二学期の始まりとともに
二学期が始まった。
僕とコレーは、まだ複合体のままだ。
夏休み明けの第一日目。
誰にも気づかれないように、というより
見た目には何も変わっていないのだから
当然そのままの姿で登校した。
抱えているのは
バッチリ仕上げて、一個一個ラッピングした
水饅頭。
じゃなくて。
正式名称『DOCONANI3号の
ミニチュアブローチ』。
全部で132個。
学年全クラスの女子の分が131個。
自由研究提出用が1個。
数だけ聞けば
なかなかの大仕事をやり遂げたように思えるだろう。
実際、大仕事だったんだよ。
ただし、普通の手芸工作とは
ちょっとばかり事情が違う。
なんたって、中に乗ってるんだから。
精霊たちが。
それも、密偵として。
僕は教室に入ると
まず提出用の作品を取り出した。
これだけは搭乗員が違うので
間違えないようにしなければならない。
透明な水饅頭の操縦席には、玉虫とカゲロウ。
よし、いる。
それをひとつだけ別にして
残り131個の箱を抱え直した。
さて。
これから各クラスの女子たちに
配りに行かなくては。
『なるべく動かないように頼むけど』
箱の中の精霊たちに、頭の中で声をかけた。
『無駄に殺生されないでね
もしも身の危険を感じたら
逃亡しても構わないから』
こんな注意事項を添えて
アクセサリーを配る奴なんて
世界中探しても、そうそういないだろうな。
いや、別次元まで探せば
いるのかもしれないけど。
そこへ、先に登校していた幼馴染の
茶蔵トーシローが声をかけてきた。
「おい、ソレイユ! 登校日ぶりー。
って、その箱、自由研究?」
「うん。あ、こっちのは全部女子限定だから
あとでな。こっちなら見せられるよ」
僕は提出用の作品を差し出した。
「美術の作品?」
トーシローは興味津々で覗き込んだ。
「ん、まあ、アクセサリーオブジェってとこかな」
「あ、なんだこれ。玉虫とカゲロウ? え、標本?」
標本。
まあ、そう見えるよね。
「なんかわかんねーけど、斬新だな。
インセクトアートって奴だな!
めちゃめちゃアウトサイダーアートじゃん!
生きてるみたいなポーズだし」
見ると、あれっ。
ポージングが違う。
それって、ミケランジェロの
『アダムの創造』じゃないか。
ふたりとも腕を伸ばして、指先を近づけてる。
おいおい。
遊んでんじゃないよ、君たち。
ちゃんと死んだふりしててくれよ。
玉虫とカゲロウは、死んだように
だが生き生きと、じっとしている。
きっと超音波みたいな声で
ひそひそ話でもしてるんだろう。
なんとか、このまま間が持つといいんだが。
それより心配なのは、女子たちに配る方だ。
『今頃になって不安になってきたよ。
女子に配る分も、もう少し一般ウケする奴らを
動員してきたらよかったかな。
どう考えても過激すぎる試みだよね』
頭の中でコレーに話しかけた。
『大丈夫だよ。心配ない』
コレーは、相変わらず自信満々だ。
君はいいよな。
実際に女子たちから悲鳴を浴びるのは
僕なんだから。
僕は教室を見回して、坂織ミルの姿を探した。
こんな時、誰よりも心強い味方になってくれるのが
ミルだ。
ミルがついててくれたら、勇気100倍。
あ、いた。
ベランダで他の子たちと喋ってる。
夏休み明けの残暑の光の中で
今日もひときわ明るく輝いてるぜ!
「優しそうな子だね」
コレーが声に出して言った。
『ちょ、ちょっと! コレーったら、もう!』
僕は慌てて頭の中で注意した。
『学校では、頭んなかだけで喋ってくれよ。
とりあえず、声に出して喋るのは僕だけ。
わかった? 静かにしててよ』
『はいはい』
本当にわかったんだろうな。
僕はコレーが黙っていてくれることを願いながら
ミルに近づいた。
「おはよう、ミル! 約束のブローチ
作ってきたから、見てほしいんだけどな」
振り向いたミルの顔が、パッと明るくなった。
「あ、おはよー、ソレイユ!
