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80 芋ばっかりでゴメン

お祭りの翌日の陽が落ちかけた頃に、ガイアスさんに送ってもらい家に帰ってきた。

もっと早く帰って来るつもりだったけど、町長さんとのオセロ対決が思いの外白熱してしまった。

それにしても、ガイアスさんには何から何までお世話になりっぱなしだ。

いつか、ちゃんとお礼をしなきゃ。


「お祭りはすごく楽しかったけど、やっぱりお家に帰ってくると落ち着くわ〜」


ログハウスの扉を開けた瞬間、すっかり馴染んだこの家の香りがふわっと漂ってくる。

安心する匂い。犬モンたちもサッサと家に入るとそれぞれの定位置に寝そべって、早速居眠りを始めている。


「さてと、ご飯でも作りますかね!」

私は張り切ってキッチンに立った。

ちょっと迷って、メニューはコーン入りポテトコロッケ、ジャガイモの冷製スープ、ポテトサラダに決めた。

芋づくし。炭水化物祭りなのにもワケがある。

なんて、単に庭の畑で大量に収穫したので消費したいだけなんだけど。

コロッケは、ほくほくのじゃがいもにコーンを混ぜ込んで、きつね色になるまでしっかり揚げた。

スープは、じゃがいもを柔らかく茹でてすり潰してミルクと混ぜて、ホッコリする味に仕上げた。

アクセントにフライドオニオンを振りかける。

ポテトサラダには、色とりどりの野菜を加え、ゆで卵も添えて、見た目も華やかにしてみた。


「できたよ〜!!食べよ食べよ!!」


犬モンたちが「わふっ!」と一斉に鳴いた。

こつぶが「いただきまーす!」と元気よく言った。

あおさが「見事に芋ばっかりだな!」と笑う。

ケンちゃんがコロッケを一口食べた。

毎度お馴染みのアレが、ここから始まるはずだ。

「このコロッケの、外側のサクサクとした食感が……」とか

「じゃがいもの持つ素朴な甘みが、コーンの……」とか。


でも。


「師匠、このコロッケすごく美味しいです」


それだけだった。

私は思わずフォークを下ろした。


「え」


「……?とても美味しいです」


ケンちゃんはもう一度、繰り返した。


「ケンちゃん、どうしたの?実は調子悪い?」

「え?いいえそんな事ないですよ」

「じゃあなんで、それだけ?」


ケンちゃんは少し考えてから、笑いながら言った。


「美味しいという気持ちが、それ以外の言葉を必要としなかったといいますか。確かに僕らしくなかったですかね」


私はしばらくケンちゃんを見つめた。


「ううん、そういうのもすごくいいと思うよ」

「そうですか?改まって言われると、少し照れますね」


ケンちゃんが、また小さく笑った。

みとがぼそっと言った。

「ケンも、成長したな」

ケンちゃんの耳が、じわっと赤くなった。


「で、ですが、美味しいという感情が先行した結果として言葉が簡略化されただけであって、決して安易に説明を省略したわけではなく、状況によっては、引き続き詳細な感想をお伝えできると思いますので、成長というより、その日の感情の赴くままといいますか」

「うんうん、わかった、わかった!」


なんか、すごくいいなと思った。

皆んなで食べるお家ご飯は、やっぱり最高だった。




数日後、ガイアスさんから連絡が来た。

「城より、今度は位の高い方が直々にいらっしゃるようです。皆さまで町に来られますか?それともこちらにご案内してもよろしいでしょうか」

「そうですか。それでしたらこちらにご案内して貰っていいですよ」


そう返事をしたのには、理由がある。

前回使者が来てからケンちゃんと色々話し合った。

お城の人たちは間違いなく、また来るだろうこと。

その時、ケンちゃんはどうしたいのか。

もちろんケンちゃんの気持ちも聞かせて貰った。

そして私にはお城の人に言いたいことがあることも。



そして、その日が来た。

掃除をしてゆっくりお茶を飲んでいた時だった。

番犬くんが、ガン吠えしている。

「やっと来た?」

ケンちゃんが窓からそっと外を覗いた。

「……今度は、随分と大勢でいらっしゃいますね」

私も窓から外を見た。

門扉の外に、馬車が二台止まっていた。

しかも、煌びやかな装飾の施された明らかに立派な馬車だった。

「こりゃ、前回とは位がだいぶ違うのが来たね!」




肉も食わせろー!ってあおさが言ってるよ

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