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88 これからのことを話し合いましょう

局長からお城に来るように言われたのをケンちゃんは明確に断ったそうだ。

この国を自分の足で歩き、自分の目で見て、正しく知りたいとの理由で。

それはとても素晴らしいことで、私も大賛成だったし、犬モンたちも同行するといっていた。


......でも。私はどうするか。


正直、少し迷っていた。

この世界に”器”はひとりでいいと思う。

ケンちゃんの器が完成するまでは傍で支えたいと思っていた。

そこに自分の存在意義があると。


じゃあ、今は?

今、私がここにいる意味は?

私はここにいていいの?


そんな疑問が頭の中をぐるぐると回っていた。


(ひとりで考えていても正解はわからないか)


そうして家族会議をすることにしたのだけど――



夕食の後、私はみんなをソファに集めることにした。

「ねぇちょっと、みんなに相談があるんだけど」

犬モンたちが一斉にこちらを向いて寄って来た。

ケンちゃんも読んでいた本を静かに閉じて横に置いた。

「あのね、これからのことなんだけどね。

ケンちゃんがこの国を見て回る旅に出ることは大賛成なんだ。

でも私は......どうしようかなって、その、少し迷ってるんだよね」

「......どういう意味ですか、師匠」

「うんとね、ケンちゃんの器が完成したでしょ。

それで、これは少し前から考えていた事なんだけど、私がここにいる意味って何だろうって。

むしろ私がいることで、またこの世界の均衡が崩れたりしないかなって」


ザザァーっと木を揺らす風の音がやけに部屋の中まで響いた。

別にお別れを告げたわけじゃないのに、やけにさみしい気持ちが押し寄せてくる。

ケンちゃんが、ゴクリと息を飲み込むとゆっくりと口を開いた。

「師匠、僕はそれは違うと思います」

「そうかな、でも——」

「それに僕はまだ、師匠から学びたいことがたくさんあります」

「......」

「魔法のことだけじゃありません。師匠の物の見方、考え方、人との関わり方。旅に出てこの国を見て回るなら、なおさら師匠に一緒にいてほしいんです」

「ケンちゃん......」

「師匠がいなければ、僕はここまで来られなかったから。旅だってきっとそうです。師匠と一緒でなければ、僕だけではまだまだ足りない事だらけで......」

そんな事ないのに、と言葉にする前に、

みとが、先に口を開いた。


「麻美、世界の均衡のことは心配ないと思うぞ」

「え、でも、私がいることでバランスが——」

「お前とケンは、補完する側とされる側だ。器が完成した状態でお前がいることは、むしろ世界にとってプラスに働くはずだ。崩れる心配はない」

「......本当に?」

「確信はないがな」


あおさが続けた。

「麻美、ひとりでこの家にいてあれこれと考えてるより、外の世界を見て回る方がずっといいと思うけどな。麻美だって、まだ知らないことがたくさんあるでしょ」


こつぶが、麻美の膝に顎をのせて言った。

「麻美が外に出て色んなものを見たら、もっともっと色んな面白い魔法が使えるようになると思うよ」


とろ豆が元気よく言った。

「オイラたちも一緒に行くんだし!!」


おかめが静かに微笑んだ。

「一人で考えてもきっと答えは出ないわ。行きながら見つければいいじゃない」


一緒に行こうと誘ってくれるみんなの顔を見回し、

「それもそっか」

ふう、と息をついた。

まあ、ここでひとりで考えているのも違うか。


「じゃあ、行くとしますか。この国がどんな国なのかを、私もちゃんと自分の目で見てみたいしね!」


ケンちゃんが、ぱあっと表情を明るくし、嬉しそうにいう。

「よかった。ありがとうございます、師匠」


「え?いやいやお礼を言うのはこっちだよ。相談してよかったよ!

しばらく家を空けることになるからちゃんと準備しなきゃだね!」


それから、私はガイアスさんに連絡を取って家に来てもらった。

近々、旅に出るため時々家の様子を見てもらいたいこと、畑の水やりは魔法で自動的に行われるようにしてあること、できた野菜は収穫して欲しいことと、迷惑じゃなければ食べて欲しいことなど。

そんなことを説明すると、ガイアスさんは、少し驚いた様子だったけど、「はい、任されました」とすぐに穏やかに頷いてくれた。

本当にいつもガイアスさんには頼りっぱなしだ。ありがとう。


それからガイアスさんは、珍しく少し言葉を詰まらせながら言った。

「旅、楽しんでいらしてください。戻っていらした時に、お土産話をお聞かせくださいね。

それから......私も聞いていただきたいお話がありますので」

「もちろんです!!お土産もたくさん買ってきます!!あ、お話って何でしょう?今でもいいですよ!」


ガイアスさんが、静かに微笑んだ。

「いいえ。お戻りになられてからで結構ですよ」


その優しい笑顔を見て、なんだか胸がいっぱいになった。

この人に出会えて、本当によかったと思った。


出発の前夜、私は改めてログハウスを見渡した。

ここに来た日のことを思い出す。

何もわからなくて、全裸で、犬モンたちに囲まれて途方に暮れていた。

使ったこともない魔法を必死に操って魔物を倒した。

たくさんの人たちと出会い、大事な人ができた。

そして今では、こんなにも大切な場所になっていた。


ふと窓の外を見た。

遠くにあの森が見える気がした。

そうだ!明日は、みんなと出会った森に寄ってから出発しよう――





ガイアスさんのお話気になるなあ。聞ける日はくるのかな

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