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55 シスコン爆誕?

そしていよいよ今日はふたりで町に行く日だ。

あれから何回も変身魔法を試してみた。

初回に登場したウルトラマン仕様は、勿論封印。

あの時は3分しか時間がなかったら分からなかったけど、どうやら6歳くらいの女の子になっていたようだ。

てっきり二十歳位の女性になると思っていたのに、まさかの幼女。

若返り過ぎるっつーの!

確かに若返りたかったとは言ったよ?

言ったけど、限度があるでしょうに。

そして、何回試しても結果は同じだった。

これ、一体なんで??


逆にケンちゃんは......

リクエスト通り二十歳手前位の青年に変身している。

ぎゃ〜!めっちゃイケメン!かっこよい!

まるで完璧な王子様のようでテンション上がる〜!


昔から落ちついた渋いオジサマが好みだったけど、自分がそっちに近づいたらやっぱり若い子が良くなったのかもしれない。

ゲンキンなものだわ私も。


ちなみに、犬モンたちも勿論、変身してもらった。

なににかって?ふふふ......それは後でのお楽しみだ。


そんなわけで、いざ町に向けて出発だ!



「ケンちゃん、町に行ったら私のことを師匠って呼んではダメだよ。そうだな、"あーちゃん"って呼んでね!

私もケンちゃんのことは、"お兄ちゃん"って呼ぶね!」


歩きながらそんな事をノリノリで言う。

ケンちゃんは背が高くなって嬉しいのか、お兄ちゃんと呼ばれて満更でもないのか、ニコニコしながら頷いた。


そして、ケンちゃんと手を繋いで町の中に入った。

前回と違って、誰も私たちを気にしていないようだ。

うん、大成功だ。

ホッとして自分の肩から下げているポシェットから顔を出している犬のマスコットをチラ見する。


そうです!犬モンたちには犬のマスコットキーホルダーになっていただきましたー!

よく見ると動いてるのがわかるけど、まあ大丈夫だろう。

マスコットにするって言った時に、"あらいいわね!"と直ぐに賛同したのはおかめだけだったのは言わずもがなだ。

"イヤならお留守番!"と脅したら、他は渋々了解してくれた。


そしてこれ、キーホルダーと言いつつ、よく見ると自分たちでポシェットから落っこちないようにしがみついている。

ちょっと、いや、かなり可愛いな。


この日の為に、ガイアスさんからこの国のお金について説明を受け、うちの野菜を買い取るということでお金をわけて貰っていた。

押し売りみたいですみませんという感じだが、犬モンたちが、聖獣がかかわる人物の野菜なんだから本来なら値段がつかない位だと言っていたから、まあいいか。

ガイアスさんじゃなかったら転売?とか大騒ぎになっていたのかもしれないなと、ふと思う。

"町に行くつもり"と伝えていたので、きっとどこかで見守っていてくれてるかな?とキョロキョロしてみたが、この時は見つけられなかった。


「ケン......お兄ちゃんどこにいく?あたしあっちの赤い屋根のお店に行ってみたいな!」


そう言って走り出そうとしたら、手をぐいっと引っ張られて、ぽすんと長い腕に包まれた。

ケンちゃんのおへその辺りにオデコがぶつかる。


「あーちゃん。ひとりで歩いて行くのはダメだってわかるよね?危ないよ?こんなに可愛いんだから、攫われてしまうよ?それにね、急に走り出したら転んじゃうよ?危ないでしょ?ちゃんと手を繋いで一緒に行くよ。わかった?」


あれ?なんかスイッチ入ってる?

ケンちゃんにシスコンスイッチ入ってない?

ちょっと微妙な気配を感じながら"はあい"と返事をして並んで歩いてお店に入った。


「いらっしゃい!アラ、お兄ちゃんとお買い物?」


いいわね〜と、ニコニコ顔でお店の奥さんが声をかけてくれた。

ここはどうやらお菓子屋さんのようだ。

へ〜こっちの世界のお菓子はこんな感じなのか!

お菓子作りが趣味だったこともあり、興味津々で見てまわる。

クッキーにマフィンみたいな焼き菓子に、これはなんだろう?シロップにどっぷりと浸かっている変わったお菓子もあった。

試しに買ってみるか、とナチュラルにポシェットからお金を出しそうになって、ハッと気がついて手を止める。

危ない今の私は6歳児だ。その辺の主婦みたいなノリで、これいただけるかしら?なんて買い物しては違和感が半端ない。


「お兄ちゃん、あたしこれほしい!あと、これも!いい?」


可愛くおねだりしてみる。

中身50歳だけど。いや、まだギリ40代か。


「もちろんいいよ。あーちゃん。どれとどれが欲しいの?これ?でも一気に食べたらお腹が痛くなるから少しずつ食べるんだよ。いつもたくさん食べた後お腹痛くなってるの知ってるんだからね」


食べすぎてお腹下したのまでなんか、バレてる。

ケンちゃん……。


「あーちゃん、これは?好きでしょ、こういう甘いやつ」


差し出されたのは、蜂蜜がたっぷりかかった焼き菓子だった。

……確かに好き。めちゃくちゃ好き。

でもなんで知ってるの?


「あと、こっちのクッキーはちょっと硬そうだから、あーちゃんには向かないかな」

「……なんで」

「いつも硬いパンの端っこを残してるから」


…………。

気づいてたんかい。しかも覚えてたんかい。


「お、お兄ちゃんって、あたしのことよく見てるんだね」


するとケンちゃんは少し考えてから、ゆっくりと口を開いた。


「そうだね、あーちゃんが何を好んで、何を苦手としているかを把握しておくことは、僕にとっては重要事項だからね。

たとえば、あーちゃんが甘い果物を食べた時と酸っぱい果物を食べた時の態度は明らかに違うよ。酸っぱいものには二度と手を出さないからね。

それと、苦味の強い野菜は僕のお皿に多めに盛るし、食事中に静かになる時は大抵お腹が痛くなってきた時で、そのあと10分以内にトイレに向かうことが多いよね。

疲れている時は左肩を無意識にぐるぐる回す癖があって、見えない時は指で輪っかを作って目に当てて見てるし、それから機嫌がいい時は鼻歌を歌って、ちょっと心配事がある時は聖......みとさんたちの匂い嗅ぎたいって言う」


「ちょ、ちょっと待って!!」

思わず遮ってしまった。


「それ全部、観察してたの!?」


「観察というほどじゃないけど、勝手に目に入ってくるから。すごく興味深くて、見ていて飽きないというか。

それより、ほら、お菓子選ぼうか」


ケンちゃんは耳を真っ赤にして、わざとらしくこほんと咳払いをして前を向いた。




恐るべしケンちゃんの観察眼だ。

無くて七癖を全部知られてるみたいでいたたまれない。

えー、私、変なことしてないよね?


苦手な野菜をひとに押し付けるのバレてたよ

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