101~110
101 ごめんね 140字の戯言
どう声を掛ければよいのかわからない。
口下手な僕は話を聞くことしかできない。
彼女が悩み落ち込んでいる時でも、子供に何かあった時でも。
ずっと頼りない男だ。
そんな僕にできることは何があっても離れず付き添うだけ。
気の利いた言葉なんて出ないから、横に座って話を聞く以外はできない。
ごめんね。
102 新世界 140字の戯言
法律さえ守っていれば何をしても問題ない。
周囲の迷惑なんて関係なく、法を犯さなければ好き勝手してもいい。
飲食禁止ではないから今ここで何を食べても咎められる筋合いはない。
信号のない横断歩道を渡る際にドライバーに挨拶する必要もない。
気遣いを捨て白か黒かの判断しか持たない世界へようこそ。
103 桜と私…… 140字の戯言
なぜだろう。
子供の頃から桜が咲き誇りだすと気持ちが落ち込んでいく。
落ち込むというより、もの悲しさに打ちひしがれるというほうが正確かも。
まるで桜の木々に魂を吸い込まれ、無機質な物体に作り替えられるよう。
そして桜の花々を見るたびに涙が流れ落ちる。
理由はわからない、とにかく悲しくなる。
104 本当の自分に戻る時 140字の戯言
駅の裏手の人通りが少ない場所に彼女は立っている。
その場所へ着くと彼女はすぐ助手席に座り、すぐに走らせる。
人目に付かないように密室へ直行し、数時間の逢瀬のあと再び駅の裏手へ車を走らせる。
降り立った瞬間に彼女は母の顔に戻り、私は父の顔に戻る。
一週間後二人はまた本当の自分をさらけ出す。
105 大事な贈り物を置き忘れた? 140字の戯言
公共の場で椅子の上を飛び跳ね、大きな音でゲームや動画を楽しみ奇声を発する子。
親は素知らぬ顔でスマホに夢中だったり、子供だから仕方がないと開き直る。
子供が多いというのは理由にならないし、躾は親からの大きな贈り物だと認識していない。
親たちは両親からの贈り物をどこかに置き忘れたのかな。
106 歩く 140字の戯言
歩いているのか自問すると、散歩はするが夢や目標がなく立ち止まっていることに気付いた。
若い頃は明確な夢や目標を叶えるべくがむしゃらに歩いた。
今は歳がお金が暇がと言い訳を作り歩かないよう自制していたから、座り続けず少しは歩けと自分に命令した。
歩かないから足腰よりも頭が鈍くなっている。
107 スマートになりたくて 140字の戯言
ありがとうと言いながら別れたいのにいつも最後は喧嘩別れ。
彼女に何か言われカッとなって言い返し、ビンタされて幕が下りる。
謝るためメッセージを送ろうにも、ブロックされて電話も着信拒否。
スマホに残る彼女の痕跡を消去する。
別れも綺麗なスマートな男になりたかったが、憧れで終わってしまった。
108 春、別れと出会い 140字の戯言
春、卒業や進学就職で築き上げてきた友達の輪がいったん崩される。
あいつの顔を見なくて済むと清々する、気になるあの人ともう会えないかもしれないと悲しくなる。
でも新たな友達の輪ができるのも春。
新たなスタートを喜ぶほうがいい。
私の歳だと新たな出会いはなく、鬼籍入りし現世にはいない友人も。
109 四月一日 140字の戯言
「日帰りでニュージーランドへ行ってきたんだ、これ、お土産のひよこ饅頭」
会社へ着くなり同僚が毎年恒例の嘘を披露した。
シリアスな嘘を平然と発したり、嘘を吐いて引き返せなくなり上塗りをする人もいる。
品位を落とし自身を棄損する嘘より、笑える嘘で場を和ませようと自分に言い聞かせた四月一日。
110 新入社員 140字の戯言
最近の新入社員研修は会社が相当気を使い、パワハラ扱いを避けるため何も言わない社員もいる。
あまりに早く退職されると困ると会社は言うが、入社後数日で退職代行に依頼する新入社員もいるらしい。
昔のようなモーレツ社員育成のためのパワハラ研修は必要ないが、今のやり方が良いとも思えないのだが。
次回は111~120です。




