トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第六幕
第六幕 眠らない星
「イユル、聞いてくれ」
昼休み、トーシローが真剣な顔で言った。
「宇宙で、ひどいことが起きてる」
「今度は何?」
「眠れない人たちがいるんだ」
「……」
「星まるごと」
「ええっ!」
「そこでは、何百年も誰も眠ってないらしい」
……。
トーシローにとって、それは相当な大事件だ。
「どうして?」
「巨大な人工衛星が
昼も夜も強烈な光を照らしてるんだ」
「誰がそんなことを?」
「敵の軍隊」
「ひどいなあ」
「しかも、衛星を止めようとすると
星の通信網まで壊れてしまう」
「それは困るね」
「そうなんだ」
トーシローは腕を組んだ。
「住民はみんな疲れ切ってた。
子どもたちも眠れない」
……。
いつもなら笑って聞いている僕も
ちょっと心配になった。
「それで、どうしたの?」
「僕は、その星へ向かった」
「水饅頭号で?」
「そう」
「何か作戦があった?」
「うん。人工衛星を壊さずに
光だけ遮ることにした」
「どうやって?」
「味方の船を全部集めて
巨大な日よけを作ったんだ」
「日よけ?」
「何万枚もの宇宙船の帆をつないでね」
「へえ!」
「それを人工衛星と星の間に広げた」
「おおお!」
「星が、少しずつ暗くなった」
「すごいじゃないか!」
「何百年ぶりかの夜だよ」
……。
トーシローは、少しだけ嬉しそうに笑った。
「星の人たちは、最初は暗闇を怖がってた」
「うん」
「でも、しばらくすると
あちこちから寝息が聞こえてきた」
「……」
「大人も子どもも、みんな眠り始めたんだ」
……。
なんだか、いい話じゃないか。
「トーシロー、かっこいいね」
「そう?」
「うん。本当に」
僕が言うと、トーシローは照れたように笑った。
「僕、初めて宇宙の役に立てた気がする」
「いや、前もいろいろやってたじゃないか」
「でも、今回は誰も戦わずに済んだから」
……。
そうか。
トーシローにも、そういう考え方があるんだな。
「それで、その星は?」
「今も静かに眠ってる」
「よかったね」
「うん」
しばらく、僕たちは黙っていた。
……。
それから、ふと気になった。
「ところでトーシロー」
「何?」
「その星の人たち
何百年も眠ってなかったんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、初めて眠ったら
何時間くらい寝るんだろう?」
トーシローは、ぱっと顔を上げた。
「……!」
「……?」
「イユル!」
「何?」
「それ、調べてなかった!」
「え?」
「しまった! 重大な研究課題だ!」
……。
「今夜、もう一度行ってくる!」
「うん」
「長期観察になるかもしれない!」
「……学校には来るよね?」
トーシローは、窓の外を見た。
今日もいい天気だった。
……。
あの星の夜は、きっと、とても静かなんだろうな。




