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――日がだいぶ高くなってきた頃。

庭には、まだ少しだけ朝のひんやりした空気が残っていて、草の先がきらきら光っている。

私は火をつけたロウソクを二本、片手に持ってウッドデッキに腰掛ける。

その横に小さな台を持ったケンちゃんが座り、犬モンたちはそれぞれ近くを陣取っている。


私はケンちゃんから台を受け取りロウソクを真ん中に立てた。

よしよし、ロウソクの火、ちゃんと見えるね。

これならまあ、訓練に使えそうだ。


「ではケンちゃん。いよいよ今日からは“魔力の放出”の初歩をやってみたいと思います。

まずはこのロウソクの火を消すところからです!」

「......はい」


ケンちゃんは少し緊張している。

そりゃそうだよね、抑える練習はしてきたけど、今度はその逆だ。


「じゃあ、まずは私がやってみるからね。魔力を小さくして出すイメージだよ」


ロウソクから、30センチくらい離れたところで構えて集中する。


ふーっ。

......消えた。


「いや、ごめん、普通に吹いちゃったよ私!!」


続いて挑戦したケンちゃんも、ぱたぱたと手であおいでしまった。


「確かに......これはつい、手が出ますね」


「ね!? ね!? 反射でやっちゃうよね!」


犬モンたちが、“なに遊んでるんだ”という顔で見ている。

私は急いで家の中に戻り火をつけてくる。

地味に面倒、チャッカマンが欲しいわ......。


気を取り直して、私はもう少し離れた位置に座り直し、指を構えた。


「じゃあ......次こそ。集中して。イメージは...... 

”デコピン”!!」


”デコピン”が呪文になってしまったけど、まあいいか......

そう思った瞬間――


ピンッ!

指先から、ぱしゅっと小さな風の塊が飛び、ロウソクの火がふっと消えた。


「おおおおお!? やった!できたできた」


師匠さすがです......と頷いて、ケンちゃんも真似して指を弾く。


ピンッ!

......何も起きない。


「ケンちゃん、デコピンはね、こう親指に人差し指をひっかけて......

ムムムムって気合いを溜めて、最大出力でピン!ってやるんだよ」


「ムムムム......で最大出力......ですか」


ケンちゃんはしばらく考え込み、

そして小さく息を吸った。


「.”インジェチェク(細い息)”」


ふっ。

ケンちゃんの伸ばした指先から出た灰色の気の流れが、ロウソクの火を静かに消した。


「え、ちょっ、なにそれ......かっこよ......」

「師匠のお手本のおかげです」

「いや私、ムムムムって言っただけなんだけど?」


犬モンたちが、また肩を震わせている。


ケンちゃんがあっさりできてしまったので、次の段階は、庭に出ての訓練となった。

庭先で拾った小枝を平らな地面に、一本まっすぐ立てる。


「ではケンちゃん、次はこれを倒してみよう。今回もまた私からやるね。見ててよ~」


私はちょっと考えて、”アレだ”と一人納得し、拳銃を撃つ真似をした。

片目をつぶり、小枝に指を向け、呪文を唱えた。


「バーン!!」


パタリ。

小枝が倒れた。


「よし、倒れた! でも、これ私の魔力? それとも気合いで倒した?」

「師匠の魔力だと思います。指先から何か出てるのが見えました。でも気合いも多少は......?」


小枝を立て直し、次はケンちゃんの番だ。

ケンちゃんは胸に手を当て、深呼吸してから呪文を唱えた。


「“ホルトゥム(旋風)”」


ゴウッッッ。

瞬間、強い風が一点に集まって渦を巻き、空気ごと巻き上げ、地面が少し抉れた。


「ちょっ......危なっ!!威力がやばい!!」


ケンちゃんは風圧で後ろに倒れ込む。


「ケンちゃん!? だいじょうぶ!? もっと抑えて!いい?小枝だけを倒す訓練だからね!」

「は、はい......すみません......ちょっと難しかったです」

「いや、すみませんてことないよ?まだ始めたばかりだから。イメージしてね、イメージが大事だから!」


その後、ケンちゃんはひとりで黙々と小枝倒しの練習を始めた。

私は最初、監督官みたいに腕を組んで偉そうに見守っていたが......


10分後。


「ケーンちゃーん、がんばれー。ほらほら、集中集中ー。”バーン”!”ふっ”!だよー」

「......師匠、少し集中できないので、それやめてもらってもいいですか」


さらに15分後。

私は犬モンたちと”拾ってこーい”遊びを始めていた。

固く縛った布を投げると、犬モンたちがわらわら走って取りに行く。

楽しい。

めっちゃ楽しい。

でも、ちゃんと私の元に持ってきて。

手の届かない、微妙なところに毎回置くのやめて。


「ちょっと!ここまで、持ってきてってば!」


絶対、わざとだ、この子たち!!!

そっちがそっちならこっちもこっちだー!って思いっ切り投げた。

ところが、投げた布が木の枝に引っかかってしまった。


「あー......どうしよ。やってしまった。届かない......」


みんなで見上げて困っていると、背後から、


「”ルズガール(風よふけ)”」


声が聞こえた、と思ったら風がシュッと空気を割いた音がした。

――すると


ポトリ。

布が落ちてきた。


「えっ......」


振り返ると、ケンちゃんが少し照れた顔で立っていた。


「師匠の......お役に立てたらと思って」

「いや、すごくない!? 今のめっちゃ自然だったよ!?え、すごい!いつの間に!?」

「師匠のご指導のおかげです」

「いやいやいやいや......私、今日、ヤジしか飛ばしてない気が......」


犬モンたちが、なんとも誇らしげに尻尾を振ってケンちゃんを見ていた。


やっぱすごいわ、ウチの弟子!!


イメージイメージしか言ってないな、確かに。

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