが眠っているんだって」

「へぇ…え?エンシェントデストロイヤーって…」


 エンシェントデストロイヤー

 ビーイング

 アタック600

 ディフェンス700

 マナコスト9

 登場時、手札からスペルカードを全てデッキに戻しその分カードをドローする。

 相手のビーイング全てにもどしたスペル枚数×100ダメージ。


(なんでそんな超危険なビーイングの名前が出てくるのさ!)


 出て来た名前は、幸太郎が、影響範囲が分からなすぎるから、とデッキに組み込まないことを決めているビーイングの一体だ。

 そんなのがよりにもよって近郊の古代遺跡に眠っている。

 おそらくは未覚醒、つまり場に出てない扱い状態で。


「その依頼是非受けさせてください!」


 幸太郎は何を置いてでもこの依頼を受けないといけないと思った。


「うんうん、そうでなければ!やっぱり古代兵器は心踊るよねー!護衛よろしくね」

(だめだこいつ。早くなんとかしなければ)


 幸太郎は苦笑いのまま、セシリーと再度握手した。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 準備を終えた一行は遺跡へと出発した。

 ゴブリンが出た地点付近を抜けて更に先へ。

 途中でゴブリン討伐の事後調査を行なっていた冒険者と遭遇し、握手を求められて、情報交換をする。


「君が凄腕の召喚士なんだって?いったいどんな召喚獣でゴブリンの群れを掃討したんだい?」

「あー、そのー、臭い息を吐く魔獣、みたいな?」


 倒した方法は適当にごまかした。

 目的地付近の街道で、馬車を止める。


「ではここからは徒歩で行きましょう。スケリトルドラゴンとカシラとミニドラゴンは残って馬車の警護を。エルとフレイムタイガーとホーンラビットは遺跡までの護衛」


 各々がうなずき、鳴き声を上げ、了解の意を示す。


 ヒュッ!


 森の中はエルの独壇場である。


 ヒュッ!


 森の種族とも言われるエルフは森の中をまるで自分の庭のように駆け回る。


 ヒュッ!ヒュッ!


 彼女が弓を引き放つ度に風切り音と共に、矢が放たれて遠くにいるはずの魔物が倒れる。


 ヒュッ!ヒュッ!


 木から木に飛び移り、矢を回収すると、再び的確に魔物を狙撃していく様は、踊っているようでもあった。


 ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!


「す、すごいわ、これがミスリル…」


 それを見たセシリーが感嘆の声を上げる。


(エル、こんなに凄かったのか…)


 薬草採取の時は、いきなりゴブリンの群れに出くわしたから慎重に行動して幸太郎の判断を伺ったエルだが、ここは単独行動の魔物が多く、頻繁な遭遇戦が予想されたので、エルに露払いを命じたら、この縦横無尽の大活躍を見せてくれた。

 この身のこなしなら、もしかしたら矢さえ十分にあれば、エル単独でもゴブリン100匹程度は討ち取れたかもしれない。

 フレイムタイガーは、セシリーと幸太郎の護衛としてそばに控えている。

 途中で何匹かの魔物がエルの狙撃を突破する。


「ガルル!」

「グマー!」


 だがその魔物は、フレイムタイガーによって噛み砕かれ、あるいは前足で薙ぎ払われて絶命する。


「あの燃える虎も魔物をほぼ一撃で倒すの?サンベアとか銀が4名で挑む強敵だって聞いたのに…」

(カシラってそんな強敵だったんだな…)


