第二十五節
午後七時二十五分。
提灯には、いつの間にか灯りが入っていた。
赤い光が石畳に落ちている。
屋台の品は、思っていたよりも嵩張った。
たこ焼き。
三舟。
ネギ焼き。
四枚。
牛串。
七本。
烏龍茶。
四本。
あとは。
「毎度おおきに~」
保治は屋台の店主から袋を受け取った。
今川焼。
垂れ幕には『回転焼き』とあった。
違いが分からない。
粒あんを四つ。
カスタードを四つ。
こしあんは西尾家では不評。
デザートまで揃えた。
ビニール袋の持ち手が指に食い込んでいる。
両腕が重い。
財布は軽かった。
人の流れを避けながら境内を進む。
走り回る子供。
浴衣姿の親子連れ。
団扇を持った老人。
袋をぶつけないよう、ゆっくり歩いた。
社務所が見えてきた。
酔っ払いたちの狂宴が近づいてくる。
酔っ払いの相手は慣れている。
それでも。
あのキス。
栞は羽目を外し過ぎた。
ユーリ。
怒れる上司をどう宥めるか。
何も思いつかない。
キス。
東京最終日の夜。
二人がキスをしようとしていた。
それを傍観していたのは自分だけではない。
栞も見ていた。
直前で止めたのも、栞だった。
その後は機嫌が悪かった。
栞が何を考えているのかは分からない。
ただ。
酔っ払いたちの狂宴だけじゃない。
修羅場も待っている。
気が重かった。
白いテントが見えてきた。
気合入れないといけません。
保治はビニール袋を掲げながらテーブルに近づいた。
「ただいま戻りました! 買って…きましたよ…」
気合が抜けていく。
二の句が継げなかった。
栞の膝の上。
銀髪があった。
栞の手が白い頬を揉んでいる。
「え?」
声が出た。
「何? 見ないでよ」
ユーリが睨んできた。
栞の膝の上に座るユーリはむくれている。
「い、いえ…」
直視できない。
「ユーリちゃん、怒っちゃいやぁ。やすちゃんおかえりぃ」
栞の顔が銀髪の影から出てきた。
蕩けている。
栞。
いや、栞じゃない。
だけど栞だった。
「スタシアさぁん、ユーリちゃん可愛いですねぇ。抱き心地もさいこぉ~」
栞の声は間延びしている。
「でしょ? やっとあなたも分かってくれて嬉しいわ」
隣に座るスタシアの顔の赤みは薄らいでいる。
言葉もおかしくない。
今なら聞いてもらえるかもしれない。
「監査役、食べ物と飲み物買ってきました」
保治はビニール袋をテーブルに置いた。
テーブルの上の焼きそばのトレイは空になっていた。
「わざわざありがとう。何買ったの?」
スタシアが袋を広げ始める。
「いっぱい買ったのね…あ、牛串! 食べたかったのよ」
「お気に召して何よりです。因みにこの後お時間ありますか?」
スタシアが怪訝な顔をする。
「何? さっきから監査役とか畏まって。そんな仲じゃないでしょう?…いいわ、聞いてあげる」
良かった。
機嫌がいい。
いつもは聞いてもらう前に説教が入る。
「ありがとうございます」
保治は軽く会釈をした。
「あー。良い匂いするぅ」
栞の声。
漂うソースの匂い。
栞。
いっぱい食べてくださいね。
これ以上、飲まないことを祈った。
声を追った。
栞は銀髪を嗅いでいた。
「栞ちゃん、やめて。嗅がないで!」
ユーリが頭を振った。
銀髪が揺れる。
「あー。栞ちゃんだってぇ。嬉しいなぁ」
栞は全く動じない。
食べ物に見向きもしない。
さっきから何があったのか理解できない。
恐る恐る尋ねる。
「仲が良いみたいですね…?」
ユーリが顔を歪めた。
「違う。遼ちゃんに何するか分からないから身代わりになっただけ」
身代わり。
では。
「では、若はどこに?」
ユーリは答えずに顎をしゃくった。
隣のテーブル。
テーブルを挟み、恵と剛三が向き合っていた。
その間には若がいた。
恵と剛三の右手が中央で交わり、指が互いの手の甲を締め上げるように組み合わさった。
