7/13
7 あれから五年、ガゼルの日常
マリナが妖精の郷へと連れ去られてから、5年の月日が流れました。
人間界でのマリナの年齢は、八歳。
ガゼルの街にある彼女の実家には、今、明るい笑い声が響いています。
「お父さん、それは違うよ! その草は毒消しじゃなくて、お腹が痛くなる草!」
「うわっ、本当だ……。さすがフェリクス、母さんによく似て薬草に詳しいな」
元気な声を上げているのは、あの時、母のお腹の中にいた新しい命。
五歳になったマリナの弟、フェリクスでした。
フェリクスは姉のマリナによく似た、綺麗な湖の色の瞳を持っています。
一時期心労で患っていた母の体調はすっかり良くなり、今では街一番の薬師として大忙し。
父もまた、引退を撤回して現役のAランク冒険者としてガゼルの街の治安を守り、同時に弟子を育てる立派な父親になっていました。
かつて絶望に沈んでいた家族が、ここまで前を向いて笑えるようになったのには、ある「理由」がありました。




