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【番外編】裏ではこんなコソ練やってました by麻美

本編の番外編です!

「シュ......いやシャかな?シャ...シャラララ」


「違うな」

みとが即座に否定してきた。


「シャじゃない。シュだ。シュでいい」


「シュラ……シュラティ……?シュララティ」


「ディだ。ティじゃない。なんだシュララティとは」


「ダメだ!わかんない!

あと、みとはちょっと黙っててくれる?

ねえ、おかめ、ケンちゃんのフルネームもっかい教えて。今度はちゃんとメモに書くから!」


ケンちゃんが外で魔法の自主練をしてくるというので、その隙をついて、コソ練をしている。

なんのって?

"ケンちゃんのフルネーム呼んじゃうぞ大作戦"のためのだ!


「もちろんよ」と、おかめがゆっくりと丁寧に教えてくれた。


「シュラディオル=エンヴァル=オルステイン=ラグナリア=アルマディオルフェンケン よ。

素敵な名前よね。ケンちゃんにとても似合ってるわ」


「そうねぇ素敵よねぇ......ええっとなになに、シュラディ……オル?」


今はまだ名前の素晴らしさを讃える余裕がない。

何せ長いのだ。覚えるので精一杯ってところ。

いや、まだ全然覚えられていないのだけど。


「オルだ。そこは合ってる」

「よっしゃ!シュラディオル!」

「喜ぶにはまだ早いだろ。だいたい、書かれていることを読んだだけだろうが」

「だから、みとはちょっと黙ってて!!」


冷やかしモードのみとを一瞥した後、

「じゃあもっかい最初から読んでみる」

ごほん、と咳払いをして、メモを手に持つ。


「シュラディオル=エン……エン……エンヴァ……エンバ……」

「エンヴァルだ」

みとが溜息をついた。

「バじゃなくてヴァ」

「エンヴァル!!シュラディオル=エンヴァル=オルス……オルス……テイン?」

「そこは合ってる」

「よし!!シュラディオル=エンヴァル=オルステイン=ラグ……ラグ……ラグナ……」

「ラグナリアだ」

「ラグナリア!!!あとちょっと!!シュラディオル=エンヴァル=オルステイン=ラグナリア=アル……アルマ……アルマジロ」

「なんだよー!アルマジロって!」

あおさが盛大に吹き出した。

「わかってる!ちょっとお茶目さんになっただけ!」

「ア、アルマディオル!!フェン……フェンケン!!!どーだ!!」

「まあ、ただ、読んだだけだな」

みとが本当にうるさい。

ただ、読むだけでここまで消耗するとは自分でも驚きだった。

老化するとカタカナの羅列を認知しにくくなるのかな?


それからというもの、私は暇さえあればメモを見ながらコソ練を続けたのだった。


そして、その成果もあり、メモさえあれば完璧になった。

ドヤ顔してみとを見てやったら、「そういう顔はメモを見ずに言えてからにしろ」と言われた。

ごもっとも過ぎてムカつく!


そうしてこれ以降は、紙を裏返して、隙を見つけては練習を繰り返していた。



*ある日

「シャ、シャラディオル=エンダラ=オールステイン=ラグ……ラグ……あー、悔しい出てこない!」

「最初っから間違えてるぞ」


ちっ!腹立つ!



*またある日

「シュララオル=エンダルー=オールステイン=ラグナルア=アルマージロじゃなくて、アルマフェンケン!」

「何ひとつ合ってないし、オールステインは捨てろ」


くっ、屈辱!



*またまたある日

「ラグナリア!!よし、ここまでは完璧!!あとは……アルマ……アルマ…」

「アルマジロって言うなよ」

あおさが先に釘を刺してきた。

「言わない言わない!!アルマ……アルマ……アルマ……」

「……」

「アルマ……アルマ……あ!!アルマーニ!!」

「「「なんじゃそりゃ!!!」」」



*またまたまたある日

「今日こそ完璧に仕上げてみせる!

シュ……シュラ……シュラディオル……エンヴァル……オルステイン……ラグナリア……アル……アル……」

「……」

「アルマ……アルマ……アルマーニ……」

「また言った!!」

「ちがう!!わかってる!アルマ……アルマ……アルマ……ジロじゃないよ!?アルマ……アルマ……ディ!!アルマディ……オル!!アルマディオル!!からのそしてフェンケン!!」

「お、言えたか!!」

あおさが素直に驚いた。

「余計なのが多すぎてよくわからん。全部通して言ってみろ」

ぐぬぅ......みと、いちいち腹立つわ〜!


「シュラディオル=エンヴァル=オルステイン=ラグナリア=アルマディオルフェンケン!!!」


「言えたじゃん!!!」

あおさが体をどーんと当ててきて喜んだ。

「合ってた!?やった!ついに言えたー!!」

あおさの耳の後ろをわしゃわしゃとかきながら、ありがとー!と抱きつく。


「もう一度言ってみろ」

お祝いムードに水を差す、みとのひと言。


「もちろん良いわよ」

受けて立ってやろうじゃないの。

見くびってるんじゃないわよ!


「シュララオル=エンダルー=オールステイン=ラグナルア=アルマフェンケン」


「「.............」」


えっ!?違ってた!?!?!?



「フッ......初めからやり直しだな。麻美」




アラフィフの記憶力、恐るべし。




本当さ、記憶が定着しないんだよね。



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