「ええか剛三、男見せろや。女に腕相撲負けるとか恥ずかしいで」
恵が笑う。
その腕は黒光りして盛り上がっていた。
「分かっとるわ、肘浮かすなよ。肩入れるのもあかんぞ」
剛三の表情は硬かった。
その腕は逞しい。
しかし、恵と比べると迫力が欠けた。
「遼、ちゃんと見といてくれ」
「任せといてや」
若は二人の拳の真上に自身の掌をかざした。
行司。
「ほんと仲が良いよね」
ユーリが栞の膝の上で足を組む。
「ええ。一時はどうなるかと思いましたけど」
あの試合の日。
試合帰りの車の中の空気。
凍り付いていた。
剛三が一階に居つくようになったときは肝を冷やした。
「ほんとほんと」
ユーリが息を吐く。
「ウチも。戻ってきて良かったよ」
その顔はどこか優しげだった。
数分後。
剛三は腕相撲で全敗を喫した。
皆が思い思いの食べ物を袋から選ぶ中、剛三だけが席に沈んでいた。
好機だった。
保治は剛三の隣に腰かけた。
「社長」
声を潜めた。
「富田君、すまんけど一人にしてくれへんか」
剛三の声は小さい。
それは…困ります。
あと二時間と少し。
立ち直るのを待つ余裕はない。
「いえ、仕事の件なのでお願いします」
「仕事…?」
剛三の顔には元気がなかった。
「ええ、商店会長の盛田さんはご存じですか」
剛三は額に手をあてる。
「ああ、肉屋の。盛田のおっさんか」
「その盛田さんから、十時に本部テントまで来てほしいと連絡がありました」
「俺に?」
「いえ、西尾興業として呼ばれたようです。恐らく前にお話しした件絡みかと」
剛三が前のめりになった。
「松永センセのパソコン見たった件か」
「そうです。その時、同席されてたので…」
自分の店も見てほしいと言っていた。
心当たりはそれしかない。
「スタシアさんには話したんか? 一応、監査役やろ」
「いえ、まだです。ただ、説明のお時間はいただいています」
「手回しええなぁ。流石や。…うーん」
剛三が考え込んでいる。
沈黙。
境内の人波は、さっきよりも膨らんでいた。
そして。
「よっしゃ」
剛三が手を叩いた。
「スタシアさんには俺から話すわ。三人で行こうや」
剛三の声に明るさが戻っていた。
「お手数をおかけします」
保治は頭を下げる。
剛三が手を振った。
「かまへん、かまへん。気にすんな。あと、本部のテント着いたら、富田君が仕切ってええから」
「え? いいんですか?」
間抜けな声が出てしまった。
社長と監査役を差し置いて良いのだろうか。
「富田君が名刺渡したから今日の話があるんやろ?」
「それは…」
そうかもしれない。
そうでないかもしれない。
「暗い顔せんでええ。受注やったら仕切ればええ」
「はぁ」
受注。
仕切る。
実感が湧かない。
剛三が肩に手を回してきた。
「心配すんなや。クレームやったら俺らが文句言ったる。それでええやん」
力が強い。
さっき腕相撲で負けたとは思えないほどに。
返答に詰まった。
喉の奥から言葉が出てこない。
若は。
こういう時なんと言うのだろう。
…あ。
「わかりました。…いっちょやったります」
午後九時半。
花火が終わって客は帰り始めていた。
屋台も店仕舞いを始めている。
「そろそろですね」
スタシアが腕時計を見る。
「ええ」
白いテントの下を見渡す。
飲食スペース。
大量の空き缶。
食べ終わった後のトレイの山。
テーブルに突っ伏すように眠る恵。
その恵に寄りかかるように眠る栞。
そして。
ユーリがうとうとしていた。
無理もない。
新聞紙の剣とはいえ、本気の突きを三十本も放っていたのだ。
電池切れになるのも当然だった。
「さっきから馬鹿父子がいないんだけど?」
スタシアは足元の玉砂利を踏み鳴らす。
この人は何でこんなに口が悪いんでしょう?
