21.5話 へいらっしゃい!
「おでかけ前に、確認です!
ケンちゃんは“いかのおすし”って知ってる?」
「......いか......のおすし......?」
「うん、絶対知らないと思うんだけどね。
ケンちゃんに伝えたい大事な合言葉があるの。
ケンちゃん自身を守る言葉だから、頭の片隅に置いといてね!」
私は続けた。
「これから人と会うかもしれない。
でも残念だけど、世界には“いい人”と“そうでもない人”がいるの。
じゃあ、ケンちゃんが知らない人に声をかけられたら、どうする?」
「そうですね......まず、その......
僕に声をかけられた理由といいますか、
どのようなご用件でお声をかけられたのかを、
失礼にならない範囲で、丁寧に伺います。
それから......もし僕にできることがあるのなら、
どの程度お力になれるのか......
慎重に確認しつつ、お話を続ける......」
「ストップ!ストップ!
それ!その“誰にでも親切にする姿勢”、とても素敵!
でもね、それは“困ってる人”とか“自分より弱い人”に向けるのがいいかも」
私は指を一本立てた。
「そこで、“いかのおすし”です!」
ケンちゃんが瞬きをする。
「知らない人には、ついて“いかない”。
馬車でも馬でもトロッコでも、車......はあるか分かんないけど、
“のらない”。
怖いと思ったら“大声を出す”。
その場から“すぐ逃げる”。
そして私に“知らせる”。
どう?簡単でしょ、“いかのおすし”!」
にっこり笑って付け加える。
「食べ物の“いかのお寿司”も美味しいから、いつか一緒に食べられたらいいね!」
ケンちゃんはぽかんとしながらも、こくりと頷いた。
——ケンちゃんはイケメンだからねぇ、ほんと心配よ。
あ、イケメンっていうのはね、“イケてるメンズ”って意味で......
イケてるっていうのは、その......えっと......
(ケンちゃんが真剣に頷いているのを見ながら)
......あれ、何の話してたんだっけ。
あーー、お寿司食べたいな〜。
麻美の頭の中、完全に回転ずしに行ってるな