わぁ、そうなの? どんなの?」
「うん。あのね。ちょっとキモいけど
ごめんね。びっくりしないでね」
僕はドキドキしながら、箱の蓋を開けた。
あれ?
あれれれれれ?
いない。
水饅頭の中に、密偵たちの姿が見えない。
どれを見ても、いない。
キレイにラッピングした袋の中から
見事に脱出イリュージョンだ。
早くも危険を察知して、どこかに逃亡したってか?
拍子抜けしたついでに、緊張も緩んだ。
「うわあー! これなあにー?
透明ですっごくキレイ! 可愛い~!
中にキラキラのビーズもコロコロ入ってるし!」
ミルはブローチを光にかざして
嬉しそうに眺めた。
「みんな、見て見て!
ソレイユの小物が届いたよー!」
その声を聞きつけて、女子たちが集まってきた。
あっという間にクラス中の女子に取り囲まれ
四方八方から手が伸びる。
「きゃー、透明なの? 素敵ー!」
「きゃー、すっごーい! めっちゃ可愛い!」
「ソレイユー、もらっていいのー?」
「ソレイユ、おりこー!」
みんな手に取って中を覗き込んだり、裏返したり。
ピンがついていてブローチだとわかると
早速、胸やポケットに留め始めた。
ああ。
僕が夢見た、水饅頭のダイブ。
手から手へ、胸から胸へ。
まったく、僕がダイブしたいよ。
密偵たちが姿を消してくれたおかげで
女子たちの反応がよかったのは有難い。
有難いんだが。
どこへ消えたんだろう。
これじゃ、コレーの目的は果たせないじゃないか。
また別の奴らを
招集し直さなくちゃならないのかな?
ともかく、隣のクラスにも、他のクラスにも
持って行かなくちゃ。
もうひと箱の蓋を透かして見た。
こっちもいない。
みんな忽然と姿を消している。
『コレー、どうなってるんだろう?
みんな消えてるけど、いいの?
何か知ってるなら教えてよ』
『今日は黙ってろって言われて約束したから』
『そんな約束、この際どうでもいいよ!』
『ちょっと偵察に回ってるだけだよ。
詳しい事情はあとで解明するさ』
偵察。
そうでした。
彼らは密偵でした。
どうも僕は、まだ彼らの仕事を
普通の虫の行動と区別できていないらしい。
ミルがニコニコしながら言った。
「ソレイユ、ありがとう!
いつにも増して可愛いの作ってきてくれて。
みんなすっごく喜んでるよ。
他のクラスのもあるの?」
「うん、あるよ」
「配るの大変だろうから、私が手伝ってあげる!」
そう言って、ひと箱抱えてくれた。
ああ、ミル。
君はやっぱり女神だ。
僕は残りの箱を抱え
ミルについて隣のクラスへ向かった。
シフにも渡すのだ。
僕はドッキドキだ。
*
巣空シフは、廊下にミルと僕の姿を見つけると
ニッコリ笑いながら教室から出てきた。
『いた! キミのシフだ』
コレーが嬉しそうに頭の中で言った。
まだ何か言おうとした気配があったが、途中で引っ込めたらしい。
『コレー、僕の脳のそこらへん読まないでよ。
ってか、黙ってるんじゃなかったの?』
僕は頭の中で文句を言った。
「おはよう! ソレイユ、なあに?
