11 強制ミニマリスト
キッチンの前で固まっている私をよそに、
犬モンたちは私とキッチンを往復して興奮状態。
完全に“ここからごはんが出る”と確信している目だ。
「ちょっと待って。まずは着替えさせて。
昨日のボロワンピのまま料理はさすがに嫌なんだけど」
昨日、犬モンがどこからか持ってきてくれた、
ひざ上15センチのダメージ系ワンピース。
これはこれで本当に助かったけど、
正直、布というより“気持ち布”だった。
何か入ってないかな~、私の潜在意識よ!仕事していてくれ!
そう願いつつ、蔵のクローゼットを開けると——
白Tシャツ。
白Tシャツ。
白Tシャツ。
あとジーパン。
以上。
「......なんじゃこりゃ。S・ジョブズか。
私、いつからミニマリストになったのよ?」
犬モンたちが後ろから覗き込んでくる。
“母ちゃん、どれ着ても同じだよ”みたいな顔。
「言うな。わかってるから」
迷うことなく、白Tとジーパン(初めて着るのに既視感すごいやつ)に着替えて、
再びキッチンへと戻る。
棚を開けると、調味料がきれいに並んでいた。
おそらくだけど、塩とか胡椒とか、そしてこれは“味の素”的なやつ?
ラベルは全然読めないんだけど、なんとなく雰囲気でわかる。
もはや我慢ができなくなってきた犬モンたちの
“母ちゃん、早くしろ”
の圧がすごい。
「わかったよ、作るよ! 作らせていただきますとも!」
手を洗った瞬間、犬モンたちの尻尾が一斉にピーン。
君たちなんでそんな連動してんの。
「よし、異世界キッチン、初稼働ですな。朝ごはん、いっちょ作りますか!」
犬モンたちが「わふっ」と短く鳴いた。
そのタイミングの良さよ。
絶対わかってるでしょ。
犬モンがもはや犬にしか見えなくなってきた。




