11 不器用な妖精王の執着と、近づく卒業
「空間転移など、まだ早い」
妖精王はそう言って、マリナの頭をぽんぽんと雑に撫でました。
マリナは「子供扱いしないで!」と怒りますが、妖精王の本心は少し違いました。
(これほど退屈を忘れさせてくれる存在は、数百年ぶりだ。……手放すには、あまりにも惜しい)
物怖じせず自分に意見し、見たこともない知識で新しい薬や魔法を作り出すマリナとの生活は、妖精王にとって、いつの間にかかけがえのない時間になっていたのです。
だからこそ、彼はわざと厳しい課題を出し、マリナをここに留めようとしていました。
「ふーん……。じゃあ、じいさんが教えてくれないなら、自分で盗むまでよ!」
マリナは負けていません。
修行の合間、妖精王が書庫に眠らせている『空間魔法の古文書』を、最近身につけた速読術で丸暗記していました。
さらに、妖精王が魔法を使う瞬間の魔力の流れを、その澄んだ青い瞳でじっと観察し、すべて記憶していたのです。
(舐めないでよね、妖精王。私の実家には、可愛い弟と、大好きな両親が待ってるんだから。引き止めるなら、もっとガチで来なさい!)
「……マリナ、今、無礼なことを考えていただろ」
「気のせいでーす! さあ、修行の続き! 次は私の新作ポーションの実験台になってもらうからね!」
常春の美しい森に、幼女の元気な声と、『ふっ』と言って口角を上げる楽しそうな妖精王ーー
お互いに一歩も引かない、ハイレベルで賑やかな修行の日々は、マリナの力を爆発的なスピードで引き上げていくのでした。




