↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/37

トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第十一幕


第十一幕 宇宙の果ての寝具店


「イユル、宇宙の果てまで行ってきた」


「へえ! 何しに?」


「買い物」


 ……。


「宇宙の果てまで?」


「うん」


「何を買ったの?」


「枕」


 ……。


 やっぱり。


「前に五万個も投げちゃったから?」


「そう!」


「まだ補充してなかったの?」


「普通の枕じゃ、僕たちの艦隊には足りないんだ」


「何が?」


「性能」


 ……。


 枕にも、軍用の性能があるらしい。


「それで?」


「伝説の寝具職人がいる星へ行ったんだ」


「寝具職人?」


「うん。どんな宇宙生物でも

必ず眠らせる枕を作れる人」


「それはすごいね」


「でも、ものすごく頑固な人だった」


「へえ」


「店に入ったら、いきなり言われた」


「何て?」


「枕は売らん!」


 ……。


「寝具店なのに?」


「そう」


「なんで?」


「眠る資格のある者にしか売らん、って」


 ……。


 トーシロー。


 お前以上に資格のある人がいるだろうか。


「それで、どうしたの?」


「試験を受けた」


「何の?」


「睡眠適性試験」


「……」


「店の奥に、三つの寝台があったんだ」


「うん」


「一つ目は、氷のベッド」


「寒そう!」


「二つ目は、火山のそばにあるベッド」


「暑そう!」


「三つ目は、無重力のベッド」


「寝られるの?」


「普通の人はね」


「……」


「でも僕は、全部で寝た」


「すごい!」


「一つ目は七時間」


「うん」


「二つ目は八時間」


「うん」


「三つ目は九時間」


 ……。


 ……。


「トーシロー」


「何?」


「それ、全部合わせたら二十四時間じゃない?」


「うん」


「丸一日、試験してたの?」


「そうだよ」


「……」


「職人さんが泣いてた」


「どうして?」


「こんなに眠れる人間には初めて会った、って」


 ……。


 感動したのか。


 呆れたのか。


 どっちだろう。


     *


「それで、枕は売ってもらえたの?」


「うん。特別に作ってくれた」


「どんな?」


「銀河最高級の枕」


「へえ!」


「中身は、星雲の綿」


「ふわふわ?」


「ものすごく」


「いいなあ!」


「しかも、一人ひとりに合わせて硬さが変わる」


「便利だね」


「形も変わる」


「へえ!」


「寒い星では温かくなるし、暑い星では冷たくなる」


「すごい!」


「おまけに、眠るときには子守歌まで流してくれる」


「それ、欲しいなあ」


 ……。


 僕は、本気で思った。


「それで、五万個買ったの?」


「いや」


「え?」


「一個だけ」


「どうして?」


「高かったんだよ!」


 ……。


「いくら?」


「水饅頭号三隻分」


「……!」


「予算が足りなかった」


 ……。


 当たり前だ。


「でも、特別な枕なんだろ?」


「そう」


「一個でどうするの?」


 トーシローは、にやっと笑った。


「そこが、総司令官の腕の見せどころだよ」


「何したの?」


「枕を一晩ずつ交代で使うことにした」


「……」


「全艦隊、順番待ち」


 ……。


「何人いるの?」


「三十万人」


「……」


「今日の当番は、僕」


 ……。


 ……。


「トーシロー」


「何?」


「それじゃ、みんなに順番が回るまで

何年かかるの?」


「まだ計算してない」


「……」


「でも、大丈夫」


「どうして?」


「僕が試運転をしてるから」


「……」


「ものすごくよく眠れた!」


 ……。


 ……。


 いや、それ。


 お前だけじゃないか。


     *


 翌日。


 トーシローが、僕のところへやってきた。


「イユル」


「何?」


「困ったことになった」


「また?」


「伝説の枕が、なくなった」


「ええっ!」


「昨夜、ちゃんと寝台に置いておいたのに」


「誰か持っていったの?」


「わからない」


「それは大事件だね」


「そうなんだよ!」


 トーシローは、しばらく考えていた。


 それから、ぽつりと言った。


「……あ」


「何?」


「もしかして」


「うん?」


「今、僕が使ってる枕って……」


 ……。


「どうしたの?」


「昨日、母さんが新しい枕カバーを

つけてくれたんだ」


「うん」


「ものすごく、よく眠れるんだよ」


 ……。


 ……。


「トーシロー」


「何?」


「まさかと思うけど」


「うん」


「夢の中の伝説の枕と、現実の枕を混同してない?」


 トーシローは、真剣な顔で考え込んだ。


「……」


「……」


「イユル」


「何?」


「今夜、鑑定してくる」


 ……。


 ……。


 どうやら、夢の世界にも鑑定士が必要らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。