4 残された両親の祈りと、新しい命
一方、人間界のガゼルでは、悲望に暮れる両親の姿がありました。
「くそっ! なんであの日、きちんと強く手を握っていなかったんだ……!」
元Aランク冒険者の父は、我を忘れて森へ入り、妖精の痕跡を探しました。
しかし、妖精の郷への入り口は、人間の力では絶対に見つけることができません。
母もまた、泣き崩れていました。
一刻も早く、自分も娘を探しに行きたい。
しかし、過酷な捜索活動を始めようとした矢先、母の体に異変が起きます。
めまいと、激しい吐き気。
医者に診てもらった結果、衝撃の事実が発覚しました。
「……二人目を、妊娠している?」
お腹の中に宿った、新しい命。
それは喜ぶべきことでしたが、今の状況では残酷な枷でもありました。
「あなた、私は……私はどうすればいいの? マリナも探したい、でも、この子も守らなきゃいけない……!」
「落ち着け、お前は動くな。マリナの捜索は、俺がギルドの仲間を雇ってでも続ける。お前は、その腹の子を第一に考えるんだ」
母の体調は優れず、とても危険な森の奥へ行ける状態ではありません。
結局、両親は「マリナを今すぐ自分たちの手で探しに行くこと」を、泣く泣く断念せざるを得なくなったのです。
彼らはただ、ギルドへの依頼と、愛娘の無事を神に祈るしかありませんでした。




