51 トリプルアタック!
ゴォォォォッ!!
頭上を旋回していたフレアホークが再び急降下してきた。
「し、師匠はケガをしているから!今度こそ僕が――」
「いや、ちょっと待ってケンちゃん。次は私に任せて!大丈夫、あれ使うから!」
私は右手を前に出し、深呼吸して炎のイメージを思い浮かべる。
大丈夫。できる。
うちのキッチンでいつも使ってるやつだから。
あっという間に銀色のつまみと、見慣れた火口が空中に組み上がっていく。
ケンちゃんが固まった。
「し、師匠……あれは……」
「あれ?ウチのシステムキッチンを応用して三口コンロ出してみた!あ、ちょっと待って、火力調整しなきゃ!!」
私は手を前に突き出しスイッチをひねるようにして、叫んだ。
「コンロ強火!!!」
三つの火口から青い炎が一直線に上に伸び、フレアホークの炎の翼とぶつかり合う。
フレアホークが驚いたのか鳴き声を上げ、炎に押されて後退しようとするが三つの炎の輪から出られなかった。
ついにバランスを崩し、草原へと落ちていった。
周辺の草がボッと燃えた瞬間に黒く焦げ落ちて灰になる。
みとがフレアホークに近づいて確認する。
「……どうやら気絶してるだけだな。羽が少し焦げてるようだが、別に死んだわけじゃないだろう。そもそも、火属性に炎を当てたところで致命傷にはならんからな」
うん、なるほどね。でもまずはそれを先に言ってくれ。
思わず文句も言いたくなる。
やっぱり言おう。
「ちょっと!先にそれを言ってよ!
じゃあ、なんで私の攻撃で落っこちてきたのよ!」
おかめが笑いながら言う。
「麻美が強火すぎてフレアホークも耐えきれなかったのね!」
笑って済まされることなのだろうか。
とりあえず無事だったから良かったものの、訓練というならもう少し導いて欲しい。
それより、この子どうしよう......
このままここに放置していいのかな、怒り狂って一面焼け野原とかにしない?
そんなことを考えながら顔を恐る恐る覗き込んでいたら--
パカッと目が開いて、
バチッと目が合う。
「にょえええええ!!!?
も、もう目を覚ました!!え?逃げる?戦う?どっち!?」
動揺し過ぎて、気づいたら謎のファイティングポーズを取ってしまう。
『久しぶりに懐かしい気配を感じたから来てみたら、酷い目に遭った』
――ん?
何かしゃべった?
フレアホークはむくりと起き上がり長い首をブルルと振った。
そして大きな翼を二回ほどバサッバサッと羽ばたかせる。
「あっちちちち!いや、熱いわ!!」
反射でツッコんでしまった。
羽ばたきで炎こそ出なかったものの、なかなかの熱風がくる。
「やあ、しばらくぶりだね。相変わらずど派手な登場だったね。オイラ、絶対ここに飛んでくると思ってたよー」
とろ豆が前脚で、やあやあと、挨拶しながら話しかけた。
「麻美、こいつはオイラとはちょっとした知り合いなんだ。ここに来たら、おそらくオイラに会いにくるだろうと思ってさ。訓練にもってこいの存在だろ?」
そうか。いや、そうなのか?
こっちは軽く火傷したけどね?
どうやら、とろ豆とこのフレアホークは昔からの知り合いらしい。
ここからそう遠くない渓谷に根城があり、とろ豆の気配を感じて飛んで来てみたとか、そういう事だそうだ。
要約するとね。
そして、人のことをやたらとジロジロ見てくる。
上から下まで何往復も首を動かしながら見てくる。
なになに?何がそんなに気になるのか、こっちまで気になってくる。
すると、そういうことか、と納得したように。
『ふむ、お前さん、ちょっと変わった匂いがしているな。もしかして"持つもの"か』
ナニをだよ!
またツッコミそうになった。
おかしい。元来私はボケ担当だったはずなのに。
でも、"器"とかそういうやつのことなんだと思う。
私には相変わらず難しくてよく分からないけど。
黙って様子を見ていたケンちゃんが、スッと前に出てきてフレアホークに話しかけた。
「初めまして。僕は共にいることを聖獣たちに許していただいている者です。まさか聖獣の知り合いだとは思わず、先ほどは敵かと勘違いしまして、攻撃をしてしまい大変失礼しました」
そう言って、ケンちゃんは頭を下げてから続ける。
「僕たちこちらには、魔法の訓練に来ていました。
そして聖獣から聞きましたが、貴方は火と風を操るそうですね。先ほどの僕の攻撃は、まるで通用しなかったように思います。やはり、火属性を相手に火属性の攻撃は効果は期待できないとの認識で間違いないでしょうか。
その、不躾なご質問かもしれないのですが、火属性の敵に対しては、どういった攻撃が効果的なのか教えてくださいますか」
ケンちゃん.......!
弟子が非常に熱心で、ブーブーとぶーたれている自分との温度差がすごい。
そして、サラッと相手の弱点聞いちゃうあたりの無邪気さが末恐ろしいわ、この子。
新しいのに今ひとつカッコよくないのが麻美流




