↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140字の戯言  作者: 歩
PR
18/21

171~180

171 リフレクション


浴衣姿で手を繋ぐ夕暮れ。

二人で夜空を見上げる先に、次々に大輪の花が開く。

色とりどりの大輪の花。

しばらくは見上げていたけど、僕は彼女の方に顔を向けた。

彼女の瞳は夜空の大輪の花を見つめ、僕の瞳は彼女の瞳に映る大輪の花を見つめていた。

どうしたの。

きれいだね。

花火見てる?

うん、花火もね。





172 子どもは真剣


夏休みは早起きして公園へ行き、ラジオ体操してカードにハンコを押してもらう。

パンを食べて朝のうちに宿題をし、その後は学校や市営のプールへ。

海で釣りを、山で虫取り、図書館で本を読んだりも。

大した夏休みは過ごしていなかった。

でも大人になった今、お金を払っても充実感を得られないのはなぜ。





173 徳を積む


苦しい時の神頼みで神社へ来る人ばかりだな。

神は苦しい時に手を差し伸べる存在ですし。

困った時だけ私たちを頼ってきてもなあ。

そう言うとお詣りに来た人たちのポイントカードを調べ始める。

徳をポイントに換算しカードに押し、交換可能なポイント数に達した人にだけ、神は順に手を差し伸べて行った。


※22 「ポイント残高をチェック」の改編





174 人は悪かれ我善かれ


道に落ちた財布が目に入る。

交番へ届ければ電車に乗り遅れる。

もちろん持ち去ることなんてできない。

拾って後々面倒に巻き込まれるのも嫌。

自分への言い訳を作り、見なかったことにして財布をまたいで駅へ向かう。

親切な人が届けるだろうと思いながら。

後を歩く人たちも、みんな同じことを考えていた。





175 誰が灯りを消すのか


街は明。

無人コンビニ、自動運転の電車、無音の宅配ボックス。

働く人は一人も見えない。

だが陰では四六時中、誰かが泥臭くシステムを回し続けている。

表の「明」が輝くほど、裏の「陰」は深くなる。

もし、その陰から人が完全に消え去った時。

私たちはどうやって生きていくのか。

街の灯りは妙に眩しい。





176 静寂の選別


昨日は朝から気怠く、一日中スマホもPCも断ち家にこもった。

外の世界を遮断したからこそ、見えてきたものがある。

だから無駄な時間にはならず、有意義な一日だった。

見えたのは本当に必要な人とそうでない人。

静寂の中で突き詰めて導いた答えは残酷だが、大変清々しい。

今の私に、あなたはいらない。





177 宿題の模範解答


ワタシと仕事と車、どれが一番大事?

付き合い始めて一〇年を超える彼女は、時々難しい宿題を出してくる。

僕にすれば別次元なモノで答えが出せないけど、提出を求めてくる。

全て大事と言っても納得しないし、仕事や車と答えればむくれるし。

遅くなったけど、明日宿題を提出するよ。

指輪といっしょにね。





178 子供盾


体のため、子供のため、安全のため。

ためのせいで自由が狭まる。

大らかなほうが生きやすいのにと、昔を語る人もいる。

ただ子供のためと言い訳をし、我儘を通す親があまりに多い。

盾のように子供を前面に出し、親は剣を振りかざす。

もっと厳しく律しないと、親子揃って思考の成長に支障をきたすだろう。





179 二人の終着駅


これで最後ね、と笑う彼女の指には指輪が光る。

彼は家庭への一方通行を進む。

結局はすべてを捨て去る勇気など湧いてはこず、お互いに同じものを守ることを選んだ。

さっきまで感じていたお互いの温もりは、もう過去のもの。

まっすぐに改札へ消える彼の背中を追うことなく、彼女はただ静かに愛を葬った。





180 ぬるい平熱


告白され、暇だし別にいいかと始めた関係の延長線上で、私は結婚し親になった。

今も「好き」はわからない。

けれど、彼らを本当に大事だと思えるから愛してはいるのだ。

ただ、胸を焦がすあの「好き」という感情だけが、今もぽっかりと抜けている。

名前のない愛しさの中で、今日も静かに手を繋いでいる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。