61 出ました!伝家の宝刀!
そして町に行く日がきた。
イケメン青年になったケンちゃんと、6歳児に変身した私は、マスコットキーホルダー化した犬モンたちをポシェットに入れて町へと向かっていた。
いつもと別の意味でソワソワしている私を、気遣うようにケンちゃんは手をつないでくれている。
町に入ると、どことなく普段の賑わいと雰囲気が違って見えた。
人出はあるもののざわついているような、ピリピリしているような緊張感がある。
人々が足早に行きかっていた。
「あの、何かあったのですか?」
ケンちゃんが、擦れ違いざまに材木を抱えた男性に声をかけた。
男性は材木を地面に置くと、首から下げていたタオルで汗を拭いて言った。
「なんだ、兄ちゃん知らないのか。出たんだよ魔物が。この町にも。
ちょっと前から近隣の町に出たって話だったからいつかここも来るとは思ってたけどよ。
危ねえから、夜は出歩かない方がいいぞ。
そこのお嬢ちゃんもだ。気をつけろよ」
そう言うと、これから家の窓を補強するんだと、行ってしまった。
みんなで顔を見合わせた。
「やっぱり、町にも出たんだね」
「僕たちにできることってあるんでしょうか」
今の自分たちに何ができるのか、ちっともわからない。
何かしなきゃという焦りを感じつつ、ひとまずいつも行くお店を回ることにした。
本屋に行くとおじさんに「危ないから家から出ないように」と注意された。
お菓子屋さんでは奥さんが「しばらくお家にいた方がいいわ」と、袋に詰めた焼き菓子を渡してくれた。
何となく町長さんにも話を聞きたいと思っていたものの、変身してるしと躊躇って。
その時だった。
空が、うすら暗くなった気がした。
見上げると――
巨大な蛾の群れが、町の広場上空を覆い尽くすように飛んでいた。
羽ばたくたびに黒色の鱗粉が降り注ぎ、日の光が遮られていく。
「え!?こんな昼間に!?てか、なんて数なの!!」
立ち止まって空を見ていた町の人たちが悲鳴を上げながら逃げ始めた。
「あーちゃんはここにいて!絶対に変身を解かないでくださいね!!
"ルズガルン・カナドゥ・ウチ(風の翼とともに飛べ)"!!」
そういうとケンちゃんは、建物の陰から一気に上空へ舞い上がり、風魔法を繰り出して蛾の群れを散らし始める。
鋭い風の刃が蛾を引き裂いていく。
でも、数が多かった。
一匹散らしても、また、二匹三匹と来る。
そして、鱗粉がじわじわとケンちゃんの視界を奪い始めた。
蛾の一匹がケンちゃんを掠り、ケンちゃんがバランスを崩す。
あ、危ない!!!!
思わず集中が途切れ、変身のイメージが崩れそうになるのを何とか持ち堪えた。
「あーちゃん!僕は大丈夫だから!
みとたちと逃げる方法を考えて!!!」
ケンちゃんの声で我に返った。
ケンちゃんが戦っているのに逃げるなんてありえない。
この数を一気に倒す方法を考えなきゃ。
確か、前にも同じような状況があったはず。
そうだ、あの森だ。ケンちゃんと出会ったあの時の魔法......
あれだ!!!
「ケンちゃん!!今すぐ降りてきて!!早く!!!」
そして、ケンちゃんが地面に降り立ったのと同時に叫ぶ。
「みんな!目と口を塞いで!!!今すぐ!!!」
犬モンたちとケンちゃんが一斉に目と口を塞いだのを確認して。
私は両手を天に向け、渾身のイメージを空に向かって叩き込んだ。
「バルサンダーーーデラックスーーーーー!!!!!」
次の瞬間――
ピシャアアアン!!ブシューーーーーーー!!!!
強烈な閃光と共に、輝く光のような煙が広場全体を包み込んだ。
蛾の群れが一斉に光の煙に飲み込まれ、動きを止めるとバタバタと落ちていく。
「麻美、今のうちにここから離れよう」
みとの声に頷くと、煙に紛れて私たちは一目散に走った。
そして町の外れへと一気に駆け抜ける。
「ひとまずやった、のかな?」
「はい、あの煙なら一掃できたかと!さすがでした!」
建物の陰に隠れるようにして、荒い息を整える。
良かった。
少しでも町の人の役に立てたなら、本当に良かった。
煙の向こうで、町の人たちが「今の光はなんだったんだ......」「この煙はどこから......」と呟いているのが、風に乗って聞こえてきた。
「急に落ちてくるから危なかった」とも言っていたけど。
虫取り網も必要だったってこと!?
デラックスついてるとすごい効き目ありそう