 サンベアは200/200だから、カシラと同じ強さだ。

 ならフレイムタイガーには手も足も出ないだろう。

 何しろフレイムタイガーとカシラを何度か戦わせているが、ついぞカシラはフレイムタイガーに勝てなかったのだから。

 襲ってくる魔物はほとんどが、マナコスト2以下の魔物ばかりだったので、この一人と1匹の活躍で、セシリーや幸太郎に肉薄できた魔物は1匹もいなかった。


「キュイ?」

「キュイ!」

「キュイー」


 まあもし肉薄できても、最後には30匹のホーンラビットが待ち構えている。


「ホーンラビットがこれだけいるって…味方だとわかっていても怖いんだけど…」

「その気持ちはよく分かりますが、味方ですのでどうかご安心を」


 これだけいれば、7体のサンベアが襲ってきても十分問題ない計算だ。

 90匹程度のゴブリンの群れにも対抗できるだろう。

 そして3体のサンベアを同時に相手にして、今は丸焼きになったそれに齧りついてるフレイムタイガー。

 別の所で同じく3体のサンベアを穴だらけにしていたエル。

 これらを見て、このメンツならゴブリン130匹が出てもスペルを使う必要はないと確信するに至った。


(大丈夫!今回は大丈夫だ!なんか妙なことが起こらない限り余計なカードを使って妙な事になる羽目にはならないだろう。というかなってくれないと…)


「幸太郎様ご無事ですか?すみません私が当たらないばかりに何匹か突破されてしまい…この罰は如何様にでもお受けします!」


 そう言って戦闘のためにフードを脱いでいたエルの素顔を見たセシリーが、


「ね、ねえ、ちょっと、今気づいたけどこの子エルフじゃないの?ねえ?なんで?プライドで出来てると言われるエルフがあなたに対してはなんでこんなに従順なの?あなた何者?」


 とまあ予想通りに幸太郎を質問責めしてきた。


「事情があるんです…聞かないでください。もう一杯一杯なんです…」


 幸太郎はがっくり項垂れていた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そうして幸太郎はセシリーに質問責めをうけながらも特に危険もないまま一行は遺跡を見渡せる場所にたどり着いた。


「遺跡の入り口が、そろそろ見えるわ」

「そうですか、ところでゴブリンは全くいませんでしたね」

「ええ、そうね。もしかしたらあなたが討伐したぶんでゴブリンは打ち止めだったのかもね。でも予想外にサンベアが湧いてたからあなたたちがいて助かったわ。この調子でよろしくね」


 一行は小高い丘の上から遺跡を探し、


「ギャアギャア」

「グラグラ」

「ギャアギャア」

「グラグラ」


 遺跡の入り口と300を超えるゴブリン達を見つけた


「「はあぁ?!」」


 それを見た幸太郎とセシリーは叫び声をあげた。


「え?なんなの?なんなのあの数?」

「ちょっと落ち着いて幸太郎君!私も予想外なの!」


 幸太郎はセシリーに詰め寄る。

 幸太郎が聞いたところによれば、ゴブリンはいても数十ということだったはず。

 それならば、フレイムタイガーとエルがいれば、スペルカードがなくても対処できる可能性は十分あった。

 そう思っていたところに現れた300のゴブリン。


「こんなの予想外よ!本当ならすぐ引き返して対策を協議しないと…」

「それは…その…」


(いや、確かにそうなんだけど…)


 しかし幸太郎にはここで引くという選択肢はなかった。


(エンシェントデストロイヤーとかもっと怖くて放置できないって!)


 幸太郎的には300のゴブリン<<<超えられない壁<<<エンシェントデストロイヤーなのだ。


(枕を高くして寝れないってこう言うことを言うんだろうか)


 むしろこんな数のゴブリンの近くにはエンシェントデストロイヤーが眠る遺跡がある。

 ゴブリンたちがふとした拍子にエンシェントデストロイヤーを目覚めさせたら?

 そいつらが人間を敵と認識していたら…


(うん無理!放置する方が無理!でも対処方法が…いや、待てよ)


 幸太郎は考え込む。

 これは実験をするチャンスじゃないかと。

 今回の目的はエンシェントデストロイヤーを確認して、危険なら封印、破壊、あるいは無力化すること。

 そのためには、似たような効果を持つスペルで検証しなければいけないのでは?