あ、ミルがつけてるそれって……」
僕が箱を開けるより早く
シフの視線はミルの胸元で止まった。
キョトンとしている。
いや、驚いているという感じでもない。
静止画像のような美貌が、無表情のまま固まっている。
どうしたんだろう。
そういえば、制作中
一番出来のいいものをシフに渡そうと思って
分けておいたんだった。
でも、ミルもそばにいるし
今さら箱をひっくり返して選ぶわけにもいかない。
そんな特別扱い、出来っこない。
そもそも、シフ向けに取っておいたのが
どれだったか、わからなくなってしまった。
『どれも寸分違わず完璧な出来だから
心配いらないよ』
コレーの声がした。
君は何でもお見通しだな。
ミルも手伝ってくれて
僕はここでも女子たちに揉みくちゃにされながら
次々とブローチを手渡した。
ようやく一段落したところで、あれ?
1個足りない。
仕方なく、別の箱からもう1個取り出した。
その時だった。
黒っぽい小さな影が、いくつか飛び出した。
教室の隅へ、さささっと逃げて行く。
奴らだ。
まだ残っていたのか!
誰かに見られたんじゃないかと、僕はビビった。
だが、女子たちはブローチをつけるのに夢中で
誰も気づいていない。
遠巻きに何組かの男子グループもいたが
みんな固まって喋っている。
どうやら見られずに済んだらしい。
ホッとした。
僕は逃げ遅れた奴らがいないか
残りの箱をこっそり確かめた。
大丈夫そうだ。
「はい、シフ。どうぞ」
最後のひとつを、シフの手のひらに載せた。
ところが。
なんてことだ!
よりによって!
他でもない
シフの手のひらに載った水饅頭の中から
一足遅れの2名が飛び出したのだ。
シフの手から胸へ。
胸から肩へ。
それぞれホップ、ステップ、ジャンプ!
そして逃亡。
う、げ、げ、げ、げげげげげげ……。
事故だ!
事故!
僕は青ざめた。
シフが悲鳴を上げたらどうしよう。
気絶したら?
怒ったら?
嫌われたら?
頭の中に、考えたくもない未来が
一斉に押し寄せた。
だが。
さらなる衝撃波が来た。
「これって、デジャブ? 見たことある気が……」
シフが、そう言ったのだ。
ええええええええっ。
シフ、平気なの?
虫だよ?
しかも、さっきまでブローチに乗ってた奴らだよ?
シフは逃げて行った小さな影の方を見ていた。
驚いた様子はある。
でも、それは虫に驚いたというより
何か思い出しかけているような表情だった。
僕は、なんと答えればいいのかわからなくなった。
すると。
「デジャブじゃないよ。知ってるはずさ」
僕の口が、そう言った。
コレーだ。
コレーが、僕の口を使って喋ったのだ。
しかも、幾分いたずらっぽく。
おい!
学校では黙ってるって約束しただろ!
「あ、いや、いまのは僕じゃない
あ、いや、なんでもない!」
僕は慌てて打ち消そうとした。
その時、頭の中にコレーの言葉が響いた。
『本当のシフが』
え?
何?
本当のシフ?
どういう意味?
『デジャブじゃないよ。知ってるはずさ』
『本当のシフが』
言葉が頭の中を回っている。
それにくっついて
映像が少しだけ横滑りに入ってきた。
シフがいる。
泣いている。
怒っている。
いや、泣いたり怒ったりしているように
見えるだけなのかもしれない。
一瞬だった。
僕が見たことのないシフ。
僕の知っている
いつも静かで、浮世離れしたシフとは違う。
あれは誰?
なぜ、コレーの記憶の中にシフがいるの?
コレーは、シフを知っているの?
僕より前から?
問いかけようとしたが
コレーは何も言わなかった。
「どうしたの? ソレイユ、ぼーっとして」
ミルの声で、我に返った。
「大丈夫?
これ作ってくれるために徹夜したんじゃないの?」
ミルが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「ソレイユったら、本当に一生懸命なんだから!
