トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第七幕
第七幕 総司令官の勲章
トーシローが、妙に姿勢よく座っていた。
「どうしたの?」
「昨日、勲章をもらった」
「宇宙で?」
「うん」
「へえ! 何の勲章?」
「銀河平和功労勲章」
「すごい名前だね」
「しかも、最高位」
「おお!」
「授与式には、百の星から代表者が集まった」
「盛大だなあ」
「僕も驚いた」
トーシローは、胸を張った。
「銀河皇帝が直々に授けてくださったんだ」
「銀河皇帝!」
「そう!」
「それで?」
「僕は大広間へ呼ばれた」
「うん」
「赤い絨毯の両側に、何万人もの人が並んでいた」
「うんうん」
「僕が歩くたびに、全員が敬礼するんだ」
「かっこいい!」
「楽団も演奏してた」
「すごい!」
「でも、困ったことがあってね」
「何?」
「礼服がない」
……。
「宇宙艦隊の制服じゃ駄目なの?」
「前の戦闘で破れちゃったんだ」
「ああ、枕を投げた時?」
「そう」
……。
どんな戦い方をしたら制服が破れるんだろう。
「それで?」
「仕方がないから、支給された礼服を着た」
「よかったじゃないか」
「ところが、ものすごく長いマントがついてた」
「へえ!」
「後ろに十二人の従者がついて
マントを持って歩くんだ」
「王様みたい!」
「そうなんだよ」
トーシローは、ちょっと得意そうだった。
「皇帝陛下の前へ進んで、ひざまずいた」
「うん」
「陛下が勲章を持って、僕に近づいた」
「うん!」
「その時だった」
「何?」
「マントを持ってた従者の一人が、つまずいた」
「ええっ!」
「すると、ほかの十一人も次々に倒れた」
「……」
「マントが引っ張られて、僕も後ろへ転んだ」
「……」
「皇帝陛下まで巻き込まれた」
「えええっ!」
「大変だった」
「それで?」
「全員が床に倒れて、身動きできなくなった」
……。
「……それ、どうやって助かったの?」
「僕が号令をかけた」
「何て?」
「全員、落ち着いて寝返りを打て!」
……。
……。
「トーシロー」
「何?」
「それ、前にもやってなかった?」
「艦隊運動でね」
「うん」
「でも、今回は成功した!」
「……」
「十二人の従者と僕と皇帝陛下が
一斉に右へ転がった」
「……」
「マントがきれいにほどけた!」
……。
……。
僕は笑うのを我慢した。
「それで、勲章は?」
「ちゃんともらったよ」
「よかったね」
「しかも、予定になかった特別な勲章まで」
「えっ、何の?」
トーシローは、誇らしげに答えた。
「銀河集団寝返り功労勲章」
……。
……。
「あははははは‼️」
とうとう我慢できなかった。
「笑うなよ! 皇帝陛下をお救いしたんだぞ!」
「ごめん、ごめん! それで、勲章はどんな形?」
「丸くて、金色で、真ん中に宝石がついてる」
「へえ、きれいだね」
「うん。とっても重かった」
「重い?」
「胸につけたら、前に倒れそうになった」
「そんなに?」
「だから寝る時は外すことにした」
……。
「トーシロー」
「何?」
「夢の中でも、寝るの?」
「当たり前だろ」
「……」
「宇宙の英雄だって、休息は必要なんだから」
……。
ごもっとも。
*
次の日。
トーシローが、首から何かを下げて登校してきた。
「……何それ?」
「勲章」
「え?」
「昨日の夢を記念して作った」
よく見ると、金色の厚紙で作った
丸いメダルだった。
真ん中に、青いビーズが貼りつけてある。
「自分で作ったの?」
「うん」
「上手じゃないか!」
「ありがとう!」
トーシローは嬉しそうに笑った。
……。
あれ。
夢の中の宇宙大戦争が
ほんのちょっとだけ、現実にも形になった。
僕は、何となくその勲章をもう一度見た。
「トーシロー」
「何?」
「今度、もっといいの作ろうか?」
「えっ、いいの?」
「うん。金属みたいに見える素材もあるし」
「本当⁉️」
「ただし」
「何?」
「授業中は外してね」
……。
トーシローは、しばらく考えた。
「わかった」
そして、まじめな顔で言った。
「じゃあ、放課後から任務に戻る」
……。
なんの任務だよ。




