73 早くお家に帰りたい!
おかめが癒しの魔法をかけてくれている。
体中の痛みが少しずつ引いていくのがわかった。
まだちょっとズキズキするけど、なんとか起き上がることができそうだ。
ケンちゃんがゆっくりとこちらに歩いてきた。
目が赤くなっていた。
「師匠......大丈夫ですか?」
「うん。ちょっと痛かったけど、もう大丈夫」
ケンちゃんが私の前に膝をついた。
その体から、まだ淡い光が漏れていた。
私はそれを見て、ニヤッとし、ウインクしながら言う。
「ねえケンちゃん!これはもう、完成ってことでしょ?やっぱりケンちゃんはやり遂げたね。私ちゃんと見てたよ!」
ケンちゃんは一瞬だけ目を見開いて。
それから、泣きながら笑って言った。
「師匠のスーパーフライト、最強でした」
「え、ほんと?そうかなぁ?ケンちゃんに最強なんて言われたら嬉しくなっちゃう!」
「本当です。地上30センチという、誰も真似しようとも思わない独自の領域を、師匠は最初から極めていたのですよね。高さでは決して測れない、地を這うがゆえの安定感と、低いからこそ気づかれない奇襲性。
これは、空を飛べないことの裏返しではなく、むしろ空を飛ぶという概念そのものを、師匠が独自に再定義された結果なのだと、僕は思います。
つまり師匠のスーパーフライトは、ある意味で、本当に最強です!」
......ある意味でって何!?
ちょっとケンちゃん、それ私は褒められたと思っていいんだよね!?ね!?
私たちを横目で見ていたみとが小さく笑って、天を仰いで言った。
「......終わったな」
遠くで、町の人たちの歓声が聞こえてきた。
いつの間にやってきた町長さんが静かに空を見上げて、呟いた。
「......これから、世界の均衡が戻っていくのでございましょうな」
ガイアスさんが静かに頷いた。
「そう、願いますね」
そして本屋のおじさんが、目を真っ赤にして言った。
「......長年、古代語を学んできて、よかった。この瞬間に立ち会えた奇跡に......神様感謝します......」
しばらく誰も、何も言えなかった。
ただ、どこまでも青い空が広がっていた。
「さてと!じゃあみんな!久しぶりにお家に帰ろっか!」
私はやっと終わった解放感いっぱいに声を掛けた。
「麻美はまだやることがあるだろう」
「そうだよ、責任もってね!」
「師匠、僕お手伝いします」
「ぼくも手伝うよ~」
「え????」
みんなが指をさした先は広場のバナナの海だった。
「サンコン様、こちらをお使いください」
そういって、ホウキとちり取りを差し出しながら、ガイアスさんがウインクした。
「えーーーーー!?ウソでしょ!?もうへっとへとなんだけどー!!!!」
私の今日一番の叫び声に、みんな一斉に大笑いした。
みんな麻美の扱い、わかって来たね!




