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閑話 日本語の逆襲

ある夜のひとコマです

私は語学入門書を見ながらせっせと文字の勉強をしていた。

ケンちゃんはこつぶの横で真剣に読書をしている。

本当に本が好きなんだなぁ。

あんな難しい言葉を読めるなんてすごいよなぁ。

だいたい"音のない音"ってなに?

集中力が途切れそんな事を考えていた。



"音のない音"かぁ......。

あ、あった!!


「ねえねえケンちゃん、あのね、私の使ってた日本語にも"音のない音"あったよ!

何も音が聞こえない状態を表現する"しーん"って言葉があるの。ほら、無音ってなんか、しーんとしてる感じがするでしょ?」


本から顔を上げたケンちゃんが、

「それは、非常に興味深いですね。

なるほど。"しーん"ですか。

他にはどのようなものがあるのですか?」


速攻で食いついてきた。

さすが知識欲が半端ない。


「他にはですねぇ、お腹が空いた時はお腹が"ぺこぺこ"だって表現するよ」


「"ぺこぺこ"ですか!」

ケンちゃんは自分のお腹に両手を当てながら、「他にもありますか?」と聞いてきた。


「他には、期待で胸が躍ることを"ワクワク"する!とかいうかな」


「ワクワク!どういう感覚なのでしょうか。今僕が感じている、まさにこの感覚を"ワクワク"と表すのでしょうか!他にもありますか?」


「ほ、他には......あ!こつぶみたいな毛がふわふわの事を"もふもふ"って言ったりするね!」


ケンちゃんはこつぶをそっと撫でて、

「これが"もふもふ"ですか。なるほどなるほど。言われてみれば確かに。他にもありますか?」


イヤな予感がしてきた。


「......他には、他には?

えーっと、降り始めた雨を"ポツポツ"、静かに細かく降る雨を"しとしと"、土砂降りの雨を"ザアザア"とかかな!ごめんね読書の邪魔をして!さ、じゃあそろそろ......」


そう言って切り上げようとしたのに、食い気味で遮られた。


「雨の降り方だけでもそんなに種類があるなんて!

日本語って実は非常に興味深い言語だったんですね!!

以前簡単だと言ったことをお詫びして訂正します!

他には?他にはどのようなものが?!」


これは予感的中。

後悔先に立たずだ。


「えーっと、他に?なんだろな、なかなか決断できずに悩んでる時に"うじうじ"とか、すっきりしなくて心に霧が掛かったような状態の"もやもや"とか、深く深刻に考え込む"もんもん"とかもあるね。あとは、心配で心が落ち着かない"ハラハラ"とかかな。じゃ、この話はこの辺で......」


「なんと面白い!!同じ思い悩むという状態でもそんなにたくさんの言葉があるんですね!他には他には師匠の知っている言葉全部、全部教えてください!!」


ぜ、全部!?

「いや、日本語は奥が深いからね!全部はちょっとね、一日じゃ教えきれないっていうか。

なんだろう、今ね、私、ちょっと、なんかわかんないけど、こう、もやるというか、若干イライラしてきたというか......」



"イライラ"。

あ、これもだわ。







オノマトペって沼ります。

麻美、結局返り討ちに遭うの巻でした。

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