(うん、そうだ。その結果次第ではもしかしたら)


 だから幸太郎は使うべきかどうか悩んでいたスペルを使うことにした。


「どうするの?撤退するなら早いほうがいいわ」

「いえ、あの。実はですね…方法がないわけじゃないんです」

「え?」


(本当は他人の前では使いたくなかったけど)


 幸太郎の言葉にセシリーはキョトンとした顔になる。


「ただこれから行うことは内緒にしてくださいね?」

「え?ええ、いいけど」


 セシリーが戸惑いながらも頷く。


(まあ無駄かもしれないけど、頷いてくれただけよしとしますか)


「でも300体ってそれこそ広範囲を攻撃できる魔術士でもいないと……」


 セシリーが何か言っているが、幸太郎は無視する。


「グマアア!」

「ギャギャッ!」

「ゲシャア!」


 幸太郎の眼の前では、迷い込んだサンベアがゴブリンの一部と戦おうとしていた。


(ゴブリンは敵。ゴブリンは敵。それ以外は味方。それ以外は味方)


 幸太郎は祈るように手札からカードを一枚プレイした。


 矢の弾幕

 スペル

 マナコスト3

 相手のビーイング全てに100ダメージ


「一体何して…ええええ???!!!」


 スペルの発動によって出現した無数の矢がゴブリンたちに降り注ぐ。


「「「「ピギャアアイイアアアアイ」」」


 雨のように降り注ぐ矢にゴブリンたちは逃げることも叶わずに貫かれていく。


「……」


 やがてそれが収まる頃には立っているゴブリンは1匹も立っていなかった。

 残ったのは矢に貫かれたゴブリンの死屍累々。


「グマアア!?」


 それを見たサンベアは恐怖で逃げ出していた。


(よし!)


「……え……今のは?」

魔法(スペル)です」

「え?魔法(スペル)?」

魔法(スペル)です」

「……」

「……」


 幸太郎とセシリーは互いに見つめ合い。


「あなた召喚士じゃないのおおお!!!」

「おち、落ち着いて。苦しい…」

「こ、幸太郎様!」


 エルに止められるまで、セシリーに思いっきりガクガクと揺さぶられることになった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「あんな魔法(スペル)を使えるなんて聞いたこともないわよ!あなた本当に召喚士なの?」

「はい。まあ、そういうことになってます…」

「伝説の召喚魔法(スペル)を使えるだけじゃ飽き足らず、広域攻撃魔法(スペル)が使える?なんでそんな存在がなんで今まで無名だったの!?あなた実は名の知れた大魔術士じゃないの?」

「いえ、自分は日本の出身の、金になりたての冒険者で…」

「日本なんて聞いたこともないわ!」


 どうもセシリーは、幸太郎の正体は実はかなりの有名人で、今は名前や出身を偽っているのではないかと疑っているようだった。


(でも本当のことなんだよな。なんで信じてくれないんだろう…)


