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57 赤ちゃん宇宙語を習う

「やっぱりお買い物って楽しいね〜!珍しいお菓子も買えたし、かわいい食器とかカトラリーとか、見てるだけで楽しくなっちゃった!」


帰り道、私は語学入門書を胸に抱えながらるんるんで歩いていた。

念には念を入れて、変身魔法を解くのはウチに帰ってからにしようと話し合って決めてある。

足が短い分歩く距離が長いけど、まぁ仕方ない。

ほぼ私のお買い物戦利品を1人で持ってくれているケンちゃんは、何か考え事をしているようにも見えた。


「ねえケンちゃん、ひとつ聞いていい?」

「はい、なんですか師匠」

「ケンちゃんって、文字、どうやって覚えたの?」

ケンちゃんは、まさにその事を考えていたようだ。

「はい、僕もちょうど思い返していたところだったのですが、隔離されていた部屋に置いてあった本で、自然と覚えました」

「その本ってさ、どんな本だったの?」

「ええと......歴史書と、魔法理論書と、市政について書かれた本や、医学書なども、なんでもあったと思います。古代語で書かれた文献が主でしたね」

「......こだいご」

「はい。実は今日、本屋で初めて知ったのですが、古代語はこの国で使われていた言語の原型といいますか。今はほとんど使われていない、かなり古い言語のようでした。文献の多くがその言語で書かれていたので、僕は自然と」


私はピタッと歩みを止めた。


「ちょっと待って」


ケンちゃんは、一歩行きかけて止まって振り返る。


「はい?」


「ケンちゃんが私に教えてくれてたの、もしかしてその古代語だったりする?」

「はい、そうですが。.......あ」


それは初めて見るタイプのケンちゃんの顔だった。

完全に、今気がついた顔だった。


「その......はい。そう、かもしれません」

「ちょっとちょっとちょっとー!!」


思わず叫んでしまった。


「それって、あれじゃん!!

小学校に入学したばかりの子どもに、いきなり考古学を教えるやつじゃん!!

"あいうえお"を覚える前に、いきなり万葉集を原文で読まされるやつじゃん!!

どうりで"音のない音"とか"風の気配"とかいう文字が出てくるわけだよ!!

そりゃ分からないよ!!やっぱり私がおかしいんじゃなかった!!

私からしたら宇宙語のはずだよ!!」


私の勢いにケンちゃんはシュンとして、申し訳なさそうに俯いた。


「......その、僕にとっては当たり前の言語でしたので、まったく気がつかなくて......なんだか、本当に申し訳ありませんでした」


「謝らなくていいけど!!ただ、そういうことならさ!!」

私は手に持っていた入門書を、高々と掲げた。


「今後はこれ使って教えてね!!」


ケンちゃんは背筋を伸ばして、「はい!」と返事したあと、でも小さく呟いた。




「......でも師匠、それ赤ちゃん用ですよ?」





簡単すぎて赤ちゃん用だと思い込むケンちゃん。笑

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