ありがとう。嬉しいけど、無理しないでね」
ああ、ミル。
この笑顔に、僕は何度救われてきたことか。
「あとは私たちが配ってくるから
ソレイユは先に教室に戻って
ゆっくりしてたらいいよ」
そう言うと、ミルは他の女子たちに声をかけ
残りの箱を抱えて、楽しそうに連れ立って行った。
ミルって、やっぱり頼りになる。
優しいおねえさんみたいだ。
僕のナンバーワンは、こんな風に
おねえさんキャラのミルと女王様キャラのシフが
絶えずぐるぐる入れ替わっている。
だって、本当にどっちもステキで
大好きなんだもの。
どっちかひとりになんて、決められないんだ。
だから、なかなか告白できないんだよな。
そう思った時、コレーが頭の中で笑った気がした。
もう。
僕の脳内、コレーに丸見えなんだな。
僕の方からは、そんなに見えてないのに。
ちぇっ。
*
僕は自分の教室に戻り、席に座った。
しばらく、ぼーっとしていた。
「ソレイユ、あれ、オレもほしー。作ってくれる?」
トーシローが隣に座って話しかけてきた。
でも、僕はどうにも会話が弾まない。
「頑張りすぎてオツカレか?」
周りの男子にからかわれても
いつもみたいに気の利いた返事が出てこない。
気になって仕方ないのは
コレーの脳内のことだった。
コレーの記憶。
コレーの考え方。
しっかりしていて
何でも知っているように見えるコレーにも
悲しみや苛立ち、期待や不安がある。
そんな感情が、じんわりと伝わってくる。
時折見える映像のひとつひとつに
何かとてつもなく深い意味があるような気がする。
僕を騙すための仕込みではない。
それくらいは、わかる。
コレーにとっては、確かに起こったことなんだ。
でも、それが何を意味するのか
僕にはわからない。
コレーは、僕が一度に全部理解するのは
無理だとわかっているのだろう。
必要に応じて、小出しにしか伝えてこない。
それでも、理解しづらいことばっかりだ。
コレーの記憶に見えたシフのことも。
さっき、僕の目の前にいたシフのことも。
そもそも。
『本当のシフ』って、なんだよ。
じゃあ、僕が知ってるシフは?
……いや。
考えすぎかな。
もうすぐ朝礼が始まる。
講堂へ行かなきゃ。
みんなが教室を出て、廊下を歩いている。
すると、うちの教室の前を通りかかった
女子たちが、僕を見つけて手を振ってくれた。
「ソレイユー、ありがとー!」
「ソレイユー、つけてるよー!」
胸のブローチを指差して、嬉しそうに笑っている。
ミルたちが配りに行ってくれた他のクラスの分も
どうやら無事に渡ったらしい。
よかった。
密偵たちも
きっとみんな抜け出したあとだったんだろう。
ああ、女子ってなんて可愛いんだろう。
彼女たちを見ていると
心配事や悩み事なんか吹き飛んでしまうよ。
今日の、今の僕の戸惑いを
彼女たちの可愛らしさ、美しさ、楽しさが
全部包み込んで癒してくれる。
ありがたい存在だ。
これだから女子たちには
尽くし甲斐があるんだよな。
また何か可愛いもの作ってやろーっと。
……と、一仕事終えた充実感に
浸りたいところだが。
そうだ。
忘れちゃいけないことがあった。
あのブローチは、ただのアクセサリーじゃない。
女子たちを諜報員にするブローチなのだ。
コレーの計画に協力することになっちゃったけど
本当に大丈夫なのかな。
女子たちは
そんなこと知らずに喜んでくれてるんだよ。
僕だって、詳しいことはまだ知らない。
密偵たちは学校のどこかに散らばって行った。
これから何をするつもりなんだろう。
コレーに聞いたところで
また「大丈夫だよ」としか言わないんじゃないか。
とにかく
しばらくは何事も起こらないことを祈るのみだ。
南無妙法蓮アーメン陀仏。
パパが時々唱えている
オールマイティーすぎて効き目のなさそうな
お経だかお祈りだか、よくわからないやつ。
今こそ、ご利益を発揮してもらいたい。
僕は心の中でそれを唱えながら
トーシローと一緒に教室を出て、講堂へ向かった。
そういえば、トーシローにも
水饅頭を作ってやるって約束したんだった。
作ってやったら、あいつも諜報員になるのかな。
全然似合わないけど。
*
朝礼は退屈な話ばっかりかと思っていたら
そうでもなかった。
転入生の紹介があったのだ。
僕たちの学年にも、ひとりだけ
少し遅れて入ってくる女子がいるらしい。
夏休み中、その子が職員室に来ているのを
部活の時に目撃した奴がいて
前評判がいろいろ流れていた。
噂によると、遠目に見ても凄い美人なのだそうだ。
それは楽しみじゃないか。
僕としても、早くお目にかかってみたい。
もうひとつ、気になる話題があった。
学校の上空を中心に
この付近でUFOが目撃されたらしいというのだ。
『らしい』というのは
あまりはっきり見えていないから。
透明感があるらしい。
早い話が、透明でよく見えないということだ。
……おい。
それって。
もしかして、コレーが乗ってきた
DOCONANI3号のことじゃないだろうな?