「確かに姿が見えないですね」
トイレだろうか。
スタシアが舌打ちをする。
「私たちが戻ってくるまでクソガキに番をさせるんでしょう? いないとダメじゃない」
何かおかしい。
七歳児に番をさせる。
良いのだろうか。
けれど。
若に失礼な気もした。
「トイレかもしれません。見てきます」
保治は飲食スペースを離れた。
社務所の横を抜ける。
裏手に回ると、祭りの喧騒が少し遠くなった。
提灯の灯りもここまではほとんど届いていない。
外の水場。
古い便所。
個室は二つ。
水場の脇にはトイレットペーパーが積まれている。
木の戸は少し歪んでいる。
ここだろうか。
若、社長。
声を出そうとした瞬間だった。
「おとん、大丈夫?」
右の個室から若の声。
そして。
「お前も大丈夫か?」
隣からは剛三の声がした。
「大丈夫。吐き気はないから当たってないと思う」
「…俺もや。なんやろな?」
それは…。
食べ過ぎだと思いますよ?
二人は用意した屋台飯の残りを平らげていた。
『おなかいっぱーい』
酔っ払いたちは可愛い声を出して酒を啜っていた。
大量の空き缶が頭に浮かぶ。
計画は完全に破綻していた。
「やっぱ、食べ過ぎちゃうか?」
若。
ご明察です。
「かもなぁ。誰やあんなに買って来たんは。残せんやろが」
それは僕です。
ごめんなさい。
この状況。
原因を作った上に急かすのか。
気まずい。
良心も咎める。
監査役に相談。
それが一番に思えた。
戻りましょう。
そう思い、保治が踵を返した時だった。
「おとん、聞いてええ?」
若の声。
思わず立ち止まった。
「なんや急に」
「有栖川さんっておとんの元カノ?」
「ブッ、何言うてんねん」
若。
トイレで何言ってんですか。
「いや、前から聞きたかってんけどチャンス無くて」
「最悪のタイミングで聞くなぁ。付き合ってへん。昔からの知り合いや」
「ほんまぁ?中身はともかく美人やで」
「ほんまや。まぁ確かに志麻さんは裏で人気あったけどな」
「裏? 高嶺の花とかやなくて?」
剛三の個室からため息が聞こえた。
「遼。お前、お母ちゃんが元ヤンやったのは知ってたか?」
「…まぁ、それなりには」
「志麻さんもヤンキーでな。高嶺の花やのうて掃き溜めに鶴やわ」
剛三の笑い声が聞こえる。
「そんで俺、あの二人に校舎裏呼び出されてん」
「は?告白?」
「ちゃうわ、アホ。多分、カツアゲやな。木刀突き付けられたわ」
「え…カツアゲ? 怖っ」
若が息をのむのが分かった。
剛三の笑い声が聞こえた。
「俺財布に500円しか無くてな。ほんま怖かったわ」
「なんでわざわざ行ったんや。逃げたら良かったやん」
「話せばわかってくれる人らやと思ってたんや。二人とも悪い人やないって気がしとった」
「ほーん…そんでどうなったん?」
「なんか許してもらえた。そんでいつの間にか三人で遊ぶ感じになった」
「飛びすぎちゃうの? カツアゲされそうになったんやろ?」
「俺にも分からん。けど、学生ってそんなもんやろ?…あ、わからんか」
「うーん。分かるような分からんような…一番分からんのは、なんで今ああなっとるん?」
「二人が仲悪いことか?」
「そう」
剛三の個室から再びため息が聞こえた。
「皆アホやった。その中でも俺が一番悪かっただけや」
「なんかやったん?」
若の声が鋭くなった気がした。
「逆や。なんもせんかった。俺がもうちょいしっかりしとったら、あんな仲違いせんで済んだんかもしれん」
「やれることはあったん?」
「わからん。それでも、上手いやり方をちゃんと探せばよかったとは思ってる」
「有栖川…志麻さんっておとんのこと――」
「遼、それ以上言うなや。本人しか分からんことや」
「そうやけど…」
若の声が沈む。
「もし万が一、お前の思うとることが本当で、告白されとったら……どうしたやろうな」
頭を掻く音が聞こえる。
「二人とも幸せにするって啖呵切ればよかったかもな」
「…おとん、ええ話っぽいけど最低やで?」
「便所でこんなこと聞いとるお前も大概やで」
二人の笑い声が聞こえる。
はっ!
