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140字の戯言  作者: 歩
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13/20

121~130

121 悪役


連休で民族大移動が繰り広げられる。

混んでいるとわかっていてそこへ加わる人の気が知れないと、私の親はずっと話していた。

仕事を休めないと言うと子供が悲しそうな目で見るから、私も同じようなことを口にしていた。

親が子供に憎まれ口を叩き、そんな仕事は辞めてと言われないよう悪役に徹していた。




122 虎とウサギ


彼は親分気質で多くの人を従い、矢面に立って後輩たちの盾となる。

常に周りを威嚇し牙を向ける姿はまるで虎。

でも一人にすると寂しくて死んでしまう。

寂しがり屋を隠すために強さだけを見せ、見せることで常に人の中心にいる。

誰も上辺しか見ず彼の本質には目を向けない。

彼の心は本当はウサギなのに。




123 またね


近くまで送って行きしばし話をする。

朝からずっと一緒にいたのに、まだまだ話足りない。

三〇分は立ち話しをしただろうか、手を繋いだ腕が少しずつ伸びていき、やがて手は離れお互いに手を振る。

またね。

お互いに目線を外さず手を振りながら少しずつ離れる。

明日もまた逢えるのに、この瞬間が寂しいね。




124 ツキ


終業時刻直前に土砂降りに見舞われた。

会社に置き忘れていた傘があったので、ツイているなと思いながら一階へ降りた。

「駅まで入れて行ってくれない?」

部署で人気のある女子に頼まれ、ツイているなと思いながらも、

「ごめん、駅とは逆方向へ行くから」

僕はもっと別なことにツキを使いたかったから。




125 保護回路


テレビを見ていると次々に知らない人が出てくる。

アイドルユニットなんて全て同じに見えて区別もつかない。

昔活躍した芸能人は鮮明に覚えているが、今の芸能人を覚えられないのは興味がなく集中して見ないためではない。

これ以上の記憶を拒絶するプログラムが働き、パンクしそうな脳を守っているのだ。




126 大事なのは気軽さ


初めて手にしたのはペンEE3、初めて買った一眼はXR500。

その後もコンパクトや一眼レフをいろいろと買ったが、一〇年以上昔のネオ一眼に落ち着いている。

写りは最新の一眼に遠く及ばずスペックも見劣りするが、大事なのは撮影に行くぞと気構えず、散歩がてら持って行こうと思える気軽さなんだ。




127 時間を追う


駅へカップルが慌てて走って来た時、最終電車は出た後。

仕事柄か最終電車の時間は事前に調べるから、駅で慌てた経験はない。

でも、二人きりでいる時も電車の時間ばかり気にしていた。

時間を忘れて楽しく過ごすカップルの方がその夜は幸せ。

仕事で時間に追われ、デートで自分から時間を追い掛けていた。




128 週末


三枚の背後の窓のうち二枚はカーテンで閉ざしたが、閉ざされていない窓の後ろにカップルが座る。

おそらく先頭車両はガラガラなのだろう、その二人はキスを始める。

運転のために前を向いているが、カップルの姿態が前のガラスに全て映り込む。

曜日感覚などまったくないが、世間は週末なのだと理解した。




129 イマドキの先生と生徒


スポーツでも何でも新しく始める時は、教えてもらうか書籍を読み漁り独学で覚えるしかなかった。

でも今はどのようなジャンルでも先生が簡単に見つかる。

XでもインスタでもTikTokでも先生がウジャウジャいる。

調べるのは動画上の先生の居場所だけで、考えも調べもせず動画を見るだけで一人前に。




130 昔はよかった


昔はよかった。

よくそんなことを口にする人がいるけど、あれはごく一部をピンポイントで見たときのこと。

全体で見れば今より良いわけがない。

でもなぜすぐに口にするのか。

お前たちは経験したことがないだろうと、マウントを取りたい一心から。

それに流れが早く、今に付いていけないという理由もある。



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