僕んとこへ来る前に
あちこちウロウロして目撃されてたんじゃないのか。
猫とばーちゃん以外にも見られちゃってたか。
困るんだよなあ。
写真でも撮られて
SNSにアップされたりしたら。
僕の自由研究の提出作品や
女子たちのブローチと
同じカタチだってことが知れ渡ったら。
大騒ぎになるじゃないか。
そしたら僕、どうなるんだよ。
コメントを求められたりしたら
何て言えばいいんだ?
『夏休みの自由研究で作りました』
いやいや。
そんな説明で済むわけないだろ。
僕は、UFOを目撃したという野球部の奴に
接触してみようかと思った。
詳しく聞けば
DOCONANI3号かどうかわかるかもしれない。
ところが、すぐにコレーから警告が入った。
『そんな必要ない。もう少しだけ待ってればわかる』
いつもより、少し強い語調だった。
頭の中に、はっきり響いた。
……わかる?
何が?
どういう意味?
聞き返しても、コレーは答えなかった。
*
それから数日。
僕の自由研究の提出物は
美術作品として大変評価がよく
作品コンクールに出されることになった。
タイトルは、適当に、
『インセクトアート・コレクションⅢ』
と、つけておいた。
なぜ『Ⅲ』なのかって?
そりゃ、DOCONANI3号だからさ。
そのくらいの理由で充分だろ。
女子たちの胸を飾ったブローチの方も、すぐに学校中の評判になった。
僕としては、手芸男子としての面目躍如。
なかなかいい二学期の滑り出しだ。
ところが。
コンクール展示の翌日から、変な噂が流れ始めた。
作品の中の標本たちが
毎日微妙に違うポーズをしているというのだ。
微妙どころじゃない。
僕が見た限りでは、かなり堂々と変えている。
しかも、どういうわけか
『名画のポーズシリーズ』として
話題になりかけている。
初日の『アダムの創造』に始まって
毎日違う名画を再現しているらしい。
生徒たちは競って写真を撮り
SNSに投稿している。
このままじゃ、都市伝説になっちゃうよ。
いや、都市伝説でも心霊現象でもないんだけどね。
彼らのちょっとした遊び心なんだろう。
まあ、大目に見てやるか。
最初は、そう思っていた。
ところが、違った。
コレーによると
彼らがわざと注目を集めているのだそうだ。
それも、作戦のうちなのだと。
ふーん。
作戦ねえ。
……なんのために?
僕には、さっぱりわからない。
女子たちの手に渡ったブローチの方は
なんら変わりなく
ほとんどの女子が毎日つけて登校してくれている。
校内の様子にも、女子たちの様子にも
別段異常はなかった。
少なくとも、僕の目には。
だから僕は、いつもの学校生活を送りながら
ひとまず安心していた。
密偵たちが何をしているのか。
コレーが何を待っているのか。
そして、あの日シフが言った
「デジャブ」の意味も。
まだ、何ひとつわからないまま。
翌週。
転入生が現れた。




