2 緑の森と、きらめく悪戯
マリナが三歳になったある春の日。
彼女は両親に連れられて、ガゼル郊外の深い森へ薬草摘みに来ていました。
「マリナ、お父さんの側から離れちゃだめよ?」
「はーい!」
小さなカゴを手に、マリナは足元の薬草を見つけては嬉しそうに微笑みます。
前世の知識と母の教えがあれば、レアな薬草を見つけることもできました。
しかし、その「あまりに聡明で愛らしい姿」が、森の奥に漂っていた“人間ではない存在”の目を引いてしまったのです。
ふわふわと周りの空気が揺れました。
「ん……??うわぁ……きれい……」
マリナの目の前に現れたのは、光の粒をまき散らしながら飛ぶ、手のひらサイズの美しい羽を持った生き物、妖精でした。
妖精はマリナの周りをぐるぐると回ると、彼女の鼻先に不思議な粉をふりかけました。
「あ、れ……? 体が、軽い……?」
意識が急速に遠ざかります。
転生者としての高い魔力抵抗を持っていても、その眠気には抗えませんでした。
「おい、マリナ! どこへーーしまった、妖精の群れか!?」
「マリナ! マリナを探して!!」
遠くで両親の悲痛な叫び声が聞こえましたが、マリナの小さな体は、無数の妖精たちによってふわりと宙へ持ち上げられていきました。
そのまま、人間が立ち入ることのできない、空間の裂け目へと消えていったのです。