つい立ち聞きをしてしまった。
いけない事だと分かっている。
それでも、離れられなかった。
ここで声を掛けるのか。
保治はPHSの時計を見た。
午後九時四十五分。
決断しなければならない。
「遼。お前はユーリちゃん、大事にせぇよ。あんなできた子おらへんで」
「わかっとるわ!」
若の声は大きい。
「ええこっちゃ…って、そっちに紙あらへん?」
カラカラカラと音がした。
「え、こっちは…あらへん」
「やばいやん」
外からでも個室の空気が冷え込むのが分かった。
紙なら、すぐそこに山積みだった。
交換してないのか。
「誰か!近くにいませんかぁ!」
剛三の大声。
羞恥と悲壮感が混じっていた。
これは…幸いかもしれませんね。
口元が緩む。
立ち聞きを誤魔化せそうだった。
演技力が問われた。
わざと大きな足音を立てる。
「社長ー! 探しましたよ!」
自然な声を意識した。
午後九時五十五分。
栞は起きていた。
若の頭の匂いを嗅いでいた。
「りょおちゃんのつむじ、いい匂いするぅ」
残された若の顔。
置いてかないで。
そう、つぶらな瞳で訴えかけていた。
若。
ごめんなさい。
お願いします。
心の中で繰り返した。
若を番に置いて、本部に向かった。
今年の本部は拝殿の脇にあった。
テントの横幕をくぐった。
長机が二つ。
祭りの進行表。
筆記具。
飲みかけの麦茶。
蛍光灯の周りを、小さな羽虫が飛んでいた。
その奥に、法被姿の盛田が座っている。
「おお、富田さん。待ってましたわぁ」
盛田が椅子から立ち上がった。
そして剛三を見やった。
「なんや西尾の禿げまで来てくれたんか。遅い時間にすんまへんなぁ」
「じゃかぁしい。おっと、お世話になってますぅ。盛田の禿げぇ」
不毛な争いはやめてほしかった。
剛三が腹を庇うように椅子へ腰を下ろした。
まだ効いているらしい。
「こちら、弊社の監査役をしていただいているスタシア・ラマーノフさんです」
お願いですから暴言はやめてくださいね?
