141~150
141 近付いてきた
歳を取ると頭の中で考えて正解を論理的に導き出せなくなり、その結果本能のまま突発的な行動に出る。
間違いを指摘されると頭の回路がショートして、防衛機制から手を出すことも考えられる。
自分では正解を出したと思い込み、非は他者にあると信じ込み意固地になる。
そんな年代に足を突っ込んでいる私。
142 まさか
SNSを覗いていると、やたらと他責思考の人が多くてぞっとしない。
どう考えても投稿者に非があるのに全ての責任を相手に押し付け、必死で同意を得ようとする。
まるで子供が自分の我儘を通すために喚いているのと同じようだ。
まさか「ぞっとしない」の使い方が間違っていると文句を言わないだろうな。
143 親の背中
子供たちには習い事でかなりのお金を費やしたから勉強もでき、大手企業で働く自慢できる子供となった。
ただ子供たち家族と食事に出掛けた時、注文している様子を見てギョッとした。
明らかに店員を見下す言葉を放っていたのだ。
お金を掛けたが私は何も教えず、私の背中を見て何かを学んでしまったのか。
144 大掃除
週末、業者による排水管清掃があり、居室に入るので家をせっせと片付ける。
あちこちを掃除し、普段はしないフローリングのワックス掛けも。
そして排水管のクリーナーも投入して、常日頃お手入れしていますとアピールする。
誰かが来ないと部屋を片付けない私。
最初に掃除すべき場所はこの性格からだね。
145 消滅
除夜の鐘がうるさい、年末の深夜くらい静かにしろ。
大音量をまき散らす盆踊りなんて中止しろ。
公園で騒ぐ子供の声がうるさい、公園で遊ばせるな。
体調の問題などもあるだろうが、一部が満足を得るために多数が迷惑を被る。
個の尊重ばかり重視されるが、お互い様という概念はもう消え去ってしまったの?
146 次の物語へ
子供の頃に住んでいた団地が取り壊され、マンションの建設が始まった。
私の子供時代を知る建物が無くなったのです。
思い出が詰まる場所だが、重機のドンという一回の音で思い出が一つずつ消えて行く。
でも新しく家が建てばそこに新しい物語が誕生する。
きっと次の物語は笑顔が満ち楽しいものになるよ。
147 感度
チクタクと古いアナログ掛け時計の音が部屋に響く。
いつもは気にならないのに、今夜はやけに音が大きく聞こえる。
飲んで上機嫌な男女グループの甲高い声にイラっとする。
ほのかな蚊の羽音が耳元で何度も聞こえる。
眠れぬ夜は音に対して神経が過敏になるようだ。
でも朝の目覚ましの音は聞こえなかった。
148 実は……
大変だな、何か困ったことがあれば遠慮せず言ってくれ。
ありがとう、これまで任せっきりだったから本当に大変なんだよ。
まあ元気そうでホッとしたよ。
いつまでも落ち込んでいたら、生活も仕事にも支障するからな。
確かに、これからも奥さんはお前を見守っているさ。
それはないよ、だって俺は妻を……。
149 リング
ガラガラの電車に座る二人。
流れ行く風景を指差しながら楽し気に話をし、やがてキスを始める。
デートの余韻を楽しんでいるのか、それともこれから始まる夜への助走なのだろうか。
次の駅で女性は一人でホームへ降り立ち、笑顔で小さく手を振る。
尾灯が小さくなるのを見届けると、薬指にリングをはめた。
150 資格
強烈な個性と強引な手法。
国民からは強烈な支持と猛烈な批判が巻き起こる。
もちろん議会も真っ二つに意見が割れる。
そんな国のトップが議員の資格として、世間一般が求めるモラルを充足できない者は即罷免し、立候補も認めない法律を施行した。
次の選挙、元議員は誰一人立候補することができなかった。




