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140字の戯言  作者: 歩
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12/20

111~120

111 劣化と許容値


今朝久しぶりに顔をまじまじと見た。

肌のつやがなくて目尻の皴も深く、白髪も増え髪の量が減ったようだ。

六〇年も生き長らえた勲章のようなものだろう。

そして親父の顔にますます似てきたが、私より十以上若い歳で他界している。

生きても良い許容値を超えたから、あちこちの劣化が目立っているのかな。




112 サクラチル


開花から満開そして散り行くまでが早く、その可憐さと儚さにより桜は皆に好まれるのかな。

桜は花が散ってから葉が、まるで新しい生命を宿すように茂り始める。

サクラチルは失敗した例で使われるけど、桜の木を見ているとそうは思えない。

私には桜が散ってからが新たな勝負だと伝えているように見える。




113 夢だけで逢える


毎年この時期の数日間、笑顔で僕を見つめる女性が夢に現れる。

子供の頃からスポーツが大好きだった彼女が病気でこの世を去って十数年、生きていれば五十過ぎになっている。

彼女が逢いに来ているのか、それとも僕が逢いたいだけなのかはわからないが、今は夢だけで逢える彼女。

今年も逢うことができた。




114 カフェ


お気に入りのカフェは七〇年以上の時を刻む。

震災で一時途絶えたが、復活した今でも足繁く通う。

桜の時期は店内から絶景が眺められる。

心がもやもやする時に訪れると不思議とパワーを与えてくれる、私にとっては本当に居心地の良いカフェ。

そして亡き親父が七〇年以上前に初めて働いたカフェでもある。




115 一部分


「今日は一人なのか?」

いつもは話の輪の中心にいるけど、本当はそんなの好きじゃないんだ。

無理して周りに合わせているうちに心が疲弊していく。

そして何より僕の心に土足で上がり込もうとするじゃないか。

それが耐えられないから今は一人でいるんだよ。

表面の一部分しか見ないからわからないんだよ。




116 時の流れ


若い男女がベンチに座り何やら話している。

それほどくっつきも離れもせず、仲が良いとわかる程よい距離感。

二時間後に戻ると程よい距離を崩さずまだ座っていた。

時に追われる私と時を忘れる男女。

時計は同じリズムで時を刻んでも時の流れは別。

羨ましい?

電車を定刻で運転した安堵感で満たされてるさ。




117 言葉が出ないのは


理不尽に怒られてもその場では言葉が出ない。

子供の頃から今でも、時間が経ち少し冷静になるとこう言えば良かった、こう言い返せば良かったと思う。

言い返せない自分が情けなく今度は落ち込んでしまう。

「相手を傷つけまいと言葉を選択するから言い返せないだけ」

そんな一言に助けられ今も生きている。




118 記者


ある五輪金メダリストが母校の小学校を訪れ生徒たちが質問をする。

好きな食べ物は何ですか?

休みの日は何をしていますか?

微笑ましい質問に笑顔で答えていた。

でも少し引っ掛かった。

スポーツ選手の記者会見でも同じ質問をする記者がいるよな。

記者という職業は小学生と同等の事を口にすればいいんだ。




119 背中を押す


後輩が上司のことを相談してきた。

彼は真面目で仕事ができ信望も厚いがゆえ、上司の過重な押し付けに耐えられなくなっていた。

この場面での私の答えはいつも同じ。

新しい職場を探してここから去るほうがいい。

我慢せず正しい道へ送り出すため私は背中を押す。

私も背中を押されて笑顔を取り戻せたから。




120 情報


隠れ家や穴場のほか、絶対に行くべきとか外せないという投稿が嫌いだ。

投稿された瞬間に隠れ家も穴場も表面化され、行くべきや外せないなんて個人の感想を押し付けているだけ。

投稿をきっかけに店も客も雰囲気が一変し、二度と行きたくはない店になることも。

情報を手軽に発信し享受する功罪を感じる。

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