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140字の戯言  作者: 歩
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20/21

191~200

191 飲み込む言葉


「おいおい、私の美貌に惚れるなよ!」

全力の変顔でポーズを決める私。

「ない、絶対にない!」と彼は吹き出した。

いつだって私はクラスの爆笑王。

だけど本当は、彼の前でだけは可愛い女の子でいたいのだ。

「好き」の言葉が出かかっているのに、その二文字を飲み込み別の面白いセリフを選んでしまう私。





192 痕跡


中学生の頃同級生の暴言や排除によって追い詰められ、この世から消えようとした。

何もなかったように装っていても、数年後に抑えきれなくなり家の中で暴れた。

その数年後は出血するまでテーブルに何度も頭を打ち付けた。

今だに心に刻まれた傷が顔を出そうとうずうずしている。

一生涯痕跡は残り続ける。





193 素の私に

でも彼は、クラスのほかの子とは違った反応を示した。

ひとしきり笑った彼は、優しい目で私の顔をじっと覗き込んだ。

「ま、そういう全力なとこ、俺は嫌いじゃないけどな」

そう言うと私の頭を軽く小突いて、歩いて行った。

爆笑王から素に戻った私。

彼の背中を見送りながら、赤くなった頬を両手で隠した。


※191 「飲み込む言葉」の続き





194 風の叱責


昨夜も強烈な頭痛で目が覚め、ベランダに出て夜風に当たった。

いつになったら許してくれるの?

夜空に呟くと突風が吹いた。

そんなに悪いことをした?

また突風だ。

なぜ俺だけが怒られるの?

同じように生きているのに。

また突風だ。

怒っているのは神、それとも仏か。

俺はこの星に嫌われているのだろうか。





195 何と名乗る


昔、不良に囲まれた先輩は、咄嗟に店先の札を見てエイ・ギョウチュンだと名乗った。

不良たちは一目散に逃げて行った。

別の先輩がジュン・ビチューと名乗ると、まだ始まってもないのかと殴られたそうだ。

今ならヘイ・テンかキュウ・ギョーと名乗るしかない。

開くことがないシャッターが連なる時代には。





196 雨上がりの一筋


土砂降りの雨がようやく上がり、濡れた路面は鈍く光る。

これまでの会社員人生も洗い流してくれたら、光り輝く部分もあるのかな。

足踏みばかりしている自分を思い溜息をついた。

その時雲に覆われていた空から一筋の光が差してきた。

俺に光が当たったこともあったよな。

そう呟き、前を向いて歩き出した。





197 タイムマシン


「博士、ついに完成ですか」

「完成はまだだよ」

「未来へは行けますよね」

「行けるけど……」

「乗ったら爆発したりはないですよね」

「それは大丈夫だ」

「百年先はどんな世界なんだろう」

「まだやめておくほうがいいぞ……」

助手は意気揚々とマシンに乗り百年後へ旅立った。

未来への一方通行のマシンで。





198 解放された日


終着駅にいつもどうりに着き、ハンドルをそっと二回叩いた。

これで四十年の運転士人生を終える。

帰宅時、妻は労いの言葉の前に、ホッとしたと呟いた。

列車事故のニュースを見るたびに、私ではないことを願ったという。

私は安全運転を、妻は私が無事に帰宅することを。

夫婦はそんな生活から解放された。





199 ケセラセラ


「昨日はごめんね、もう怒ってないよ」と、喧嘩した恋人宛てのメッセージを職場の全体グループに誤爆した。

返信のない静かな画面にまずいと思い、私は即座に追記した。

「このメッセージは進捗が遅れている開発チームへの皮肉です」

「優しいふりして怖い」とスタンプが乱舞し、大惨事は爆笑に変わった。





200 無粋


的外れな発言や質問をするやつ。

わかりきった答えを求めるやつ。

相手の話を一切聞かずに捲し立て、間違いに気付いても謝りもしない。

他人の過ちは許さず責め立て、自分の過ちは無かったことにする。

いまだに学歴や職業で人をランク付け。

そんな無粋な真似はご免だ。

私は人として、粋に生きていきたい。





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