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27 イメージ戦略

「私が思うに、ケンちゃんは、間違いなく魔力があると思うんだけど、自分で感じる?そもそも魔法って使ったことあるの?」


今日も気持ちの良い天気だったので、私たちは外に出て青空教室ときめこんだ。


「僕は、その......確かに魔力は“ある”のだと思います。と申しますか、どう表現すればよいのか難しいのですが、身体の奥のほうで、常に熱い......ええと、熱そのものが、勝手に自己主張しているといいますか......。暴れているような感じでして。

ただ、それを“魔法”として使ったことは一度もなくて。そもそも、僕が何かしようとしなくても周囲に影響が出てしまうらしく、師匠に、あの......ラップ? されるまでは、人が近づくこと自体がほとんどありませんでした。

護身具をつけた方が、ええと......本当に必要最低限の用事だけを、数分だけ済ませに来てくださって、それで、その......」


"師匠にラップされるまで"って、なかなかのパワーワードじゃない?

なるほど、ケンちゃんから漏れ出た魔力に、普通の人は影響が出てしまうのか。


「そっか、わかった。

言いにくいことを言わせちゃってごめんね、

もう大丈夫。そうか〜、じゃあもしかしたら魔力がめっちゃ多いのかもしれないね。身体から溢れるくらいに」


初めて森で会った時も、確かに身体から灰色の何かが出ていたし、それに釣られて魔物が寄ってきていたのを思い出した。

私が近づいた時、弾かれただけで済んだのは何か理由があったのかもしれない。


「じゃあまずは、魔力を自分でコントロールするところからなのかも。魔力を自分で感じて、自分で、抑えてってやつ。初歩的なことをいうようだけどね。基本はそこなのかなぁ。ぶっちゃけ私もよく分かってないからさ、一緒に考えて少しずつ練習してみよう!


あ、あと、私もお願いがあって。ケンちゃんに文字を教えてもらいたくて!先生って呼んでいいですか?ケンちゃん先生♩」


ケンちゃん先生と呼ぶのは断られた。まあ、お互いを師匠だの先生だの呼び合っていたら訳がわからないから、そりゃそうかもしれない。


青空は今日も気持ち良く、半分くらい畑になったとはいえ、十分に広いドッグランには優しい風が吹いている。

私は、「よいしょ」と言いながら芝生の上にあぐらをかいて座った。向かい側をタンタンと叩いて、ケンちゃんも同じように座るよう促す。犬モンたちは私たちを囲むように等間隔に寝そべって、さながらミステリーサークルみたいになっている。


じゃあまずは......初めて私が魔力を意識した時の、あの呼吸法だ。

あの時感じた魔力の流れ、あの感じを伝えたい。


「ケンちゃん、深呼吸ってできる?ゆっくり鼻から息を吸って......いち、にい、さん、しぃ、ご、ろく。はい、ゆっくり同じ数だけ吐いて〜」


言いながら一緒にやってみる。

私の中でドクンっと何かが主張するが、直ぐに穏やかな波になるのがわかる。


「ちょっと何回かやってみて。それで身体で感じたイメージを教えてくれる?」


神妙な顔をして頷くと、ケンちゃんは目を閉じて深呼吸を繰り返す.....が、ビクッと身体を震わせて直ぐに目を開けた。


「......すみません。あまり上手くいかないといいますか。何かを感じようとすると、胸の奥でドクドクと音を立てて、痛いというか、苦しいというか......とても落ち着かなくて、その、怖い、といいますか......。ええと、例えるなら.“燃えている部屋の真ん中に、僕だけぽつんと立たされていて、出口は見えているのに、そこへ行くには、さらに火の強いところを通らないといけない”ような、そんな感じです。行きたいのに行けない、でも立ち止まっているのも熱くて、どうしたらいいのかわからなくなるような......」


喩えがうまい。ちょっと長いけど。


「そうか。それはこわいね。

ん〜〜〜、じゃあさ、こう考えたらどうかな?

ケンちゃんの中には、今ものすごい機嫌の悪いミミズがいます。その子が周りに当たり散らかしながらどこか居心地の良い場所探して暴れ回ってるの。ここまでオーケー?」


機嫌の悪いミミズってどんなだよ?

絶対そう思っているであろう犬モンたちの視線は冷ややかだが、私はもちろん気がつかない。


ケンちゃんは必死に”機嫌の悪いミミズとは何か”を考えている様子で、


「ちょっと、混乱しています......」


と固まってしまった。


あれ、我ながらいい表現出た!と思ったんだけどな。

と、思いつつその先を続ける。


「いい?機嫌の悪いミミズの名前は”みー君”といいます。ケンちゃんはこれからみー君と仲良くなるんだけど、そのみー君が今めっちゃ暴れてるの。もう大暴れ。

だからまずは――こう! 首根っこをガッ! と掴んで!こうやって脇にギュッと抱えて!『落ち着けコラァ!』ってやるの!」


脇を締めながら、左右に揺らし、さらに締める。


「わかる? こう! こう! こうやって〜こう!!」


犬モンたちが“また始まった”みたいな目をしているが、またしても私は気づかない。


「はいケンちゃん、イメージして! みー君をこう! ギュッ! って!!」



「............。」



ケンちゃんは今度こそ完全に言葉を失った。









ミミズのみー君をヘッドロック。

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