3 妖精の郷にて
マリナが目を覚ますと、そこは見たこともない幻想的な世界でした。
綺麗な花々が咲き乱れ、空には二つの月が浮かんでいます。
「目が覚めたか、人の子の転生者よ」
低く、けれど弦楽器のように心地よい声が響きました。
見上げると、そこには透き通るような銀髪と、鋭くも美しい琥珀色の瞳を持つ、圧倒的な存在感を放つ男性が立っていました。
背中には、月の光を切り取ったような美しい羽。
彼こそが、この世界の妖精たちを統べる『妖精王』でした。
「ここは……?」
「我が領域、妖精の郷だ。我が配下たちが、あまりに愛らしく、そして妙に魂の格が高いお前を気に入ってな。連れてきてしまったのだ」
妖精王は悪びれる様子もなく、ふっと微笑みました。
マリナは前世の大人の思考で、すぐに現状を理解します。
(誘拐された!? マズい!お父さんとお母さんが心配する! 帰らなきゃ!)
「おうち、かえる! おとうさん、おかあさんのところ!」
小さな体で精一杯抗議しますが、妖精王は静かに首を振りました。
「それはならぬ。一度我が郷に入った者は、そう簡単には帰せぬのだ。己の力でこの郷の結界を抜けなければ外に出れぬ。それに……お前のその『魂の知識』、私にとって非常に興味深い。しばらくここで、私の退屈を紛らわせてもらおう」
「いやいや、何言ってんの??誘拐だよ、あなたたちのやった事は!父さんや母さんが心配してるのっ!今すぐ返してっ!」
あまりの理不尽さに幼子仕様の猫被りも剥がれてブチ切れてしまいました。
「‥‥‥」
「出来ないんだったら、とにかく両親に『生きてる』って連絡して!!」
「‥‥‥」
「もぅ!!『妖精がここに連れてきてしまった!一度ここに入ったら数年帰れないっ!無事だから心配するなっ!定期的に連絡する!!』って私の両親に連絡して!!今すぐ!!」
「‥‥‥わかった」
「私がここに来て何時間経ってるのよ?」
「‥‥‥二日」
「はぁぁ??二日も経ってんの??なら急いで連絡してーー!!」
小さい手を力一杯握りしめ、叫ぶ幼女に睨まれ、妖精王は彼女の言う通り両親に連絡を入れました。




