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22 コミュニケーションとは

もし村とかがあって人がいたら、このりんごで物々交換できたりしないかなぁ。

まあ、持っていくだけ持っていくか。


そんな軽い気持ちでりんごを5個だけ籠に入れて、

ケンちゃんと、いつものように勝手についてくる犬モンたちと一緒にログハウスを出た。


小川沿いを、森とは逆のゆるい下り坂へと歩いていく。曲がりくねった小川の角に、小さな淵ができていて、そこには、そこそこのサイズの魚が群れで泳いでいる。

そのうちいつか魚釣りもしたいなぁとぼんやり思う。

しばらくすると木々が途切れ、ぱっと視界が広がった。


遠くに建物が並んでいる。

やっぱり人が住んでたんだ。

犬モンたちが服を持ってきてくれたとき、もしかしてとは思っていたけど。

建物の建ち並ぶ感じからして、村というよりは町に近いようだ。

そこそこの文明がありそうだなと思う。


町へと続く道に入ったところで、ふと何気なしにケンちゃんの言葉を思い出していた。


――「成獣?ああ、まあ大きいしね〜」

「......聖獣、です」――



町に入った瞬間、周囲の人たちがちらっ......ちらっ......とこちらを見てくる。

でも誰も近づいてこない。

まさか、初めて来るのにジーパンとかカジュアルすぎた?

ケンちゃんと親子コーデだし。


完全に見当違いだ。

でも、わりと本気でそう考えていた。


遠巻きにヒソヒソ声が聞こえてくる。


「......聖獣だ......」

「本物......初めて見た......」

「選ばれし者って噂の......」

「しかも、見て、五体もいるわ」


「......え? せいじゅう?

......成獣じゃなくて......聖獣......?」


ハッキリと聞こえ、思わずケンちゃんを見る。


「......はい。最初からそう申し上げておりました」


えーっ、マジか......うちの子たち、そんな大それた存在だったの......?

完全に犬扱いしてたんだけど、え、私バチ当たったりしない?

急に不安になるが、当の本人たちは気にする様子もなく、興味津々で匂いを嗅ぎ回っている。

聖獣かー、それってどんなものなんだろう?

さっぱり分からない。レアキャラそうだな、とは思うけど。


町並みを見ながら歩いていると、ひとりでいた年配の女性を見つけ、りんごを見せながら声をかけた。


「あの、すみません、このりんごと何か交換してもらえる場所ってご存知だったり......」


年配の女性はこちらを見るなり、びくっと肩を震わせた。


「な、なんと......聖獣様を連れておられるなんて......

こ、こんなものでよろしければ、どうぞお受け取りください......!」


差し出されたのは――手作りの木彫りスプーン。

あら!かわいい......! でもスプーン......かあ。

りんごがスプーンに変わってしまった。

失礼だけど、ちょっとガッカリしてしまった。

だって、りんごでちょっとした食べ物と交換して欲しかったのだ。

せっかく町まで来たのだからと、また少し歩くと広場に出た。

ベンチでは母親が子どもを叱っている。

どうやら食事のスプーンを落としたらしい。


私はそっと声をかけた。


「あの、良かったらこれどうぞ?」


母親は私と犬モンたちを見て目を丸くした。


「え、聖獣さま!?

あ、あの......よ、よければ......このポーチを!」


そう言って、中身をガサガサと出し、大きめのポーチを差し出してきた。

えぇ!?そんなつもりじゃなかったのに......なんか申し訳ないことをしてしまった。


すると、その様子を少し離れた場所から見ていた男性が駆け寄ってきた。


「そ、そのポーチと......!

こ、この銀の腕輪を交換してください......!」


いやいやいやいや!!

なんで急に銀の腕輪!?


「私も、お、お願いしますうぅぅぅ!!」

タタタタッ、ズサ――ッとスライディングしてきた若い青年が、

銀の腕輪を大きな壺に。


すんごい勢いできた!

いや、よく割れなかったな!

なんなの?何が始まったの?


「こ、これを受け取ってくださいまし!!」

フウフウ言いながらスカートをひるがえし走ってきた女性は、

大きな壺を金の額縁に入った肖像画に、


いや、誰よこれ!?


その後は......ちょっと覚えていない。

物々交換というより、追い剥ぎみたいな勢いで品物が次々に入れ替わっていった。

極めつけは、ご老人が、


「......わしの......かわいい牛じゃ......」


と、首にピンクのリボンを巻いた牛一頭を連れて現れたとき。

私も、その後に何か差し出そうとしていた人も、同時に「......えっ!?」って固まった。


でも近くの生肉店の店主らしいご夫婦が店先から飛び出してきて、

牛一頭と”当店の一等上等なお肉”を交換してくれた。


助かった。広場にたたずむ、子どもと犬モンと私と牛。シュールすぎるでしょ。


私は、これは死守すべし!と

いそいそとお肉を籠にしまった。

目的も達成したし、何より次から次へと人が来るのは、たまったもんじゃない。


「今日はこの辺にして、暗くなる前に帰ろうか!」


ケンちゃんにそう話しかけたが――

もちろんそれだけでは終わらなかった。



広場のざわめきが、ふっと静まった。


「......ちょっと、よろしいですか?」







わらしべ麻美。

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