 幸太郎は信用されないことに地味に傷ついた。


「まあいいわ。取り敢えずは、あなたのおかげで遺跡のゴブリンを排除できたんだもの、これで安心して調査ができるわね」


 セシリーは取り敢えず追及するのを保留してくれたようだ。

 幸太郎は内心安堵する。


「さて、今度は遺跡の中の調査ね。あなたのような大魔術士がいれば安心だわ。引き続きよろしくね?」


 死屍累々の中を進んで一行は遺跡の中に突入する。

 中は、ひんやりとした空気と静寂に支配されていた。

 入り口付近は、長年の侵食によって、壁がヒビ割れ植物が生い茂っていたが、それらは現在誰かに踏み荒らされていた。


「おそらくゴブリンが侵入したのでしょう」


 エルが足跡を見てそう呟く。

 遺跡の中のゴブリン残党を警戒しつつ一行は遺跡を進む。

 遺跡の奥に行くと、遺跡の中にもかかわらず、明かりが灯っているのに気づく。


「この手の古代遺跡は、明かりが灯る不思議な石が設置されているの。ただその石は取り外すと力を失って輝かなくなるんだけどね」


 そう言ってセシリーは、その光る石?を取り外す。

 外すと光が消え、再びはめ直すと、石は再び光りだす。


「石って、これ電球じゃ…」

「ん?なんか言った?」

「いえ、なんでもないです」


 セシリーが外した光る石とやらは、どう見ても電球としか思えない代物だった。

 ただ、接続端子は見たこともない形状をしてたし、そもそも三千年も機能し続ける電球は聞いたこともない。

 しかも触って確かめたところ、発熱が全くないことも驚くべき点だった。

 幸太郎の元の世界よりもずっと発達した文明の技術が使われていることは明らかだ。

 しかも奥に入ってから気付いたのだが、入り口付近はともかくとして、そのあとは驚くほど劣化や破損が見られない壁が続く。

 普通は植物や経年劣化で壁も床も破損していくものなのだが…。

 警戒しつつ奥へと進む。


「ここは一見壁のように見えるけどね」


 そう言ってセシリーは、ある場所に近づく。


「こうやって近づくと自動的に壁が消えるの!何かを守るにしては勝手に消えてしまう壁を作るなんて、昔の人はなんでこんなもの作ったんだろうね?」

「そうですね…」


(いや、それ壁じゃなくて自動ドアですよ。なんかセンサーらしきものが壁についてますし…でも普通のドアは消えたりしないんだよな)


 セシリーが出たり消えたりする壁を行ったり来たりすると、その度に壁が出たり消えたりする。

 それにラグがあるので幸太郎も消える前に壁に触って見たら、壁は消えるまで確かにそこにあり、そして一瞬で消えて、数秒だったらまた現れていた。

 幸太郎はこの遺跡がかなり高度な、少なくとも元の世界よりも高い技術水準で作られていたことを確信した。


(電球一つとっても技術水準が高すぎる。なんでこんな文明の技術が今に継承されていないんだ?)


 全くもって不思議なことだった。


「凄い技術ですね。なぜこんな文明が継承されていないんでしょうか?」

「ん?あ、幸太郎君もそこが気になる?私も凄い気になるよ。古代文明って文献見る限り、天界や魔界を自由に行き来できるくらい凄い魔法(スペル)を誰もが操れるような文明だったそうよ?そんな文明がなぜ滅んでしまったのか?ってのは近年の学会の人気の研究分野の一つよ」


 セシリーはそういって遺跡を進む。

 扉の先は意図的に照明が少なくされた薄暗いエリアになっていた。


「それを解くことができれば、古代文明の技術を復活させるカギもまた見つかるかもしれないね」

「復活させたいんですか?その、古代文明の技術を」


 エルが珍しくセシリーに問いかける。


「どうだろ?古代文明が滅んだ理由がその進みすぎた技術にあるとしたら、復活させるのはどうかと思うよ?領主は戦争のために復活させたがっているけどね。そうでなければこんなご時世に古代遺跡の発掘にお金なんで出さないだろうし」


 なるほど、同じことは考えていたんだなと幸太郎は思う。

 もしかしたらエンシェントデストロイヤーのことを話したらセシリーは協力してくれるかもしれない。


「でも、まあ、私自身はまずは理由を知りたいってのが先だけど、領主様は具体的な成果をご所望だからね。これからもお金出してもらう為にもいいお土産は必要なんだよねー」

「なるほど、それが古代兵器エンシェントデストロイヤーなんですね?」

「そう、それに使われていた技術とか情報を持ち帰れたら追加の資金もらえるからね。なんでそういう情報をもし見つけたら報酬弾むよ?」


 腰が引け気味な幸太郎のやる気を奮い立たせるためだろう。セシリーがそういって期待した目を向けてくる。


「善処します」


 幸太郎はそう答えるに留めておいた。


「…何か来ますね」


 エルの一言で、幸太郎はセシリーを捕まえ、フォレストラビットに囲ませる。

 今いる場所は一本道になっており、長い通路が続いている。その奥は闇に包まれて容易に見通せない。

 フレイムタイガーとエルが前に出て、エルが弓を構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。