201~210
201 新たな詐欺の手口?
帰宅するとポストに一通の手紙が。
宛名は未記載だからわが家宛ではなさそうだが、重要なお知らせと書かれている。
恐る恐る封を開け中身を取り出すと、最初に法律の条文が目に入った。
末尾に契約を結び金を払えと書いてある。
これは新たな詐欺だな、日本放送協会なんて実在しそうな名前を使いやがって。
202 時の妖精
デートの一時間は光速で過ぎ去るのに、カップ麺を待つ三分はやたらと長い。
そう、時計が正しく時を刻むことはないんだ。
時間がないと焦る時、時計の裏で妖精がこそっと針を動かしてた。
でも、時間を気にせずのんびりしていると、妖精は寂しそうな顔をするんだよ。
妖精たちは遊んでいるつもりなのかな。
203 飼育
「妻ですから、あなたのことはすべてわかるのよ」が口癖の妻。
ある朝、不敵な笑みに見送られ家を出た私は、初めての不倫に溺れて帰宅した。
妻は上着を受け取りながら微笑んだ。
「ほかの女より私のほうがいいと思ったでしょ? 私はあなたの好みや思考も、今からあなたがどうなるのかもわかるのだから」
204 惨敗
今年こそ食欲の秋に打ち勝つ!
朝は出勤前にジョギング、会社帰りの甘いモノは封印した。
休日はスイーツ巡りをやめ、近所の公園で読書の秋を楽しんでいた。
どこからともなく秋らしい香りが、でも金木犀じゃない。
さらに、私を誘うお馴染みのセリフも聞こえてきた。
気が付くと私は焼き芋を手にしていた。
205 嗅覚
「いい子ね」とほほ笑む私に、愛犬は絶対に懐かない。
家族には尻尾を振って寄り付くのだが、見透かされているのだろう。
私が無類の猫好きだということを。
打算的に可愛がっても、あの鼻には一切通じないようだ。
私の偽物の愛を嗅ぎ当て、今日も私の布団の真ん中に置き土産という、嫌がらせをしてくる。
206 正夢のプロローグ
おかしな夢だった。
学校への近道が工事で通れず、別の道を歩くとクラスの女子が一人立っていた。
その女子に唐突に告白し、付き合うことになった。
普段話をすることもない女子なのに、深層心理では好きなのかな。
夢のことは忘れて家を出た。
近道は工事で通行止めだったので、迂回して学校へ向かう……。
207 ベランダの青、部屋の山
数日続いた豪雨が去った。
あの過酷な日を思えば、どんなことでも乗り越えられる気がする。
ベランダに出るとまばゆい青空が広がり、思わず背伸びした。
「よし、今日もがんばるぞ!」
部屋に戻ると現実に引き戻された。
洗濯かごに積まれた強烈な臭いを放つ洗濯物の山が、私を見つめてほほ笑んでいたから。
208 かくれんぼ
君はいつも出かける直前になると隠れて、私を困らせる。
仕方なく駅まで走り遅刻は免れた。
夜、疲れて帰宅し、カバンを下すとチリンと小さな金属音。
ラグをめくるとかくれんぼしていた。
「今日はそこだったの?」
明日は君の遊びに負けないよう、特等席のフックにお帰りいただいた。
自転車の鍵はそこよ!
209 この世の終わりを救う
連休明けの電車の中、みんなこの世の終わりのような顔だ。
隣のサラリーマンは深いため息をつきスマホをタップすると、大音量の陽気なサンバが鳴り響き始めた。
画面を連打するが、焦りから曲は止まらない。
諦めた彼は立ち上がり、その場で小さくステップを踏みはじめる。
その瞬間、私の腹筋は崩壊した。
210 読書日和
「そうだな、俺は好きなものを腹いっぱい食べるよ」
「俺は女とやりまくるぜ!」
「僕はね……、機関銃を無差別に発砲し続けるんだ。狙いたいやつを重点的にだけどね」
「とにかく止まらずにバイクで走り続けるさ」
「私は心穏やかに本を読むよ」
迫る地球最後の日。
あなたはその時を、何をして迎えますか。




