表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/54

29 概念を超えていけ

私は顔を上げ、ちょっと悪い顔でケンちゃんを見た。

こうなったら同じ辛さを教えてあげよう。

ムヒヒヒヒ。いたずら心に火が着く。


「一旦ストップ。今度は......私が私の使ってきた文字を教える側に回るね。

ケンちゃん、私の使ってきた日本語の“あ”はね、こう書くの!」


紙を引き寄せ、勢いよくペンを走らせる。

ぐるっ......ぴょっ。


「はい、これが“あ”!!」


ケンちゃんは紙をじっと見つめた。

その目は、まるで魔法書の古代文字を解析するときのような、そんな真剣な目だ。


「......これは"渦"でしょうか?」


「渦じゃないよ!? ひらがなっていうんだよ!!」


「ひら......がな......?」


ケンちゃんはさらに紙を凝視し、眉を寄せた。


「師匠、この“あ”は、とても力強いですね。

中心に向かって吸い込まれるような、確かな意思を感じます」


「意思!? 文字に意思!? いや、ないよ!!」


「ですが......この“ぐるっとして伸びる”というのは......風の流れ......?まるで“風の気配”がそこにあるような」


「出たよ風の気配!! なんでも気配にするのやめて!!」


犬モンたちは、そっと距離を取りながらこちらを見ている。

“また始まった”どころか、“これは長引くな”の顔だ。

ケンちゃんは真剣そのものの表情で、私の書いた“あ”を指差した。


「師匠、この文字は.“あ”と読むのですか?」

「そうだよ! “あ”だよ!!」

「なるほど。“あ”とは、どういう概念なのでしょうか?」

「概念じゃないよ!? 音だよ!!」

「音......の、概念......?」

「概念じゃないって言ってるでしょ~に!」


私は再びカウンターに突っ伏した。

ケンちゃんは、そんな私の肩にそっと手を置き、

”その気持ちわかります”というかのように気遣いながらそっと優しく言った。


「師匠、大丈夫です。僕も“あ”の概念、きっと理解できるようにしてみせます」


「だから概念じゃないんだってばぁぁぁ!!」




犬モンたちは、完全に寝たふりを始めた。






麻美、返り討ちに合うの巻


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