近藤と亜香里
「そもそも山田先輩の身分は自衛官なんでしょ?今回みたいな任務に参加して大丈夫なんですか?」
「それは正確ではないな近藤、俺は現在、自衛官としての身分はない」
「そうは言っても、3年後にはまた陸自ですよね?」
「オプションとして選べるということだ」
「そうなんですか、陸海警備に残るか陸自に戻るか選択権があるんですね、ただ、戻った場合准尉待遇って聞いてますよ」
「そうなるのかな」
「今回の任務も断れない訳ですね」
「そればっかりじゃないさ、もちろん命令に従うってこともあるが」
「何があるんですか?」
「俺の父方の親戚が1人日野の事件で失踪してる」
「そうなんですか・・・なんだか、すみません」
「謝ることではないさ」
「お二人とも、そろそろ帰らないと門限ですよ、明日も早いし」
3人は自由が丘にある独身寮に住んでいた。特に山田は毎日寮から会社まで自転車で通勤している。
「お、そんな時間か」バックパックを背負いながら山田が財布からカードを出し亜香里に渡す。
「全部は悪いですよ、俺も半分出します」
「いや、大丈夫だ、近藤が後輩を連れて飲みに行くときにその後輩に出してやれ」
「ご馳走様です!」
近藤と亜香里は山田がロードバイクにまたがって自由が丘方面へ消えていくのを見守った後、南北線の麻布十番駅へ向かう。
近藤も亜香里もそんなに飲んでいないはずだが少し顔が赤い。
「亜香里は何か考えているのか?」
「私は初勤務みたいなものですから、何も」
「魔女ってなんなんだ?」
「なんなんでしょう?」
「カエルにされたらどうするんだ?」
「それは考えていませんでした」
「考えろ」
「えー、そうなったら近くの池に飛び込んで俳句にでもしてもらいます」
「何を風流なことを言っているんだ、でも、そうか、そんなものかもしれないな」
「そうですよ、近藤センパイ」
「なんだかな、亜香里は実家にいる妹に似ているんだよな」
「そうなんですか?それは光栄です」
「まあ、シスコンだから、妹は好きなんだけど」
「それって告白されているのでしょうか?」
「いや、なんでもない」177センチはある近藤が俯いて髪を掻いて照れ隠しをする。
「今回の任務が終わってから答えるでもいいですか?」
「え、なんかそれってやばいフラグのような気がするけど」
「そうですか??」
それっきり無言になった2人は寮の前で別れて男子寮と女子寮にそれぞれ飲み込まれていった。