「よろしくお願いいたします…いつもお肉ありがとうございます」
スタシアが軽く会釈した。
「あ、いつもおおきに。盛田ですぅ。八城町商店会の会長もやらせてもろてます」
盛田が頭を下げる。
頭頂部が蛍光灯の光を反射した。
眩しい。
とりあえず、顔なじみのようで良かった。
保治は盛田の目の前に腰を下ろした。
「ほな、早速なんですけどな」
盛田が長机の上から紙の束を持ち上げた。
表紙には、八城町商店会会員名簿と印刷されている。
「この前、松永センセんとこのパソコン、見てもろたでしょう?」
「はい」
「あれ、商店会の寄り合いで話したんですわ。年明けに帳簿やらレジやら動かんようになったら困る言うて」
盛田が名簿を机に置いた。
「八城町商店会に入っとる店、全部。店に置いとるパソコンを一遍見てもらえまへんやろか」
「全部、ですか?」
「パソコン置いてへん店は飛ばしてもろてええです。ある店は一台ずつ……いや、置いてある分、全部ですわ」
名簿を覗き込む。
店の名前と電話番号が何行も並んでいる。
松永理髪店では、一台だった。
それでも、準備には時間がかかった。
全店。
「商店会としての、正式なご依頼でしょうか」
「正式には役員会通してからですけどな。まず見積もり出してもらいたいんですわ。タダでやってくれなんて、あつかましいことは言いまへん」
「現在、パソコンが何台あるかは分かりますか?」
「それが、さっぱりですわ」
「機種や、使用しているソフトは?」
「もっと分かりまへん」
盛田が笑った。
困りましたねぇ。
同じパソコンばかりではない。
使い方も違う。
松永理髪店と同じ手順で済むとは限らなかった。
「でしたら、先に調査が必要です」
「調査?」
「店ごとの台数と機種。それから、何に使っているか。使用しているソフトも確認しないと、点検の内容や料金を決められません」
盛田の笑みが消えた。
名簿に目を落としている。
『客は面倒なんを一番嫌がるんやで』
若の声が過った。
いけない。
これでは、店の人の負担になる。
「先にこちらで調査用の紙を作ります。店の方で分からない部分は、私が伺って確認します。それから見積もりをお出しする形でいかがでしょうか」
「なるほどなぁ。そうしてもらえると助かりますわ」
盛田が何度も頷く。
「皆にパソコンのこと聞いても、箱の色くらいしか答えてくれまへんねん」
それは難航しそうですね。
「一つ、よろしいですか」
スタシアの声だった。
顔にはまだ赤みが残っている。
しかし、言葉は明瞭だった。
「受けるかどうかは、社長と富田さんで決めてください。私は法律上の注意だけします」
スタシアが盛田に向き直る。
「商店会からの依頼だけで、各店舗のパソコンに触ることはできません。各店舗の責任者から、作業の同意を取ってください」
「は、はい」
盛田が慌ててメモを取り始める。
「富田さんは、作業の範囲、料金、万一データが失われたり機械が故障したりした場合の責任を、事前に書面で決めてください」
「分かりました」
「それと、点検したから絶対に問題が起きないとは約束しないこと。確認した項目と結果だけを報告してください」
スタシアが指を一本立てた。
「必要なら、確認書の文面は私が見ます。以上です」
「同意…責任…そこまでせなあきまへんか」
盛田が頭を掻いた。
「人の帳簿に触る仕事ですから」
スタシアは淡々と答えた。
盛田の手が止まった。
「そら、そうですな」
沈黙。
テントの外から、屋台を畳む音が聞こえてきた。
金属同士がぶつかる音。
隣では、剛三が腕を組んでいる。
「社長は、どうされますか?」
「俺に聞くなや」
剛三が笑った。
「さっき言うたやろ。富田君が仕切ったらええ」
「ですが……」
「富田君は、どうしたいん?」
盛田に渡した名刺。
松永理髪店の回数券。
あの日のことが浮かんだ。
あの仕事が、次の仕事になろうとしている。
怖くないと言えば嘘になる。
それでも。
「やってみたいです」
言葉は自然に出た。
「ほな、やりたいようにやってみ」
剛三の手が肩に置かれた。
「判子押すんは俺や。法律はスタシアさんが見てくれる。富田君は、富田君の仕事したらええ」
力が籠もった。
「はい」
今度は、迷わず答えられた。
若の言葉も借りずに済んだ。
盛田が名簿を持ち上げる。
「ほな、お願いできます?」
「はい。まず事前調査をさせてください。正式なお見積もりは、その結果を確認してからお持ちします」
「分かりました。これ、持って帰ってください」
名簿が差し出された。
「お預かりします」
紙は薄かった。
軽い。
それでも。
保治は両手で受け取った。
基本的には「好きに書くので、好きに読んでいただければ」という気持ちでおります。
とはいえ、評価をいただくと普通に嬉しくなる俗物でもあります。
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よろしくお願いいたします。




