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140字の戯言  作者: 歩
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14/20

131~140

131 伝言板


最終電車が出ると伝言板を消してその日の駅業務を終える。

何時間も待っていた女性は、やっぱり来てくれなかったのねと書き込むと立ち去った。

今までありがとうとだけ書き、大きな荷物とともに改札内へと消えて行った男性。

チョークの文字には思いが詰まり、消すことができず翌朝を迎えることもあった。





132 誰の指示?


いつものように三叉路を右に行こうとした。

「今日は左へ曲がって!」

そんな声が聞こえ左へハンドルを切った。

いつもより帰宅が遅くなり、家族が心配したと言う。

少し遅くなったくらいで子供じゃないのにと笑ったが、いつもの道で大きな事故が起きたからだと言われた。

左へ曲がれと指示したのは一体誰?





133 写真


撮影が好きで時間があればカメラと街を歩く。

構図も立ち位置も光も編集もダメ出しを食らう写真だが、見たままを素直に撮った絵には記憶が宿る。

上手な方の撮影技法を真似て見栄えの良い映える写真もあるが、何だかつまらない。

綺麗だけど似通った写真より、ダメ出しを食らうクソ写真の方が自分らしい。





134 アナログ


古い人間だからか、電子書籍を見ても頭に残らない。

PCで検索しても一過性で頭には残らないし、テキストでPCに残したり印刷してもダメなんだ。

紙の辞書を今でも愛用しあちこちに赤線を引き、メモに走り書きすることが多い。

予定はシステム手帳に書き込むので、スマホもほぼ定位置から動いていない。





135 水たまり


雨でできた水たまり。

少しずつ流れていくから、今の大きさ以上には決してならない。

そして明日の朝には水たまりは消えてなくなり、次の雨の日まで水たまりがあったことに気付きもしない。

あなたは水たまり。

心の中の雨水はすぐ消滅する。

私は雨。

水たまりができるように毎日でも降り注ぎたいのに……。





136 異世界


そこは見知らぬ異世界だった。

路地で遊ぶ子供たち、縁台で将棋を指す下着姿の年配者。

包丁が奏でる音、お出汁の香りや魚を焼く匂いも。

ご飯だからと子供を呼ぶお母さんの声も聞こえてくる。

昭和のごく普通な日常風景は懐かしくて心地良かった。

目を覚ますと華やかだけど冷たく感じる都会に立っていた。





137 今さら


どうしてもっと素直になれなかったのだろう。

あの時に抱きしめていたら。

あの時に好きと言えていたら。

これ以上進んではいけないと思い、その場に立ち尽くすことを選んだ。

そして時は流れ年老いた私は、その時のことを今でも悔やむ。

幸せな人生を送ってきたが、モヤモヤ感が心から消えてくれないんだ。





138 蛇目草


お別れしたのは一年前のちょうど今ごろ。

真っすぐで妥協しない、そしてスラっとしてかっこいい人。

どうしてもやりたいことがあるから仕事も辞めて上京する、だから終わりにしようと。

あなたの性格だから受け入れたけど、本当は付いて行きたかった。

私の気持ちはあの頃のまま。

道端に咲く蛇目草のまま。





139 信念はない


数十年前の高校時代、教員の大半がかなり偏った思考を持っていた。

天皇と日章旗や自衛隊を拒否して反戦を叫び、学生運動の延長線にいたようだ。

高校を卒業し十年ほどが経過したころ、社会の教科担任だった人が列に並んでいるのを見て幻滅した。

拒否していた自衛隊の炊き出しの列に並んでいたのだから。





140 お昼の店選び


好みはこちらの店、でも人気があるのはあちらの店。

でも今日の僕はどちらの店にも入らなかった。

良いモノに巡り合える可能性が高い両店だけど、今日の心境に合致していなかったから。

少し離れた場所の寂れたお店に意を決して入って行った。

好みのアンティークな店内に心を躍らせ、

「きつねうどん一つ」




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