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Sword Queen  作者: sunnysing
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戦場を舞う乙女

「進撃ーーっ!」

「怯むな、進めーーっ!」


 血と、銃弾と、魔法の残臭。鎧に身を包んだ兵士達が行き交い、敵味方の区別などとうにつかなくなっている。剣を振りかざし、召喚獣が猛威を振るう。

 

「あー、ちょっとピンチかも?」


 三人の男に囲まれ、一人の兵士はいかにも気楽そうに言った。兜の下から覗くのは、どこか赤みがかった金髪。肩には彼の家の紋章、片手に剣、もう片方の手に竪琴を持った女神の姿が刻まれている。

 彼に戦意が無いのを良いことに、三人の敵兵はいきり立った。


「逃がすなよ。あの紋章、カールトン家の者だ」

「殺したら偉い手柄になるぞ」

「なんせ敵王の宰相の息子だからな!」

 

 はぁ、と彼は溜息をついた。


「親の七光なんて、持つもんじゃないねぇ・・・」


 彼の言葉など耳にも入れず、三人の男たちは一斉に三方向から彼に襲い掛かる。脳裏に浮かぶのは、将来の美人な妻。あなたの勇敢さに惚れましたわ。そう言って彼女は自分の肩に寄り添うのだ――


「ぐはっ!」


 ターゲットの左右から飛び出した二人は、それぞれの視界の端で、正面から飛び掛ろうとしていた男の身体が傾くのを見た。苦しそうに顔を歪め、あっけなく視界から脱落してゆく。一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 状況は分からない。ただ、今自分がすべきことは、目の前の男を刺し殺すことだけ――


「うっ!」


 右側から剣を振り上げた男は、思わず息を呑んだ。キーン、と刃が交わる音がする。腕に力を込め、男は相手の剣を振り払おうと踏みとどまり、そして――彼女を見た。


「お前は・・・!」


 彼女は無言のまま目を細める。剣に込められた力が増していく。男は狼狽した。この女、強い。強すぎる。このままでは・・・


「兄様を傷つける奴は、許さない」


 冷ややかに、乙女は言葉を放つ。一拍の後、男の腕が急に軽くなった。と思うと次の瞬間、胸に鈍い衝撃が走った。


「く、そ・・・女、ごときに・・・!」


 胸を貫いた彼女の剣が、刺した時と同じように勢いよく引き抜かれる。膝の力が抜けて、身体が傾く。最後の力を振り絞り、見上げた死の乙女の顔は、息を呑むくらい美しかった。

 大地に力なく横たわる。霞み行く視界の隅に、味方の倒れ伏す姿が見えた。


(そうか・・・)


 俺は、殺されたのか。



  *         *          *


「助かったよ、シーナ」


 彼女が始末し損ねた最後の一人、左から向かってきた敵兵の息の根を難なく止めると、彼は兜を取って振り返った。彼女は彼に背を向け、剣を懐に収めているところだった。


「レオ兄様、お怪我は?」

「ほとんど無いよ。シーナこそ、血だらけだけど大丈夫?」

「全部、私の血ではありませんから」


 シーナは振り返った。その白い頬にすら返り血がついているのを、兄であるレオは勿体無く思う。とても綺麗なのに、血などで汚してはならない、と。


「・・・兄様?」


 シーナは思わず目を丸くした。戦闘の真っ只中で、兄がいきなり自分のマントで妹の血塗れた頬を拭い始めたら、誰でも驚くものだろう。


「汚してはいけないよ、シーナ」


 優しく微笑み、ついでとばかりにレオは、彼女の肩に当てられた鎧もしっかりとこする。赤く濁ってはいるが、白い、両手に剣と竪琴を持った女神の姿が現れると、レオは息をついた。

 遠くで停戦のラッパが聞こえる。今日のところはもう終わりなのだろう。陽も傾き、空はオレンジ色に染まっている。


 二人の強すぎる兄弟は、揃って簡易テントへと歩みを進めた。

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